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鎌倉の思い出

鎌倉には、大学生の時に、当時思いを寄せていた人と初デートで行った。背が高くて、とにかく見た目がかっこよい男性で、なぜ私を選んでくれたのか分からず、私は緊張しっぱなしだった。

冬のよく晴れた日。どうやって行くのか何も知らないまま、ただ彼について行って、バスや電車を乗り継ぎ、鎌倉の大仏にたどり着いた。緊張のせいで、大仏については感動も何もなかった。

その後、長谷寺のそばの小さな食堂でうどんを食べた。向かい合わず、外の景色が見れる席に横に並んで座ったけど、とにかく緊張して食べるのが大変だった。そして、関西の白だしのうどんに慣れていた私には、関東の黒いつゆのうどんは衝撃のまずさだった。しかも、その黒い汁が一張羅のトレンチコートにはねてしみになってしまい、ショックだったのも覚えている。

その後、江ノ島まで行って、湘南の海沿いを散歩した。すべて、彼が準備してくれていたコースで、彼はかっこよくて優しくて、完璧なデートだった。それなのに、横にいる彼を見上げるたびに、あまりのかっこよさに、緊張が解けることはなく、楽しめないままだった。海が久しぶりに見れたのは嬉しかったけれど。

結局、その彼とは、私の心変わりで長く続かなかった。あまりにもかっこよい人とは、うまく話もできず、楽しめず、付き合うのは無理、と彼から学んだのだと思う。そのデートの印象が強過ぎて、その後、もう鎌倉にも江ノ島にも行きたいと思わずにいたけれど、今となっては良い思い出。鎌倉に連れて行ってくれた彼に感謝している。一番印象に残っているのが、黒いつゆのうどんだとしても。

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