京都アニメーションの事件について

消防職員として、書かないわけにはいかないと思いながらも、書けずにいました。というのも、僕はnoteでは消防業務において一般の方の役に立つような内容のことを書きたいと考えているのですが、今回の京都アニメーションでの事件ではどんなに対策を講じていたとしても、あの様な事が起こってしまうと、どうしようもないのではないかと思うからです。

ニュースでの知りえる情報では、京都アニメーションの方々は日頃から消防法を遵守し、毎年、定められた訓練を実施し、事件当日も火災発生を上階の方々にも伝え、懸命に避難の行動をしておられました。

現場の状況をニュースで見る限り、消防も屋内進入する事は不可能であったと思います。火災の最盛期で、ありとあらゆる開口部から黒煙と炎が噴出している状況では、隊長は隊員を屋内進入させることは出来ません。消防は安全確保出来て初めて屋内進入します。これは自己の安全を確保できずに活動すると、自分自身が被災し、要救助者になってしまう恐れがあり、更に活動を困難にしてしまうからです。恐らく、現場の隊員は、多くの救いたい命があるにも拘わらず、救うことが出来ない現実に、大変な葛藤と心苦しさ、悔しさがあったに違いありません。その中で消火・延焼拡大を防ぐ誠意いっぱいの活動をしていたと思います。

火災発生直後、京都アニメーションの周りに住んでおられた方々が救助や救出、初期消火などの行動をとっておられたとニュースで見ました。最悪の放火事件の中、幸いにも助かった方がおられたのは、こうした方々が必死の勇敢な行動を起こした事、京都アニメーションの方々が普段から防火防災意識をしっかりともち、毎年訓練しておられ事、この二つの事があったからだと思います。

今後、気になるのはPTSDの問題です。
PTSD(Post Traumatic Stress Disorder :心的外傷後ストレス障害)は、強烈なショック体験、強い精神的ストレスが、こころのダメージとなって、時間がたってからも、その経験に対して強い恐怖を感じるものです。震災などの自然災害、火事、事故、暴力や犯罪被害などが原因になるといわれています。
突然、怖い体験を思い出す、不安や緊張が続く、めまいや頭痛がある、眠れないといった症状が出てきます。とてもつらい体験によって、誰でも眠れなくなったり食欲がなくなったりするものですが、それが何カ月も続くときは、PTSDの可能性があります。ストレスとなる出来事を経験してから数週間、ときには何年もたってから症状が出ることもあります。

今回の被害にあわれた方々、そのご家族の方々、救助や救出、初期消火等の行動を起こして下さった方々、そして消防職員、これらの人達の心のケアをしっかりとしていかなくてはなりません。

今回の事件でも分かるように、熱気や有毒ガス、煙はものすごい速さで上へ上へと上がっていきます。避難の際はなるべく姿勢を低くし、タオルやハンカチ(湿らせると熱気を吸い込んでしまうのを少しは防げるかもしれません)などで口や鼻を覆い、速やかに逃げて下さい。初期消火は自分の身長より炎が大きくなってしまうとかなり困難になります。火の勢いがすごく、自分の身長より高い位置まで炎が立ち上がっているような場合はすぐに逃げて下さい。そして、すぐに119番通報してください。


今回の事件で思う事は沢山あります。本当に辛く、心苦しいです。消防職員として火災や事故、災害で被害にあわれる方を少しでも多く救う、助ける事、また災害が起こるのを予防する、被害を最小限にくい止める事をこれからも頑張っていくしかないと思っています。

最後になりましたが、今回の事件でお亡くなりになられた京都アニメーションの方々のご冥福をお祈りします。またそのご家族の方々、関係のある方々に心からお悔やみ申し上げます。

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