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一休.comの成長を、それっぽくまとめてみた。

from:2018年12月31日自宅の書斎

訳あって一休さんの成長を振り返る機会がありました。
こちらにも記載しておきます。


資本金:950百万円 
営業収益:6,619百万円
営業利益:2,202百万円
利益率:約33%
※2015年3月期に公表された数字


一休の業績推移|

株式会社一休の主な事業は、ホテルのOTAです。
日本では2000年頃から旅行業に台頭したビジネスモデルで、2000年に「じゃらんnet」、2001年に「楽天トラベル」がサービスを開始しています。

一休社が現在の「一休.com」をリリースしたのは2010年なので、かなり後発だったと言えます。そんな一休の成長推移はこちら。(サービス自体は2000年から)

【取扱高の推移】
2009年:305億
2010年:306億(100%)
2011年:332億(108%)
2012年:382億(115%)
2013年:424億(110%)
2014年:505億(119%)
2015年:562億(111%)

2011年までのトップラインは横ばい。経常利益は減少傾向でしたが、2012年より110%以上と安定して成長しています。その結果、2015年は562億円で着地しました。

ティッピングポイントの2012年〜2013年にかけて、平均単価/室が飛躍しているのが印象的です。


ビジネスモデルとコアコンピタンス|

ここで一旦、一休社の輪郭を確認しておきたいと思います。
前提として、一休社は複数の.comサイトを展開しており、宿泊領域だけでも5つ、それ以外の領域にも展開しています。

参照:一休社ホームページ(2018年12月現在)


そのどれもが、基本的にはハイエンドユーザーをターゲットとし、高級な施設に特化した予約サービスとなっています。これが自他共に認める一休さんの差別化戦略であるわけです。ここでのハイエンドユーザーとは、年間の宿泊消費額が100万円を超えるユーザーのことだと、一休さんは薄っすら言っています。


更にそれらを、独自固有の会員プログラムによって繋ぐことで、一定の経済圏を形成しようとしています。

参照:一休社ホームページ(2018年12月現在)

実際に、「宿泊で貯まったポイントを、一休レストランで利用するお客様が多い。」という話を、一休さんに直接聞いたこともあります。



一休の成長にドライブをかけたKPI|

売上の公式を形成する、最もシンプルなKPIは「客数×客単価」ですが、これをより細かく、かつオリジナルに因数分解することで、事業にきちんと影響を及ぼすKPIとなります。一休さんの場合は、この切り口がユニークでした。

① 年間宿泊消費額=100万円以上客
② 顧客数 < 利用回数 が大事
③ 平均利用単価


①は、先程の会員プログラムの作り方に表れています。(裏は取っていません勝手にそう解釈しています)

最上級会員の条件が、利用額60万円/年間(6ヶ月30万円)なんですね。つまりターゲットとする年間100万円消費客の6割に相当する”その人シェア”を取ることになります。

これはシェア理論で言う所の「独占シェア(55~74%)」領域に相当しますので、「ターゲットにおける年間宿泊予算を独占している状態最上級会員」と言うことになります。


②と③に関しては、こちらを見てもらった方が早そうです。

ご覧の通り、顧客は微増。やはり、平均単価を上げると言う一点に集中し、事業を展開していることがわかります。


一休社の榊社長も、過去このように発言しています。

「我々は顧客を増やすことは全くやろうとしていなくて、顧客当たりの利用額を圧倒的に高める方向に振り切ってから再成長が生まれました。」
「年間1回利用する顧客が2回使う様になったというイメージよりは、年間3回使う顧客が年間10回使う様になったという方向に会社として振り切ったというのが、当社のファンづくりということかと思っています。」



ファン顧客創造のエコシステム|

一休さんの成功要因は、一言で言うとエコシステムの形成です。

上記で解説したコアコンピタンスを持続可能させるための仕組みを、通貫させています。


直接話をお伺いしていてもいつも感じることは、この①と②に対する拘り。更にそれを実現するための独自固有な、プラン、サービス、オプションをきちんと持ち続ける気概の強さです。

宿泊施設側も、一休さんから送客される顧客の質がいつも高く、優良であるとなれば、独自のオプションも提供しやすいわけです。



現状「予約サービス」と言うビジネスモデルは、価格競争の中でしか戦うことができない状況に陥っているケースが多いです。

一休さんの成長には、それに巻き込まれることなく戦うための非常に上手な土俵づくり(ポジショニング)と、それを維持させるための既存客ファーストなマーケティングが、背景としてありました。

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