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【エンパシーはビジネスにも応用可能?】ブレイディみかこ『他者の靴を履く―アナーキック・エンパシーのすすめ』

要旨

 2019年に同筆者が出した『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』という著書は多くの人の手に取られた。

 そこで注目されたのは「エンパシー」という言葉であった。これまでエンパシーは「共感」という日本語に訳されていた。

 今回紹介する『他者の靴を履く―アナーキック・エンパシーのすすめ』の中ではこの「エンパシー」という言葉を深く考察していく。

 そして、エンパシーが足りていない故に起こる「悲劇」やエンパシーの可能性という議論が繰り広げられる。


「エンパシー」とはなにか

 英英辞書によると、「エンパシー」と「シンパシー」の定義は以下のようなものである。

  • エンパシー…他者の感情や経験などを理解する能力

  • シンパシー…①誰かをかわいそうだと思う感情、誰かの問題を理解して気      にかけていることを示すこと

                    ②ある考え、理念、組織などへの支持や同意を示す行為

         ③同じような意見や関心を持っている人々の間の友情や理解

 これを比較して見ていくとエンパシーは「能力」であり、シンパシーは感情ということが分かる。

 つまり、エンパシーは後天的に身につけられるものであり、シンパシーは内側から湧いてくるものである。

 また、エンパシーについての議論はこれまで英語圏の国々で繰り広げられており、様々な定義や分類がある。

 例えば、「コグニティブ・エンパシー」、「エモーショナル・エンパシー」や「ソマティック・エンパシー」等がある。

 本書はこのようなエンパシーに関する議論を紹介しながら、どんどんとエンパシーについて深掘りしていく。

エンパシーの可能性


 ブレイディみかこによると、エンパシーは「正しく」用いられると様々な可能性が開けるという。例えば、それは経済にも応用できる。

 どういうことかというと、インターネット上で興味のある財布を調べると、広告がカスタマイズされて、バナーや広告欄に財布の広告が見られるようになる。

 今ではこれが当たり前になっているが、各人に効果的な「カスタマイズされた情報」を流すという戦略が用いられている。これは他者の靴を履いてその人の考えや感情を想像するエンパシーが利用されている例であるだろう。

 また、”Empathy Economy”という概念が米国や欧州で流行っているという。「エンパシー・エコノミー」とは、「人間の感情を検知し、模倣するAIによって創出される金銭的またはビジネス的価値であり、顧客サービスやバーチャル・アシスタント、ロボティクス、向上の安全性、健康管理、輸送などを完全に変えるだろう能力」である。


 つまり、人間の感情という目に見えないものをエンパシーを用いて感知し、それを利用してビジネスを行ったりされているという。

 このようにエンパシーの可能性だけでなく、エンパシーを身に着ける方法や逆にその危険性も本書では紹介されている。是非一度手に取って、エンパシーについて考えてもらいたい。


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