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「nudie jeans 一号店の奇跡」

世界一周449日目(9/20)

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外はいつまで経っても
早朝のような明るさだったので、
起きたのは9時半だった。

「それに
寒いっっっ!!!」

チェコのアウトドアーショップで
買っておいたサバイバルシートを
ブランケットみたいにしてかけてなかったら
眠ることができなかっただろうな。

てかほんとうにすごいな、
このサバイバルシート?
スペースブランケット?
ま、どっちでも同じか。
は保温性にすぐれている。

普通のペラッペラの
クシャクシャするヤツだと
すぐにやぶけてしまうから、

「reusable(再利用できます)」

ってのがいいよ!うん!
これマジでオススメです!
(って誰に勧めてんだか)

誰か僕に共感してくれる人は
いないんだろうか…?

野宿は孤独なのだ。

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今日はnudie jeansの一号店で
インストアライブを
することになっている。

昨日スタッフの
ミシェルさんから言われたことは

「二時間のライブで
一本ジーンズをプレゼント」

ということだたった。

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12時からスタートで、
11時半にはお店に来るように言われた。

いつも路上で唄うのとは
また違った感じだ。少し緊張する。

こういうのってやり出しちゃえば
全然なんてことないんだけどね。

それに2時間っていう尺に足りるのだろうか?

僕の持ち歌はカバーとオリジナル(5曲)含めて
20曲くらいある。
まぁ、普通にやってたら2時間くらいの長さ。

だけど、緊張とかで早く演奏してしまったら
あっという間にネタが
尽きてしまうんじゃないかとちょっと不安だ。

MCでどれだけ時間が稼げるかが鍵だと思う。

頭の中でどんなことを
英語で喋ればいいんだろうかと
シミュレーションする。

僕が旅してきた印象だと、
スウェーデンの人たちは英語が達者だ。
かなり流暢に喋る。

そういう英語になってくると
何て言っているのか聞き取れなくなって
くることが多い。

nudie jeansのスタッフさんたちは
まさにそうだった。

世界規模に展開しているメーカー
だからってのもあるんだろうけど。



nudie jeans一号店のすぐ近くにあるカフェで
チャイラテを飲みながら、
昨日もらったカタログを読んで時間をつぶした。

カフェのトイレは個室だったので、
頭も洗っておいた。

いや、だって身だしなみって
大切でしょう?

って僕が言っても説得力ないか。

上からの照明だとマッチョに見える。

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11時半ぴったしに
店に向かった。

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昨日いたミシェルさんはおらず、
昨日と同じスタッフさんは一人しかいなかった。

一応僕がここでライブをやることは
聞いているそうだけど、
ほんとうにお店の中でシャウトして
唄ってもいいんだろうか?

店内には普通にスウェーデンの
お洒落さんたちが買い物をしている。

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「で、できることなら、やらなくてもー」

ってビビったら負けだ!

お店のショウウィンドウを
背にするようにして椅子が置かれた。

友人と二人旅した時に作ってもらった
「COME FROM JAPAN」と書かれた段ボールと
デッドベアのレックスくんを置く。

お客さんは
ほとんど僕なんかに注意を向けない。

ははは。いい感じだ。

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「じゃあ、そろそろやります」

「あ、どうぞー」

店内だというのに、
そこまで音が反響しなかった。

それでもうるさくない選曲と
唄い方で弾き語りをする。


僕のことを観に
来てくれた人なんていなかった。

頭の中で、どうして今、
自分がここでギターなんて
弾いているんだろうと不思議な気持ちになる。

長いこと訪れたかった
ジーンズメーカーの一号店で、
昨日事務所を見学させてもらったどころか、
店内ライブまでさせてもらってるだなんて。

それだけで十分だよ。

堂々としてりゃあいい。
臆することはない。

アップなしのライブで、
声はそこまえ出なかったが、
演奏そのものを楽しむことができた。



一時間を過ぎてスタッフさんが

「そんなに続けでやって
疲れたでしょう?休憩したら?」
と言ってくれたので
ライブを一時中断することに。

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「それじゃあ、
取り置きしてたジーンズ試着してみる?
これよね?」

「あぁ、ありがとうございます。
ってー…これ、取り置き
してたヤツと違う…。

「そうなの!!?
ちょっと待ってね」

スタッフのお姉さんは
棚に置いてある同じ型の
ジーンズを探してくれた。

「ええっと、ごめんなさい。
売れちゃったみたい」

えぇぇぇぇ~~~~~…

「待ってて!在庫も見てくるわ!」

お姉さんは地下の在庫も
探してきてくれたのだが、

こんなことってあるだろうか?
僕のサイズにあったものは一着もなかった。

「ごめんなさい。
在庫はないみたい。

どうする?
住所さえ教えてくれれば送るけどー」

「すいません…
僕はここで手に入れたジーンズと一緒に
旅を続けたいんです」

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ワガママだ。

だけど、これはずっと考えてたこと。

nudie jeansが生まれた
この場所で手に入れたジーンズで旅をする。

お姉さんは他のお店のに、
わざわざジーンズを探しに行ってくれた。

僕は店内で他のものも試着してみたのだが、
最近のラインは細いスリムな型が多く、
正直、旅向きじゃない。


「ごめんね。これしかなかったわ」

30分して帰ってきたお姉さんが持って来たのは、
僕がチェコで盗まれたのと同じ型だった。

サイズは前回穿いていたのより
1インチ小さい28インチ。

試着してみるとジャストフィットだった。
どうやら僕の体型も変わったらしい。


『コイツ…戻ってきたんだ』

そう思った。


色々な偶然が重なった。

日本でこれと同じ型を手に入れた時も、
店内に置いてあるのはその一点だけだった。

"Regular Alf red selvage"という型のジーンズ。

2012年にnudie jeansは全てのラインを
オーガニックコットンに替えたが、
これはそれ以前の型。

つまりもう市場に出回ることのない
デッドストックだった。


「これね。私のなんだけど、
一回も穿いてないやつだから。
どうする?やっぱり他のにする?」

「いや、これにします。
実はこれ、チェコで盗まれたのと
同じ型なんです」

「わぁ!それってすごい!」


糊のきいた生デニム。

だけど僕が旅を続けていくうちに
どんどん僕に馴染んでくることだろう。

穴が空いたって平気だ。
だって僕にはここでもらった
リペアキットがあるから。

またコイツと旅をしていこう。

最高じゃないか?

戻ってきたジーンズを穿いた僕を、
お姉さんはポラロイドカメラで写真を撮ってくれた。

それが店内の奥にあるギャラリーの一枚に加えられた。

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「それじゃあ、
ありがとうございます。
ここにこれて、よかったです!」

「うん。
私たちも嬉しかったわ。
それじゃよい旅を!」

頭を下げてお店を出た。


チェコで盗難に遭って
今まで一緒に旅をしてきた仲間の
ほとんどを僕は失った。

だけど、今こうして
自分の身の回りの物を見ると、
新しいものばかりだ。

また新しい僕の世界一周が始まったのだ。

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昨日と同じショッピングストリートで
バスキングをした。

ベルギー人の若手ジャーナリストで
世界中のバスカーを写真に
収めているんだというヤツと会った。

自身もアンプを使ってブルースハープで
バスキングをするヤツだった。

一緒にセッションしようというので、
簡単な「上を向いて歩こう」を演った。

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この日のアガリは20ドルちょっと。
まぁ、僕ってそんなもんさ。

でも、確実にレスポンスをくれた人たちを
笑顔にした自信はある。それでオーライ。

無表情でコインを入れて、
親指を立ててくれたおっちゃんとかいて、
けっこう嬉しかったしね。


寝るまでの時間、
マクドナルドで日記を書いた。

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今日の寝床は川沿い。

明日は明日は日曜日ということだからだろう。

バーでは重点音が響く音楽が外まで流れており、
若者たちが「ヒャッホーーーー!!!」と
上機嫌に酔っぱらっていた。

僕が立てたテントに、
酒瓶をもったおっちゃん二人が絡んできたが、
適当にお喋りするとすぐに去っていった。

やっぱりここは先進国なのかもな。

またひとつ、旅の中で
自分のしたかったことが叶った。

明日僕は別の街へ行く。

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現在、自作キャンピングカー「モバイルハウス」で日本を旅しながら漫画製作を続けております。 サポートしていただけると僕とマトリョーシカさん(彼女)の食事がちょっとだけ豊かになります。 Kindleでも漫画を販売しておりますのでどうぞそちらもよろしくお願いします。