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30代中盤の非IT系業界の営業が半年間プログラミングと向き合ってエンジニアになった話【後編】

半年後
自分の目の前には200名を超える投資家、VC、企業担当者が座っている。左を見ると一緒にサービスを作り上げた相方が使用言語・技術について説明している。観客は我々の話に耳を傾けながらビジネスとしてのスケーラビリティや技術の独自性を頭の中で査定している。自分達は半年間の集大成として開発したサービスを、この壇上で他14組と競い合っているのだ。

優勝、転職、起業
土日もなく毎日12時間以上コードを書き続け、何度も徹夜をし、ビジネスを練り上げ、迷ったり、挫折したり、難しい判断をしながら半年が過ぎた。半年前はCSSという言語さえ知らなかった。それから半年が経った今、卒制ピッチ(プレゼン)コンテストで優勝。相方と作り上げたサービスに対し、協業、出資の話を多く頂き、目下起業準備中。更にかねてより希望していた食xテクノロジー分野のスタートアップへのエンジニアとしての就職が決まり、未経験エンジニアながら前職よりも給料が上がる事になった。望んだほぼ全てのチャレンジ権を獲得する事が出来た。


色んな人が色んな事を言う、でも決めるのは自分
この決断をした当初から反対意見や疑念の目、甘くないからこうした方が良いと言う言葉に多く出会った。親を始め、決断を伝えた知人、転職エージェント。彼女は親友に「そんな将来性のない男はやめろ。もっと良い男を紹介してあげるから別れろ」と言われていた。
「君よりも優れた彼でさえ起業していないのに君では出資を受けるのも起業も無理」、「君が行こうとしている方向がうまく行くとは思えない」、「あなたの年齢で未経験の転職は難しい。給料を大きく下げて、希望業界も変えて数年下積みをしましょう」。でも蓋を開けてみればその全ては覆った。
分かりにくい道、知らない道を行く時、色んな人が本当に色んな事を言う。でも決めるのは自分。時にそれは真に自分の事を想って発せられた言葉である事もある。それを無下にするのは非常に苦しい。それでも当然のように人はその人が見る世界でしか物を言う事が出来ない。簡単とは思わない。楽だとも思わない。その決断の結果をちゃんと自分で負う必要もある。それでも自分で決めて歩くという事は人生の幸福度を上げる。

学び続ける事、変わり続ける事、何が本当のリスクなのか
この半年間を通して培われた一番の能力はプログラミング技術ではない。変わる事に対する耐性と学び続ける事への自信。一般的に社会人になってからの学びは企業内外の研修、資格取得の専門学校、MBAなど。自分の仕事の延長線上にあるものが多い。食品業界の営業だったという背景から見れば、それらに比べてプログラミングは本腰を入れて学ぶには突飛過ぎるように見える。でも時代の流れから見ればテクノロジーへの理解と能力は必然。そこに飛び込み、学び直し、職種を変える事が出来た。変化のスピードがドンドン早くなる社会では、プログラミングだって10年後には陳腐化する可能性はいくらでもある。自分がいる会社どころか業界もなくなるかもしれない。会社の看板だけで営業をやってきたような過去の自分では、そんな未来に不安しかなかった。でも今の自分は例えエンジニアという職業がなくなる日が来たとしても、生きていける自信がある。変わる事が出来るという自信があるから。本当のリスクは今の環境を守れるかどうかじゃない。本当のリスクは環境が変わった時に自分自身を変える事が出来ない事だと思う。日本で働く多くの人がそのリスクと切実に向き合う必要があると思う。

良い事も悪い事も同じコインの裏表
薄給で一人暮らしをする事も出来ず、空港で寝泊まりするような出張を続けていた時、なぜ自分はこんなキャリアなのかと暗い気持ちになる事があった。でも今思ってみればそんな待遇で仕事をしていたから、それを捨てるというハードルはそんなに高くなかったかもしれない。これが高給取りの一流企業だったとしたら、5年先の自分に不安があったとしても捨てる事はきっともっと難しかった。そんな例は今思い返してみれば枚挙に暇がない。悪い事か良い事かはそれを見る時間の尺度を変えるだけで見え方が変わる。遭遇した瞬間はなんでこんな悪い事が自分に降りかかるんだと嘆いたとしても、長期的な視点で見るとそれは自分の人生を良い方向に導いている可能性がある。そう思うと世界は随分違う顔をしている事に気が付く。だから良い事も悪い事も一喜一憂し過ぎず冷静に取り組み続ける事。

大層な感じで書いたけれど、自分は諸々のチャレンジ権を得ただけで、まだ何も達成したわけでもない。自分は山田進太郎さんやザッカーバーグのように成功した人でもない。ただ少し人生が1つの決断で変わった人。その間に上記のような事を感じたというだけの事。そのどれかが、誰かの必要としている言葉であったら良いなと思って書いてみたというだけの話。これはそういう話。

終わり

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