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「事業を成長させ、高い生産性を実現するマネージャーがやるべき仕事とは?」名著HIGH OUTPUT MANAGEMENTに学ぶ

こちらは9月25日開催 田端大学@CAMPFIREの定例会での田端塾長の講義を文字起こしし加筆・編集したものになります。(文字おこしby大森陽介)(注意:田端大学に参加済みの方は、FBグループで、別に投稿を共有しますので、この記事に課金する必要はありません。)

今月の課題図書は30年以上の時を経て読みつがれる名著、インテルの伝説的なCEOアンディ・グローブが書いた「HIGH OUTPUT MANAGEMENT」です。

 ===田端の講義開始===

まず、このHIGH OUTPUT MANAGEMENTでは「朝食工場」の例が出てきます。構成要素は、トーストとゆで卵とコーヒー。誰でも作れそうな朝食。それを工場にすると、どうなるか?小学生でも理解できそうなレベルからスタートするのが良いところです。


たかが朝食と馬鹿にすることなかれ。朝食といえば、名古屋のモーニング、コメダ珈琲を思い出しますよね。コメダコーヒーって凄い優良企業なんですよ。1年か2年前に上場しました。いろんなマジックや秘密があるんでしょうけど、興味の有る方は、コメダコーヒーのIRを見ていただいて、どういう意味で優良企業なのか、考えてみてください。コメダ珈琲はスターバックスやドトールなどと競合してない。コメダ珈琲の競合企業がおもいつかないのが面白いところです。

この本の徹頭徹尾いいところは、朝食というシンプルにしてみんなが食べているもので、例えていることです。朝食工場のマネージャーが出すべきアウトプットは、「おいしい朝食です」。
皆さん会社で、いろんな部署に属していると思います。その自分の部門のアウトプットってわかるでしょうか?

朝食工場をブラックボックスと捉える、理系風に言うと関数と言ってもいいですが、仕事というものには、必ずインプットがあって、アウトプットがあります。自分の部署は何をインプットしていて、何をアウトプットしているのか、貴方ははっきり言えますか?

自分が管理職なり、部門を率いている存在ならば、このことについて本質的に考えてほしい。
自分が責任を持っているチームや組織は、そもそも何がインプットされ、何をアウトプットしているのか。これについて、よくよく考えてほしい。

さらに、同じアウトプットをどうやってより小さいインプットで生み出すか。同じインプットなら、より多くのアウトプットをどう生み出すか。これこそがマネージメントを重要項目です。

インプットを2倍にしたら、アウトプットが2倍になりました!というのでは、マネージャーとして生産性の向上に何の付加価値も出せていませんよね。でも、往々にしてそういうマネージャーよくいます。「売上を二倍に増やしたい!だから君らは2倍働け!」とか。「2倍働くために徹夜しろ!」とか。こういうマネージャーは下の下だと思います。

そのうえで何が大事かというのは、この本でも、さんざん登場する「リミッティングステップ」で、ザ・ゴールでいう「ボトルネック」は何かを把握することです。温かくて満足度の高い朝食を提供するために、卵、トースト、コーヒーの3点セットがあるとしたら、その時にボトルネックになっているのは何か?。この本で言うと、卵をゆでるのに一番時間がかかっているとしたら、卵をゆでる部分がボトルネックなんです。あたり前と言えば当たり前です。この場合、厳密に考えると、インプットは生卵です。それに対して、ガスや人間がゆでる手間暇があって、アウトプットとして、ゆで卵が中間材としてでてくる。

これが深いテーマなのは、朝食工場のトースト、トーストのインプットは焼く前のトーストのことなのか、小麦やイースト菌などの原材料なのか。何がそもそもインプットであるべきなのか。これははっきり言って自明ではありません。もしかしたら、その日の朝、こねて、自然酵母で発酵させた手作りトーストが売りの朝食屋さんだっていいわけじゃないです。そうだとしたら、その朝食工場のインプットは小麦粉やイースト菌、自然酵母かもしれません。卵の話に戻ると、生卵をインプットとして仕入れるのを辞め、すでに茹で上がったゆで卵をインプットとして仕入れ、サッとお湯をくぐらせて温めるだけ、という方法も考えられます。別に、かならず「生卵」をインプットにして、それを生からボイルしないといけないとは決まってないわけです。

コーヒーを注ぐってこの本の中では、一番軽視されてるみたいですけど、一杯一杯ドリップしたコーヒーの味で差別化したっていいわけです。私が面白いと思ったのは、このHIOUTPUTMANGEMENTはインテルというメーカー中のメーカーの伝説のCEOが書いた本でで、その意味では、メーカー発想でこの本は書かれています。

でも、マネジメントの本質というのは、どんな業界でも変わらないということがわかりました。朝食工場というわかりやすい例えのお陰ですね。これが半導体工場で、シリコンウエハーとか言われたらわかりませんが、トーストと言われれば、自分でもわかると思えるでしょ。

とにかく大事なのは、「ボトルネックは何か」ということを把握し、それを改善することです。もし自分一人だけで朝食工場をやっていたら、何のマネジメントも必要もありません。卵をゆでる、トーストを焼く、コーヒーをいれる、一人でやるならそこにピープル・マネジメントは必要ありません。ただし、人数が増えていくと、例えば、車メーカーでも一人のエンジニアが、最初から最後まで担当するやり方と、よくある流れ作業で、この人はドアの取っ手をつけるだけの人みたいなやり方があります。そういう分業作業の中で、ウエイターがトーストの焼き上がりを待つ行列でみんなが立ち往生しています。トーストがボトルネックだとしたら、トーストを焼くのがうまい人だけにやらせて、縦ではなく横で分業するというやり方もあります。

そうすると、うまくいくことばかりでもありません。トースト係がトーストばかり焼いていたら、トーストは1分に1枚焼けるけど、ゆで卵は30秒に1個で茹で上がるペースだったときに、そのトースト担当とゆで卵担当が何も考えずにフル操業していたら、ゆで卵、余っちゃいますよね。そういう時に、お客さんの入り具合を見て、今は、ゆで卵を作らなくていいから、トースト焼いてって指示をだすのが、それこそマネージャーの仕事です。そういう調整仕事で、直接アウトプットと関係ない、よくいうオーバーヘッドというところにかかる人間が増えてきます。

もし、トーストがボトルネックになっているのであれば、トースターをもう1台買う。これはまさしく工場で言えば生産ライン増強のための設備投資です。トースターがボトルネックで、トースターを1万円で購入して、生産性が向上し、お客さんの回転もあがって、半年以内に回収できるとしたら、トースターを買った方がいいということになります。工場の設備投資の意思決定というのはある種こういう感じですよね。

トースターはないけどゆで卵をゆでる機械にガスバーナーがあって、そのガスバーナーで、トーストをあぶったら、同じようにトーストすることになるかもしれない。もし、人件費が安い国だとしたら、ゆで卵をゆでているガスバーナーで、隣で誰かがトーストをあぶっていたっていいわけで、これも一つのやり方です。

何が言いたいかというと、マネジメントにおいて、永遠に当てはまり続ける唯一絶対の正解はないということです。例えば、トースターをもう1台買うべきなのか、ゆで卵のお湯をゆでているガスバーナーでトーストをあぶってトーストをつくるべきなのかは、どちらが正しいかわからなくて、それは何が決めるかというと、トースターがいくらで、人件費はいくらなのか、という関係するパラメータ同士のトレードオフの中で、どっちをやった方がいいかが、決まるわけです。

どちらが常に正しいかなんて、事前に明確にはわかりません。めちゃくちゃ人件費が安くて、トースターが超高いアフリカの奥地であれば、焚火でパンをあぶったっていいわけです。アウトプットとして、こんがり焼けたトーストがついている美味しい朝食が提供されるのであれば、なんだっていいわけです。そういうことを考えるのがまさしくマネージャーの役割なんです!手段として、例えばストップウォッチを使うのは、何にどれくらい時間がかかっているのかを図って、ボトルネックを把握するためなんです。とにかく、アウトプットを出すうで、ボトルネックになっていることを把握し理解するということが、一番マネージャーとして大事なことなんです。

この本の中で、さんざん部下と1on1ミーティングしろしろしろと言っているのも、何のためかと言えば、何がボトルネックかということは、現場の人間が一番よくわかっていることが多いからです。トースターの前に行列ができて、そこがボトルネックだというのは、他でもない並んでいるウェイターこそが一番感じているはずなのです。


だから、1on1ミーティングで、「トースターの列がいつも大変なんですよね~」とかいう会話を引き出されたら、しめた!って感じるべきなんです。今どきのネット業界的に言うと、営業が仕事をとってきました。でもエンジニア不足で、エンジニアのアサイン待ちで。エンジニアがアサインださないと、結局、お客さんにも提案したけど受注できますってなかなか言えない、だから営業強化ではなくエンジニア採用こそがボトルネック解消につながったりとかするわけです。

あるいは、貴方が採用面接を担当する人事なら、必ず社長面接をしたい!という会社であれば、社長の時間というのがボトルネックになったりします。社長の時間がなかなかとれなくて、面接を2週間先に延ばしていたら、競合先にいけてる新卒社員をとられてしまった。これは何がボトルネックかと言ったら、社長の時間です。もし、社長がその場でスパッと決めていたら、こっちの会社がいいと決まっていたかもしれない。じゃあ、社長面接って、そもそもなぜ必要なんでしたっけ?良い人材を取るためには、すぐに面接時間の取れる人に最終決定権がないとダメなんだから、採用プロセス変えましょうよ、と言えるのがイケてる人事マネージャーです。

とにかく、マネージャーたるもの自分の組織がだすべき、本質的なアウトプットを理解する。そのために、一番必要なインプットは何かということを理解する。その中で、このインプットとアウトプットと一番ボトルネックになっていることを理解する。この3つを1on1ミーティングを通じて、常に部下から聞くことで、その関係性を把握し続ける。関係性はもちろん変わるかもしれない。だからこそ、定期的に行ってそれを把握し続けるということです。ひとたびボトルネックを特定したら、医者で言ったら診断と治療があるように、「正しく診断できる」ということは、マネジメント風に言うと、「正しくボトルネックをつきとめる」ということです。ボトルネックをつきとめたら、次は「治療」のフェーズです。ボトルネックをどうやって解消するかということです。

朝食工場で言うと、トースターが1台しかないということに対して、ゆで卵をゆでているガスバーナーのわきで、トーストを焼く、焚火でパンをあぶる。別の方法だと、ゆで卵がボトルネックだとすると、そもそもうちそのお店は、生卵からゆで卵をつくる必要があるのか。あらかじめ、ゆで卵をおろしてくれる食品問屋がいれば、一気にボトルネックの解消ができる。このようにボトルネックなくし、アウトプットを増やすために、前提条件や発想から変えるということが、マネージャーとして、一番付加価値が高い行為なんです。


さらにいうと、「朝食工場が本質的にだすべきアウトプットは何か」これを、温かい焼けたトーストと温かいゆで卵と温かいコーヒーと定義してたら、ゆで卵やトーストは常に必要になりますが、最近は糖質制限が流行っているので、トーストはむしろ嫌われだしてるのが世間のムードかもなぁ。

だとしたら、トーストを無理に出さなくてもよいのでは?と決めるのもとても価値の有る決断です。本質的なアウトプットは、トーストとゆで卵とコーヒーの3点セットではなくて、みんなが満足できる朝食であっても良いはず、そのためには、トーストはなくてもいい要素です。しかも顧客や社会の変化に合わせて対応し続ける。糖質制限が流行っていることに注目して、トーストのかわりに、チキンの胸肉とゆで卵とコーヒーの3点セットだっていい。もし、チキンの胸肉はあらかじめボイルされて、パック詰めされていて、下請け業者から、仕入れられるのであれば、トースターのボトルネックも一気に解消できます。

私がマーケティングやブランディングで、何が提供価値なのか、本質をよく考えて!と口を酸っぱく言うのは、まさにココなんです。ああ、ここを変えられたら、工場の中で働く人が、こんなに苦労しなくてもいいのになぁ、ということが、もし顧客にとっての本質的な提供価値のために不要であれば、バッサリ辞めたっていいわけです。

「朝食」というものの本質的な提供価値を考えず、工場の人たちがゆで卵を作るのに、あと10秒縮められないだろうかなどということばかり考えていてもダメです。本当にお客さんはゆで卵を求めてますか?ということも、ときどきは考えるべきです。本当にうちのお店がだすべき、朝食の提供価値の中で、ゆで卵はどのくらい必要な要素なのかということを、お客さんサイドから考えるのがマーケティングやブランディングの仕事です。

ゆで卵が不必要なのであれば、ゆで卵じゃなくて、炒り卵でいい。スクランブルエッグでもいい。スクランブルエッグだったらもっと簡単につくれるのでは?というふうに、発想をくみかえて、もしスクランブルエッグで顧客満足が下がらなければ、出しているアウトプットはかわっていないわけなのでね。マーケティング的には、出すべきアウトプットは顧客満足だったり、リピート意向ですから、無理にゆで卵はいらないですよね?という風に考えてもいいわけです。

これが、ここでいう生産や製造と、マーケティングやブランディングの裏表の関係性なんです。皆さんがビジネス書とかを読むときは、その本を立体的に理解して欲しい。あらゆる角度から有機的なつながりの関係性を血肉のように理解すべきです。


ザ・ゴールとか、HIGOUTPUTMANAGEMENTはメーカー発想で書かれていて、だすべきアウトプットは、再定義したら、こうでもいんじゃないですかとか、そんなに苦労してださなくてもいいんじゃないですか?と思っています。

インテルでの有名な話で、最初はメモリをつくっていたけど、メモリーをつくるのをやめて、CPUをつくるようになった、これはマーケティング的な、戦略的な発想です。だから、朝食メーカーはたくさんいるので、朝食をやめてランチやデリバリーを専門にやりましょうという軸をずらす方法でも良いのです。

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