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息子との会話

息子が高校生の頃、親知らずを抜いた。ここアメリカでは大抵、全身麻酔で一気に4本を抜く手術になるので、付き添いが必要で私が付き添った。手術の後は、強い痛み止め薬の影響で酔っ払いのような状態になるということを知らなかった。あまりにも息子の様子がおかしいので、初めは驚いたけれど、すぐに薬の影響だと気づいた。聞きもしないことを一人でベラベラと喋る息子に苦笑い。その時、息子が「僕は子どもが欲しい。二人!男の子と女の子!」と言い出して、度肝を抜かれた。でも、酔っ払いの戯言と思っていた。

先日、息子と話していたら、ずっと前から、結婚して子どもが欲しいと思っていた、と言い出して、またもや驚いた。特に、結婚よりも子どもが欲しい、と。どうやらあの時の言葉は本心だったらしい。

息子は今までの苦い経験から、付き合うならお互いに自分の時間を持てる相手がいいけれど、そういう人はいない、と言う。みんな、いつも一緒にいたがるか、一人だと何もしないらしい。娘はテニスや勉強やアニメや編み物など、自分の好きなことをする時間をたくさん持っているよ、と言うと、あの子は珍しい、と言った。そして、特にママみたいに庭の草むしりをするような変な人は見たことがない、そういう人がいい、と笑いながら言った。

褒められたのか、馬鹿にされたのかよく分からないけど、庭の草むしりはこの夏、私が見つけたシンプルライフの大ヒットだったので、そこに目をつけた息子に少し感心した。でも、私はシンプル/ミニマルに暮らして、自分の好きなもの、大切なものを見つけるまでに50年もかかったわけで、それを20歳くらいの人に求めるのは難しい気がする。

私も夫と出会った頃はいつも一緒にいたがっていたし、特別な趣味も何もなかった。しいて言えば、大切な友達と過ごす時間と読書の時間は手放さないようにしていたくらい。だから、この年齢で自分の好きなことが明確で、そのための時間を持つようにしている娘は、やっぱり珍しいのだろう。そして、それを求める同年代の息子も。息子の場合は、いくつかの苦過ぎる経験から学んでたどり着いたのだけれど。

でも、きっといるよ、と息子に言った。まだ出会っていないかもしれないけれど、きっとお互いに自分の時間を持てる相手はいる。


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