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なぜ品質や価格よりも「体験(コト)」が重視される時代になってきたのか?

顧客の購買心理に、今、変化が訪れている。商品・サービスの価格や機能性はもとより、企業やブランドが提供する「体験(コト)」に価値を見出すようになってきている。

米オンラインチケットサービス会社Eventbriteの調査によれば、世界でこれからの消費を担うミレニアル世代の78%が「モノ」よりも「体験(コト)」にお金を使い、今後もより多くの金額を「体験」に使いたいと回答している。

「体験」を好むのは、彼らだけではなく、真のデジタルネイティブである「ジェネレーションZ世代」も、同じような消費思考を持つようだ。

以前に比べ、インターネットからより多くの情報を手に入れるこの世代ですが、信頼に基づいた意思決定を行う傾向が強いようだ。インターネットの登場によって、誰もが簡単に情報を発信できるようになったことで、予算を投じて接触機会を増やすといった従来のコミュニケーションは通用しなくなってきているのは事実として受け止めなければならないだろう。その結果、大手企業であることやブランドの信頼が、商品の売れ行きを決める大きな要素ではなくなってきており、ネームバリューだけで商品を売るのは、必然的に難しくなるのではないかと考えている。

その危機感を抱き、事業者側も変化を始めていて、清涼飲料水ブランドのコカ・コーラは、「継続的に“ハピネス”を提供すること」をマーケティングコンセプトに掲げ、ユニークな体験の提供を数年前から続けている。

最近では、2016年のクリスマスからの取り組みとなる「リボンボトル」キャンペーンを継続的に展開しており、ラベルを引っ張るだけでリボンに早変わりする期間限定ボトルを「オドロキを贈ろう。」というテーマで提供。「ラベルが華やかなリボンに早変わりするオドロキでみんなを笑顔にし、大切な人と絆を深めることができる」として、コカ・コーラを通した特別な体験の提案を行っている。

消費者は、単なるプロモーションを受動的に受け取るのではなく、主体的に企業と関わり、価値観やらしさを“体験”することで信頼を重ねる。主体は消費者側にあり、企業は売るのではなくどう“体験し、信頼を得られるか”を考え、行動することが求められる。

一方、コカ・コーラのように、ブランドや企業の価値観を“体験”に落とし込む例もあれば、顧客が普段から行っている体験をアップデートする例も出てきている。

スポーツブランドのナイキは2018年11月、ニューヨーク・マンハッタンにデジタルとリアルを融合させた大型店舗「House of Innovation 000」をオープンした。

同店では、スマホアプリで予約・購入した商品を、店員とのやり取りを介さず、店内のロッカーから受け取れる「スピード ショップ」を展開しており、各商品に付いているQRコードをアプリで読み込めば、声をかけずとも店員が適したサイズを用意してくれる仕組みなだ。このようにリアル店舗における新しい体験の提供も試みているのが2018年以降のナイキの特徴だ。

同様の店舗は中国・上海でも2018年10月にオープンしており、約1ヶ月で60万人の顧客が訪れるほどの盛況ぶりだったようだ。顧客にとって価値のある「体験」を創造し続けることは、顧客の信頼を獲得し、競合との差別化を図りレッドオーシャンから抜け出す方法としても、今後欠かせない要素になるはずだ。

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