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【盛岡市大通】閉業してしまった「酒菜 祥」の”いわしぬた”の思い出。

大好きだった「酒菜 祥」さんの思い出はいくつかあります。一番の思い出は、いつもどれも美しい魚介料理だったと思います。
辞めてしまったのは残念ですが、楽しかった時間をありがとうございます、美味しい料理とお酒をありがとうございます、という感謝の気持ちです。
少し前に訪れたときの様子を振り返ります。


ご姉妹が営む正当酒場

清々しいのれん
お通しがまたいい

大通一丁目、盛岡の繁華街の東側。ちょうどアーケードが切れたあたりを菜園方面へ進むと雑居ビルの二階に「酒肴 祥」がありました。
青い電飾看板の「祥」の字が気になっていて、1年ぐらい前に初めて訪れた酒場です。
吉田さんご姉妹が営むこの酒場は、2023年で26年目。大通のにぎわいから少し離れたところで、ご姉妹二人三脚で客商売をされてきたのでした。
訪れたこの日、「わしの尾 金印」をまずはもらい、今時期の山菜が使われたお通しをつまみながらメニューへ目を通します。

品書きのラインナップが素晴らしすぎる

素晴らしい品書き

ホワイトボードの日替わりメニューはすべて手づくり。毎度毎度目移りして食べたいものを決めかねるのですが、この日は”いわしぬた”、ポテトサラダの二品をすぐさま注文です。

「あ、そういえばお借りしてた本をお返ししますね」とカウンターに立つ妹さんが背中側にある引き出しから一冊本を取り出し、カウンターの上に置きました。
盛岡の酒場を紹介している古い本を、前にお邪魔したときにお貸ししていたのでした。

「どこか行ったことのある店はありました?」
「うーん、聞いたことがある店ばかりだったけど、実際に行ったことがある店は数軒でしたかね? けっこう辞めちゃってる店も載ってましたね」
「そうなんですよね、わたしも実際に行ったことがある店ってあんまりなくって」

なんて話をしました。

芸術品すぎる”いわしぬた”

美しすぎる”いわしぬた”

いわしぬた。惚れ惚れする美しい盛り付け。目が奪われます。鮮度、脂の乗りともに抜群のいい鰯が手に入ったのだとのことです。味わいももちろん最高。わたしの酒場人生でダントツの一品でした。
それからわたしは妹さんと魚談義を始めました。さすが25年も鮮魚を売りに商売をされてきた方だから、そのあたりの知識は豊富で話していて楽しかったです。

あいなめ揚げ

あいなめ揚げが届き、「酔仙 本醸造」を熱燗で二合いただきます。
繊細で上品な甘さのあいなめが美味しかったです。そして、軽く酸味が効いたドレッシングがとてもよく合いあいなめの長所を上手く引き出しているようでした。

「わたしたち姉妹は普通の勤め人の家庭で育って、わたし自身はずっと専業主婦だったんですが、料理が得意な姉に誘われて大通の一角に店を出して26年目。ぜんぜん商売するような血筋じゃなかったんですけど」と妹さんは笑って話しました。
ときどき魚を扱う家業だから鮮魚を使って酒場を経営していると勘違いされるらしいのですが、まったくそんなことはないと話しておられました。

「いろんなお店のいろんな人が、いろんな事情でお店を畳んでるじゃないです。いったいそういう人たちって、辞めたら何をしてるんだろうなーって最近思うんですよね」と続けました。

確かにな、と思います。自分だっていつかは定年退職して、その後は自由な時間が増えて、いったい何をしてるんでしょうか。

まったくですねー、みなさんどうやって過ごしてるんでしょう、などと返し、ぐい呑みに残った酒をちびちびっと呑み込んだのでした。
そしてこの後、一度だけお邪魔して、「酒菜 祥」はひっそりと畳まれていたのでした。
最後に、いただいた美味しい魚介の画像を何枚か載せておきます。

イカ刺し
ホヤ刺し
本マグロ中落ち

「酒菜 祥」さん、本当に今までありがとうございました。

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