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まんしゅうきつこと湯遊とまんきつと

私の大好きな漫画 湯遊ワンダーランドの最終巻が発売された。作者のまんきつ先生が改名したため、“まんしゅうきつこ”名義では最後の作品だ。

連載時は毎週指折り数えて読んでいた本作。私は掲載誌の週刊SPA!がdマガジンで読めるので毎回携帯端末から読んでいたんだけれど、やっぱ紙で読むといいものだ。

61話『ウェイク・アップ・松ぼっくり』で自身の松果体を目覚めさせる描写のテンポの良さ、紙だともっともっと伝わった。

75話『防災意識高い系』では、施設から見える富士山を綺麗だと思う以上に噴火した場合の事を考えちゃう話。どうシミュレーションしても飛来物に当たって死んじゃう。そして最後には解決策を見出すと同時に防災の備えの重要性を認識する。サウナ良し、眺め良し、飯も美味い施設に行った話がこれだなんてめちゃくちゃ面白い。ほんとどうかしている。

77話『愛しのナイスピッチ』では浴室内で話す若い女の子の“結婚を急かす親が大谷翔平を連れてこいと言ってきたエピソード”をキッカケに大谷翔平を落とす方法、またその後の彼の気を引き続けるテクニックまで妄想しきってみせる。女の子たちはとうの昔に次の話題に移っているのにね。

嗚呼、やっぱりまんきつ先生の一番の面白さって、その凄まじい妄想だよなぁ〜と改めて思った。何かをきっかけに連想が続いていく様だとか、初めて水風呂に入った時の描写、1巻最終話でメーヴェに乗った時のようにバーーン!と一つの画が飛び込んでくるところだとか、私には到底思いつかないモノを見せつけられると痺れちゃう。

Woman typeで始まった新連載『まんきつの人生満喫』ではペンネームを変えた経緯が載っている。

湯遊ワンダーランドの最終話にも通ずる、自ら課していた呪縛を自ら解き放つ話。面白い事を描く為の強迫観念から来る自傷行為のような行動からの決別。

その呪縛によって出来た話でたくさん心揺さぶられてきておいてなんだけど、まんきつ先生が自分の幸せを追求出来るモードに入ってくれて本当に良かった。

さっきも言った通り、まんきつ先生の一番の面白さはふとした時に湧き上がる妄想・暴想・連想力だと思っている。だから今後何を描いても大丈夫(凄く身勝手な言い方だけど)

スピリチュアルの事、好きな園芸の事、仏閣巡りの事、なんだっていい。先生の好きな事を今後も読んでみたい。元々サウナ好きの状態から湯遊に出会った楽しさもあるけれど、先生から新しい分野の楽しみ方を教えてもらうのもめちゃくちゃ楽しみだ。

ある種の尖りを捨てる決断をしたわけだけど、どうあったってまんきつ先生は狂人だ。近くにいる人、読者の事、そして何よりもご自身を信じて思うままに作品を描いて欲しい。円熟した狂気も読んでみたい。

最後の3話は、まさに人間の話だった。

 トークイベントやインタビューでも言っていたけれど、湯遊の最終回のネタは結構前から決まっていたそうだ。

とは言え、当初思い描いていた最終回と実際に描いた時の最終回は変わっている部分も多かったと思う。76話『北の国から』の最終ページが連載時と単行本とでは違っている事からも伝わった。

悩み苦しみ、痣だらけになりながら辿り着いた最終回は本当に素晴らしかった。生きている上で嫌な事は多いけど、その分キラキラとした素晴らしい事もたくさんあるんだと気付かせてくれた。自分次第で世界の見え方は変わる。作家の事を誰よりも考え、一生懸命になってくれる編集の高石さんとだから見えたモノだと思う。

私はハルモヤさんのオチが本当に大好きなんだけれど、湯遊のオチも同じ位に好きだ。

まんきつ先生は高石さんによって新しい視点に気付けた事もあっただろうし、高石さんも予想以上の表現で返してきたまんきつ先生の作品に驚き興奮した事もあっただろう。

私にとって最強の二人。この二人の渾身の作品を読めて改めて幸せだ。

湯遊の最終回、未だに寂しいけれどさ、いつかまた二人で創る作品が読めると思うと私の未来はまだまだ明るい。

“まんしゅうきつこ”から“まんきつ”へ。踊っちゃいたいくらいに楽しい事が待っているぜ。

私の大好きな作品、一人でも多くの人に読んでもらいたい。この作品を必要としている“あなた”がきっといるはず。

最後に、私が一生を通じて読み続ける作品を描いてくれてありがとうございました。これからもずっとずっと応援していきます。湯遊LOVE♨️

湯遊ワンダーランド 1巻


湯遊ワンダーランド 2巻


湯遊ワンダーランド 3巻


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