未来掲載短歌 2017年1月号

未来2017年1月号掲載(未来広場)

五センチ

唐突に涼しくなってこの空は運動会の朝の匂いだ
五センチが限界とはいえぺたんこの靴を買ったら終わりと思う
バイトする理由をきみが問うたので社会復帰と正直に言う
クリームパンめっちゃ売れてる このラック史上一番売れてる すごい
血がいやだ 全部抜いたらこの店のリプトンミルクティーを入れたい
私より五センチくらい背が低いおじさんたちが日本を嘆く
日が暮れて一人の部屋に突き刺さるサイレンどこか遠くて近い
ベランダにお隣さんの洗剤の香りが届く 顔は知らない
指と指、伝わる鼓動、エトセトラ べつになんにも言ってませんよ
雨音は私のからだを清めつつこの世の上に落ちる雷

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