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「若手果樹農家とともにシードルの魅力を伝える」 〜田舎暮らしを楽しめなかった私が出会った“ポム・ド・リエゾン”という生き方〜【農業】

都会暮らしを越える、いまどきの田舎暮らしとは何か?

京都でウェディングプランナーをしていた倉澤ちふ美さん。30 歳を前に U タ ーンしましたが、「田舎が楽しくない」もやもやした毎日を送りました。
近年各地で流行中のシードル(りんごのスパークリングワイン)をきっかけ に、暮らしを一新した彼女。「あんなに都会が好きだったのに、いまは田舎暮らしもいいと思えるんです」。いまどきの田舎暮らしを楽しむ一人の女性を追いました。

倉澤ちふ美さん
長野県飯田市出身。飯田市公民館に勤務。「ポム・ド・リエゾン」の第1期生。果樹農家を夫に持つ農家のお嫁さん。

京都の生活が恋しくて

20代の頃、地元長野から京都に出て、ウェディングプランナーのお仕事をしていました。
毎日がとても忙しかったけれど、やりがいのあるウェディングのお仕事が好きだったし、誇りがありました。友人も同僚もモチベーションが高く、自分ももっと頑張ろう!すてき女子でいたい!なんて思って切磋琢磨していました。 毎日ヒールを履いて、京都の町をカツカツ歩く自分も好きでした。

地元(長野県飯田市)に戻ってみると、生活の違いに何かとショックを受けました。 何をするにも京都の生活と比べて、「何もない。帰って来なければよかった」といつも思っていました。
もやもやした生活がつづき、せっかく就職したホテルを辞めようとしていた時に、上司が誘ってくれたのがポム・ド・リエゾン養成講座でした。なんでも、シードルのソムリエにあたる“ポム・ド・リエゾン”というのがあって、その 1 期生を募集しているというのです。夜な夜な一人で飲み歩くほどお酒が好きだった ので、軽い気持ちで足を運びました。

オーバーオールの農家さん

気づけば 30 歳になっていたわたしは、その講座で、同じくポム・ド・リエゾン1期生だった彼に出会いました。彼の仕事は、農家でした。
仕事着はオーバーオール。畑に持っていく水筒や靴もこだわって、おしゃれを楽しみながらやっている姿はかっこいいと思いました。

彼と結婚すると言った時には、おばあちゃんの反対にあいました。「わざわざ苦労するところに行く必要はない」。おばあちゃんの頭の中には、昔ながらの農家のイメージが強くあったのでしょう。
たしかに仕事は大変そうでした。でも彼をみていると、こんな生き方もすてきだなと思うんです。

繁忙期は朝早く夜も遅いですが、作業に余裕があるときは旅行にも行けるので、一緒に過ごす時間がちゃんと取れます。
ラフティングのガイドも掛け持ちしていたり、感環自然村のスタッフとして子どもたちと関わったり、彼の生き方は、みているだけで楽しくなるものでした。

「一度、オーバーオールをプレゼントされた時があって。“一緒に農業をやりたい”というメッセージかな?と受け取りました。まだ実現しませんが(笑)」とちふ美さん。

昨年、わたしたちは夫婦になりました。
農家を楽しむ彼と、公民館勤務のかたわらポム・ド・リエゾンとして活動するわたし。彼を通して、新しい出会いやチャンスに恵まれています。彼と出会っていなかったら今この瞬間はありません。ふたりの人生を掛け合わせた結婚は、何もないと思っていた田舎での暮らしに、新しい刺激をもたらしてくれました。

ポム・ド・リエゾンという生き方

ポム・ド・リエゾンのお仕事は、りんごやシードル文化の架け橋役となることで す。まだまだ、シードルの認知度は低いので、まずは知ってもらうところから。 わたしが資格を取得した 2014 年当時は、シードル作りはこれからで、皆がこの新しい世界にわくわくしているときでした。りんごやシードルへの理解を深め、また発信していくために、視察に行ったり、シードルイベントを行ったりと、同世代の仲間たちと様々な活動をしました。
また、活動と並行して、農園オリジナルのシードルを作ったり、イベントを開催したりするメンバーもおり、ひとつひとつの活動により、徐々に仲間が増え、飲んでくださる方が増え、皆でシードル文化を作ってきたように感じます。
わたしが一緒に活動しているポム・ド・リエゾンたちは、ほとんどが農業に関わる方で、イベントに参加する度に、自分だけがりんごはもちろん、農業に携わっていないことが、コンプレックスでもありました。ただお酒が好きで参加したわたしには自信をもって語れるものがなかったんです…。わたしは、農家の嫁になった今も、みんなのように農業をしていません。でも、今ここにいるってことは、 わたしでもできる関わり方があるんじゃないかと思い、行動し始めました。

ポムガール、農業と大切な人をつなぐ。

たとえば、“ポムガール”というシードル。昨年、ポム・ド・リエゾン4人の畑でとれたりんごを使って、ましのワインで醸造したまるごと地元産のシードルです。

このシードル作りに参加したきっかけは、自分の披露宴で、旦那さんの畑で採れたりんごで作ったシードルで「乾杯!」したいと思ったからです。
県外からもたくさんのゲストが来るし、旦那さんのりんごの世界を、自分にとって大切な方々にも伝えたかったんです。農家って、大変とか、閉鎖的とかいうイメージがあるけど、わたしがみた農家はもっと魅力的なものだったから。
乾杯の時の喝采がひときわ大きくて、じーんときました。

りんごで日本語教室、農業と世界とつなぐ。

わたしは今、飯田市公民館で働き、地域に暮らす外国人の皆さんに日本語や地域での暮らし方について学ぶ日本語教室を担当しています。そこで、養成講座で学んだ知識や人脈を活かして、りんごをテーマにした教室を開きました。外国出身の皆さんと、りんご旅の計画を立てて、紅葉の時期にりんご狩りに出かけたり、りんご農家さんをお招きして、りんごができるまでのお話を聞いたりしました。

世界とのつながりというところでは、今年 5 月に開催された長野シードルコレクションにイギリスから、世界のシードル図鑑著者であるビル・ブラッドショー さんがいらっしゃいました。 ビルさんとシードルの出会いは、彼の故郷イギリス・サマセットでの教育プログ ラムに写真家として参加したことがきっかけといいます。サマセットでシードル(英語ではサイダー)が重要な地域産業であることを、りんご畑で絵や詩をか いたり、収穫や搾汁の体験をしたりして子どもたちに伝えるというものだったそうです。公民館でのわたしのお仕事にもとても共感してくれました。

こんな田舎に住んでいても、シードルを通して人と人がつながっていることを感じました。
飯田から世界へ。また世界から飯田へ。ここに居ながらにして、世界と情報交換したり、互いに高めあったりできるのって、すてきなことだと思いませんか。

こうして、もやもやした毎日は、ポム・ド・リエゾンになったことで、とても充実したものに変わりました。
 ポム・ド・リエゾンの「リエゾン」には、「つなぐ」という意味合いがあります。 わたしにとってポム・ド・リエゾンは、シードルを通じて、まだつながっていな いものを「つなぐ」活動なんです。

南信州にある、自分らしい生き方を実現できる暮らし

飯田に U ターンして以来、時折、都会から友人が訪ねて来てくれます。飯田=わたし、というイメージなのか「ここにいるのがちふちゃんでよかった!」と言って、何度も訪れてくれます。

10 年後に、リニア開通を目指すこの地域では、ますます人の往来や移住者が増えることが予想されます。 私がここにいることが、友人が南信州を訪れるきっかけとなっているように、人と人がつながって、交流しながら生きることでお互いが豊かになっていくといいと思います。

当初は、京都の生活と比べてばかりいましたが、京都で暮らした経験やポム・ ド・リエゾンの活動を通して、ここならではの良さに気付くことができました。 最近は、本来の自分の好きなことや変えたくないところと、ここでの生活とをうまく融合させられるようになってきている気がしています。南信州には「自分らしい生き方」を実現できる暮らしの可能性があると思います。

※この記事は2017年10月に作成されたものです。


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