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【商業BL感想】新宿ラッキーホール2 雲田はるこ

【旧ブログより】
2018年10月28日 (日)

このまま5~6年に1度位のペースで1冊ずつ、無理なら短編1話ずつでも良いので、私が死ぬまで出し続けてほしい。

かつてはポルノスター、
今も新宿で生きている。

あれから6年、元ヤクザと元ポルノスターの伝説凱旋!!

桧山苦味は、かつてヤクザ・サクマに
ゲイビ俳優として仕込まれ、ポルノスターとして活躍した。
2人は数年後、ヤクザとは手を切り
ゲイビ制作会社を立ち上げ、ポルノを作る裏方に。
エロくてヤリたがりな苦味と
それをあしらいながらもドSに翻弄するサクマは
公私にわたるアダルティックなパートナー。
しかし最近、断ち切ったはずの
ヤクザ関係者の影がチラつき――?

長かったようであっという間の2巻です。(当然)連載誌も買っていた。
2ヶ月に一度訪れる熱狂とその後の不安の連続。
私の場合、隔月というインターバルは不向きなのかもしれない。
連載の最終回が終わった時は正直複雑だった。

終わってしまうことに対する寂しい感情と、物語の途中で放り出されてしまったような悲しさとが入り混じって、この感情をどうしたものかと思っていた。

しかし、1冊にまとまるとずいぶんと印象が変わった。
最終回の印象とはほぼ正反対。
読んだときの精神状態もあるのかもしれないけれど、人間の好き嫌いなんてあてにならないのだと痛感した。

1巻の時のようにオールネタバレで感想を細かく述べていくにはまだ機が熟していない。

発売から間もないことも当然あるし、自分の心の中でもまだ全然熟していないので、ネタバレ少なめで暫定的感想を残しておきたいと思う。

まず再開第1話目
『シークレット・ピアス』

これはこのブログでも感想を書いたものだが、扉絵の苦味ちゃん及び1コマ目のサービスカットから、完全にファンを殺しに来ている。
先頭打者デッドボール(扉絵)で出塁後、送りバントの名手2番(1コマ目)がまさかの2ランホームラン!みたいな。

根底に不穏さを抱えつつのサクマさんの素直さや優しさは、何かのフラグのようにも思えたし、歳をとって丸くなったということなのか、ふたりのイチャイチャが見られて嬉しいはずなのに、嬉しいだけにさせてくれないのがこの二人なんだなと。
あと、新キャラは、この先どう絡んでくるのかわからないので、なんだか嫌な感じがした。

『ベイビー、今夜だけ』

扉絵の斉木くんは相変わらずかわいい。レニと斉木くんはその後もちゃんと続いていたんだなぁと思うと、おばさん嬉しくなるよ。

もともとレニと斉木くんはオタクだったことを思い出した。レニまで一緒に女装するというのが、とてもレニらしい。

詰めが甘いのがSLHの面々の特徴なんだな。
6年前はメソメソ泣いていた斉木くんもレニも強くたくましくなって、本当に嬉しい。

『Good Night Blue』

扉絵は竜(リュウ)。

大人になったね。6年前は甘ったれの高校生だった竜が、大好きな人(サクマさんに)に世界一嫌われようと頑張る話。(と私は受け取った)

私はこの話が相当好き。
背負うものができるとやっぱり人は成長するのかしらね。
彼の描かれていないこの6年を思うと結構クるものがある。
竜はいい男になった。


『ロング・グッドバイ〈前編〉』

物語は佳境。扉絵はサクマと苦味。
ここから一気にシリアスにハードボイルドモード。

ヤクザが大嫌いなはずの苦味ちゃんが、ヤクザとズブズブのどっかジイさん社長だか会長とイチャコラしている。サクマさんが知ったら憤死モノの状況で大ピンチに陥る苦味ちゃん。

相変わらず詰めが甘い。

そして、ピンチの苦味ちゃんのもとへ、“オトシマエ”をつけにくるサクマさん。サクマにオトシマエをつけさせるのはもちろん竜パパ(オヤジ)

歳をとって元気もないみたいだけど、相変わらずの存在感。そして衝撃のラスト。

いまでもよくわからないサクマさんの涙のわけ。
サクマさんが泣くと、わたしも悲しい。


『ロング・グッドバイ〈後編〉』(ネタバレあり)

扉絵はスバルビルへのオマージュ。

ロング・グッドバイの元ネタを知っている人にとっては、前編の時点で、苦味ちゃんが無事ってことはわかっていたのだろう。

しかし私は「絶対そんなこと無いとは思うけど、苦味ちゃん死んじゃったらどうしよう・・・」と、本気で心配する瞬間が幾度となくあった。

「大丈夫!苦味ちゃん、生きてますよ!」

もう最終回だから、前巻からの伏線回収がすごいし、しれっと新キャラ(親戚まで!)も登場している。

サクマさんも苦味ちゃんも、二人だけの世界で生きているようでいても、彼らを気にかけてくれる人はたくさんいた。二人とも周りに生かされていた。

そのことを自覚しているからなのか、ふたりは逃げることを選ばず、また新宿に戻ることにしたのだと思う。

正直、連載の最終回の時は、「戻ったら殺されるかもしれないから二人で逃げてほしい」と思っていたけれども、1冊通して何度か読んだ今なら、

“新宿”は、きっと二人を生かしてくれる

と、根拠もなく確信している。あとなんとなく思ったのは、サクマさんは頭が固そうなので「俺たちが生きられる場所は新宿しかないんだ」とか思っていそうだけれど、苦味ちゃんはそこまで新宿に固執していないような気もする。


この2巻目を通して1番印象的だったのは、竜が本当にいい男になった。ということ。

あとはアニメイト有償特典のCDも良かった。1巻のその後の超短編の音声化。ほっこりした。本編読んだあとだと余計ホッコリすると思う。
サクマさんの老眼ネタや演者さんのアドリブ(がどこかを探すの)も楽しい。

来年はまたドラマCD化されるようなので、とてもたのしみ。
(2023年8月現在 CD未発売…)

装丁は相変わらず素晴らしく、薄くなったけど禿げてないサクマさんの色付きの裸体や、入墨が完成した今作のMVP竜の裸体、忘れてはいけない水着っぽいパンイチのレニ&斉木。

そして表紙はもちろん我らが苦味ちゃん。T字でおヒゲを剃っていらっしゃる。

浪漫漫画「新宿ラッキーホール2」
あと100回は読むね。

そうそう、片桐くんは元気でやっているのかな?

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