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 埼玉県は6月、「令和6年度 国の施策に対する提案・要望」を発表しました。

 この提案要望は、毎年出しているものですが、今年は、全部で173事項、うち新規は25事項です。このうち、「重点政策に関する提案要望」①が64事項(新規は11事項)、「分野別の提案要望」②が109事項(新規は14事項)です。この①と②では、①のほうが優先策と位置付けられます。後者の②の要望のなかで、「羽田空港アクセス線西山手ルートの早期着工に向けた支援」を初めて明記しました。

JR東日本のリリース資料より。以下同じ

 羽田って??という方もいらっしゃるかもしれませんが、現在、羽田空港の利用客増加を見込んで、鉄道の新規アクセス線が計画されています。羽田アクセス線をめぐっては、東京駅や新橋駅方面から羽田空港に向かう「東山手ルート」が6月に本格着工しました。宇都宮線・高崎線・常磐線方面から羽田空港への直通運転が2031年度に実現する予定です。つまり、2031年度には、上野・東京ラインを経由して、大宮、浦和から、羽田空港へ直通電車が走るのです。このルートは、先ほど述べたとおり「羽田空港アクセス線東ルート」と呼びます。

 では、今年、埼玉県が要望を出した「羽田空港アクセス線西山手ルートの早期着工に向けた支援」とは、どこを通るのでしょう?

 上の地図をみてみてください。「西山手ルート」は、羽田空港の東山手ルートの「東京貨物ターミナル駅」から、りんかい線大井町駅方面への短絡線を設け、そこから埼京線や湘南新宿ラインが使用している山手貨物線を経由して、大崎・渋谷・新宿・池袋方面に直通するものです。

 現在、山手線西側や埼玉県西部、多摩地域などから羽田空港への鉄道直結アクセスは皆無で、数社間にわたって数回の乗り換えが必要となり、負担となっています。JR東日本は「西山手ルート」に関して「現時点で事業スキームやスケジュール、輸送計画などは全て未定」(広報部)としており、実現の目途は立っていません。今回の埼玉県の要望は、こうした状況を打開すべく、埼玉県が早期着工に向けて国に支援を求めた形です。

 埼玉県は、「羽田空港アクセス線の新設は、県の広域交通ネットワークの充実にとって大変重要な事業」「特に西山手ルートは、埼京線を通じて川越線との直通運転が実現することにより、川越線をはじめとした県内路線の利用人員の増加、それに伴う沿線地域への経済効果が期待される」としています。

 川越線といえば、地元では複線化の要望が長年出されています。JRの複線化は、JR西日本の奈良線のように、京都府や沿線自治体が資金を負担する事例がありますが、埼玉県やさいたま市、川越市は、自らの負担の試算などは出していません。
 埼玉県は、今回の要望にあたり、川越線の複線化については述べていませんが、「川越線との直通運転」「川越線をはじめとした県内路線」とまで述べています。西山手ルートは、川越まで来ないとダメ!という意気込みが感じられます。ただ、西山手ルートができたとしても、現在の湘南新宿ラインのように、東北線や高崎線から池袋、新宿、大崎という運行も考えられますね。。

 今回の要望は、西山手ルートが実現するのか?に加えて、西山手ルートは川越線直通となるのか?という問題があります。

 りんかい線という他社を通ることから、容易ではありませんが、一部ではJRによる「りんかい線」会社の買収といった考えも出ています(本文章は、乗り物ニュースの記事を参考にさせていただきました)。

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