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海洋哺乳類を飼い慣らすことについて

今、訳あって飼育下の海洋哺乳類に関する報告書を読んでいる。海洋哺乳類を飼い慣らして、娯楽・営利目的に使うことに反対している団体がまとめた報告書だから、それがどんなに不適切なことかを立証すべく、悲しい事案ばかりが取り上げられているので、とても暗い気分になる。

思い出すのは、日本の水族館で小さなスペースに閉じ込められていた大きな一頭のシロクマ。ひとりぼっちで、狭い水槽をずっと行ったり来たり、ガラス越しの人達の方を見ながら泳ぎ続けていて、見ていて切なくなった。ストレスからくる常同行動というらしい。あれは、完全に不適切な環境だった。

ある知り合いの奥さんはフィジカルセラピスト(運動療法士)で、水族館からイルカの治療を依頼されたという話を聞いたことがある。丸い水槽の中を同じ方向にばかりずっと泳いでいるせいで、背骨が曲がってしまって体調が悪くなったため、治療を依頼されたらしい。彼女はイルカの治療などしたことがなく、依頼を引き受けて試みてはみたけれど、結局そのイルカは死んでしまったそうだ。これは、報告書の中ではなく、本当に聞いた話。

次に思い出すのが、サンアントニオで見たシーワールドのシャチのショー。何も知らずに、飼い慣らされたシャチを見て喜んでいた自分が情けない。自然とは程遠い環境に大きな動物を閉じ込めて、芸まで覚えさせることが、どれほど不適切なことか考えてもみなかった。

日本でもアメリカでも、水族館に何度も行って、アシカのショーやシロイルカ、アザラシ、セイウチ、イルカなどの海洋哺乳類を見た。アメリカのアシカのショーでは、座礁したり負傷した動物を保護していることに焦点を当てていて、人道的であることを前面に押し出していた。でも、その保護した動物に芸を覚えさせて、たくさんの人の前で騒がしいショーを毎日させることは人道的なのか、考えてもみなかった。

ジキルアイランドでは、水族館ではなく、ボートに乗って自然のイルカを見に行った。行く前に、見れるかどうか分からない、と散々念押しされたけれど、ガイドの人も驚くほどたくさんのイルカが、しかもすぐそばまで来て感動した。水族館ではなく、そういうイルカツアーやホエールウォッチングなどでじゅうぶんというか、そっちの方が感動もひとしおで良いと思う。見れない可能性もあるけれど。

海洋哺乳類ではないけれど、これもジキルアイランドで、ウミガメの保護センターに行った。そこは完全に展示ではなく、保護を目的にしていた。回復中のウミガメを見たければどうぞ、という感じ。飼い慣らすためではなく、怪我や病気のウミガメを元気にして自然に戻すため。これが本当に人道的な保護だろう。

太地町のイルカ狩りについても、報告書はたくさん触れていて、ドキュメンタリー映画「The Cove」で見てはいたけれど、さらに悲しくなった。イルカを食べたことはなくても、私が子どもの頃には給食に鯨肉が出て食べていた。それを普通だと思っていた。そういう文化があるとしても、今は食用ではなくて、主に水族館向けの販売用に追い込み漁が続けられているらしいので、それはもう文化でも何でもなくて、ただの搾取でしかない。

何が言いたいのかよく分からないけど、とにかく海洋哺乳類を娯楽・営利目的で飼育するのはおかしいってこと。結局はお金儲けのためのくせに、教育や保護、研究を名目にしている場所がたくさんあって、浅ましいってこと。もう二度と飼い慣らされた海洋哺乳類が展示されている場所には行かない、と心に誓う。

水族館で囚われているシロイルカ達
ジキルアイランドの
自然の中のイルカ

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