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ドラマちんぽの裏スジ

オラが街にちんぽがやってきた。2018年5月の事であった。

私小説“夫のちんぽが入らない”が映像化されるにあたり、エキストラを募集していた。

詳細を確認すると、現在私が住んでいる地域でロケをするとの事であり、無類のちんぽ好きとして知られる私はエキストラとして2回参加してきた。

ドラマのちんぽが原作ちんぽのアナザーストーリーを見せてくれたように、エキストラとして参加した我々にも各々のストーリーがあるんだと思う。せっかくなのでその裏側、裏スジを書き記す事にした。

鍋焼きうどんのお店を通過

主人公の二人が深夜に鍋焼きうどんを食べにいく。そこのお店の前を通過するサラリーマン、それが私の配役だった。原作の鍋焼きうどんのシーンが大好きだったので小躍りをした。

ロケ地は湯殿山食堂。私が一年前、転勤初日にお昼を食べた場所だ。原作のイメージとピッタリすぎたので、ほぉ〜〜って唸った。

日が暮れるのを待ち、撮影はスタートした。

酒を飲んで帰路につくサラリーマンが、なんか良さそうな店だなと入り口に目線をやる。でもまぁ今日は帰るか、ってな具合で歩き出す。

こんなコンセプトを与えられ私は歩いた。4回程撮ったところで、私の役目は終わった。

この一瞬のシーンのために、本当に多くのスタッフが動き回り、かなりの時間を割いていた。ドラマ制作の途方もなさに心底驚いた。

ドラマでは1秒にも満たないシーンだったが、観た刹那あの時の様々な情景がブワッと蘇った。妻は歩き方で私だと分かると言ってくれて、なんだか嬉しくなった。


自然に歩こうと努める二人

2回目のエキストラは妻と二人で参加した。

寂れたドライブインに朝早く着くと、他のエキストラ達もやってきた。親子連れの家族、おじさん、おばさん、私たち夫婦にそれぞれの役が振り分けられる。

中村蒼さん扮する研一がソフトクリームを持って店から出てくる、その後ろを歩くアベックが私たちの配役だった。ちなみにそれぞれ単独で来たおじさんとおばさんは夫婦役を任命されていた。

自然に会話をする感じで歩いてください、と指示を受けた演技ド下手な私たちは困った。困ったので心から好きなものについて話そうと決めた。

そう、飼い猫の事である。こいつの事なら自然に話せる。

「あいつ、なんであんなにかわいいんだろう」「あいつのお陰で毎日が幸せ」「今すぐ会って抱きしめたくなってきた」「猫は鎹である」

こんな事を言いながらテクテク歩いた。めちゃくちゃ楽しかった。

ロケが終わり、我々はソフトクリームを食べた。間近でずっとソフトクリームを見ていたのだ、キメずにはいられなかった。

ふと近くのテーブルに目をやると、急遽夫婦役を任命されていたおじさんとおばさんが仲良くソフトクリームを食べていた。すぐに帰るのが惜しくなり、少し話してみたくなったのだろうか。夫のちんぽについて語り合っているのだろうか。

外では男性スタッフ達がアイスクリームを賭けてジャンケンをして盛り上がっている。

番組制作の雰囲気がどんなものなのか一切知らないけれど、ここはきっと“良い現場”なんだろうなと思った。

残念ながら我々の姿はドラマに映り込む事は無かったが、あの日の事を思い出すと今でも心がじんわりと温かくなる。そう言えば、よく晴れた日だった。

廃校となった小学校でのロケ中、普段無人の場所に大勢の人が集まっている事を不審がった近隣住民により通報で警察官が駆けつけ、作品名から余計にややこしくなった、といった出来事もあったそうだ。嗚呼、なんてちんぽらしいエピソードなんだ。てにをはさんのこだまんがの世界観そのまんまではないか!

短い期間ではあったが、オラが街にちんぽは確かに匂いを擦り付けていった。

オラが街からちんぽが去ったその後

とある病院がドラマの応援をしていた。


ロケ地の近くにめちゃくちゃデカい鳥居がある事を思い出した。こだまさんは自身の首に鳥居を所有しているので、勝手にその繋がりが嬉しくなった。

鍋焼きうどんのお店が閉店した。看板を見た瞬間、私はこだまさんのツイートを思い出した。

極め付けとして、温泉に行った主人公二人の浴衣を見て震えた。

350年近く続く、地域を代表する老舗旅館のものなのだが、2月に別法人へと経営譲渡されたとの報道があった。

こだまさん、また色々と終わらせてんじゃん…と驚いた。

でも、ふとこんな事を考えた。

こだまさんが終わらせているのではなく、“終わるもの”がこだまさんを引き寄せているのではないだろうか

建物だとか、事象だとかにも意思があるとする。それらが終わりを迎える時、自身の事を味わい深く感じ取ってくれる人間を引き寄せているとしたら、面白いなと考えた。

上記の食堂、老舗旅館の事が単純にこれに当てはまるとは言わないし、スピリチュアルな事はあまり信じないけれどなんだか私の中でこの考えと雨宮まみさんのツイートが繋がった。

“夫のちんぽが入らない”という超ド級のネタをぶっ放したこだまさんだけど、この先も大丈夫なんだと思う。見当違いなのかもしれないけれど大丈夫。様々な意思が、美しく、可笑しく、力強く、書いてくれとこだまさんを引き寄せてくれる。

ドラマちんぽのエキストラを通してこんな事を考えた。色々と動いてみるもんだと思った。

原作ちんぽが、コミカライズちんぽが、ドラマちんぽが、もっともっと多くの人たちに届きますように。

ちんぽよ、日本を、世界を、駆け巡っておくれ。

#夫のちんぽが入らない #こだま #タナダユキ #Netflix



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