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「マルメへGO! in スウェーデン」

世界一周450日目(9/21)

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イェーテボリの朝の空は白かった。

テントをたたんで駅へと向かった。
もちろん次の街まではヒッチハイクだ。

なぜなならここは北欧で
物価もクソ高いからだ。


スウェーデンの売店ではよく
「セット売り」を見かける。

1つのお菓子なり果物なりを買うよりかは、
2つや3つ買う方がお得なのだ。

おかげで食べ物を買う時には
まんまとお店側の戦略にはまってしまっている。

駅の売店でコーヒーとセット売りのフルーツと
パンひとつ買うと、あっという間に食費は
700円くらいになってしまった。


駅に着くとシュールな銅像を見つけて驚いた。

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駅構内にある女のコの銅像。

見つけた時は思わず
「うわっ!」って言ったもん。
めっちゃ落ち込んでる…、のだろうか?



ヒッチハイクポイントがある場所までは
通勤電車に乗った。

イェーテボリから5つくらい先の駅だ。
そのお値段66クローナ(1,239yen)。

は、はは…。
交通費もアホみたいに高いや…。

北欧の電車は日本のグリーン車よりも綺麗だった。

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駅名はアナウンスのみの通知だったので、
降り過ごさないように注意する。

駅から少し歩いたところにIKEAがあり、
すぐその先にハイウェイへ続く道がある。

IKEAでトイレをすませると、
僕はヒッチハイクポイントへと向かった。



実際、その場所に行ってみると、
全然車が止まるようなスペースがなかった。

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スウェーデンのヒッチハイクの成功率は
「average(平均)」と書かれれていたが、
どれくらい時間がかかるんだろうか…??

僕はギターケースから
黄色い画用紙を取り出した。

ドルトムントでバスキングをやった時に
日本人のサポーターの方からもらったものだ。

表面には日本語で
「香川選手おかえりなさい」
と書かれている。

裏面に筆ペンで「Malmo」と書いた。

次の目的地はスウェーデンで
三番目に大きい街、マルメという街。

海を渡るハイウェイを辿れば
そこはデンマーク、コペンハーゲン。

僕はコペンハーゲンに戻らなくてはならない。

そこから24日にアイルランド行きの
飛行機が出るのだ。



「さあ、今日はどんな出会いが
待っているんだろう?」

元気よくやって来る車にボードを振りかざした。

朝の時間帯で車の交通量は少ない。
一体ここを通る車のどれほどが
マルメへと行くのだろうか?

それなりにレスポンスはあったが、
一台も止まってくる車はない。

もしかして目的地を
書いてるからいけないのだろうか?

僕としても一発でマルメまで
行けるとは思っていない。

イェーテボリからマルメまでは
200km以上も離れている。

運転手からいつものように
「行き先がちがうんだよ」や
「がんばれ!」となんかの
ハンドサインを送られてくる。


無表情で中指を立ててくるヤツもいた。

いや~、久しぶりだなぁ。
久しぶり過ぎてドキっとなったよ。

ついつい考えてしまう。

『僕は親指を立てる。
ヤツは中指を立てた。

これって"真逆の位置関係"に
あるんじゃないか?』と。


僕は「乗せてくれないか?」
とハンドサインを送り、

ヤツは「乗せるもんか!」と言う。

そーいうことだろう。

別に無視すりゃあいいものを。

精神年齢が低いんだろうか?

どんな場所にも嫌悪感を露わにしなくちゃ
気が済まないヤツはいる。

あー、気にしてもしょうがない。

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あっという間に
2時間が過ぎた。

僕は何度か場所を代えてみたが、
結果は同じだった。

ハイウェイ直前で、
まだスピードを出し切っていない車だが、
どうやらここは車が止まるスペースがない。

その間に僕は新たに
「ファックサイン」を送って来る運転手に
二回も会った。

もう慣れたよね。

お金も払わずにタダで
移動しようとしていることが気に喰わないのか。
高い金払って手に入れた自分の車に、
タダで乗るってのが気に喰わないのか。

まぁ、貧乏バックパッカーなんてそんなもんだし、
人の好意をあてにしているところもある。

その土地に、働いて、お金を稼ぎ、
毎日を暮らす人とは、
僕は真逆の位置にいる人間だ。

ただそこを通り過ぎるだけの、
風みたいな存在。

風来坊とはそういう意味なのかもしれない。



「車止まんねぇ~~~~~~…」

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自分がそんな長い時間、
同じ場所に留まっているなんて感覚はなかった。

向こうからやって来た車に笑顔で
ひたすらアピールする。それの繰り返し。

え?まさかここで野宿とか、
そんなギャグはないっすよね?


「10マイルほど離れた
ファルケンボーグまでだったら
乗せてあげるよ?」

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3回目に場所を代えた時に
ようやく車が止まってくれた。

運転手のお兄さんはビール会社で働く
カラッツさんとう方だった。

両親のIKEA買い物につき合って、
その帰りだと言う。

車の後ろにはプラスチックの籠が
3つほど置いてあった。

やっぱり、車に乗せてくれる人は
似ている部分がある気がする。

どこか優しげで、
それを相手に感じさせる
空気感みたいなのがある。

カラッツさんとは
スウェーデンは電気を買う際に、
電力会社を選べるんだとかそんな話をした。





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僕は途中にあるガソリンスタンドで
降ろしてもらった。

お礼を言ってカラッツさんの車を見送る。

ガソリンスタンドで売られている食べ物は
やっぱり値段が高かった。

ここまで食糧を運ぶコストがかかるからだろう。

何も買わずにトイレを済ませ、
マルメ行きの看板の少し手前で親指を立てる。

一気に気温が下がり、パタゴニアのフリースを羽織った。


街から離れれば離れるほど、
人は優しくなっていくような気がするのは
僕だけだろうか?

15分もしないで車が止まってくれた。

タバコをプカプカ吹かすカップルだった。

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ドライバーの髭をたくわえた
ガタイのいいお兄さんはムッツりしていて、
彼女の方はタバコを吹かしながら
楽しそうに喋っていた。

後部座席に座った僕とは特に会話はなかったけど、
ただ単純に「行き先が同じだから乗せてやるよ?」
という優しさだった。ありがとう。

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何度か寝落ちしかけ、
揺られる車に頭をぶつけては目を覚ました。

ヨーロッパのハイウェイ沿いの景色は
ほんとうによく似ている。

畑や森があり、時々風力発電の羽が回っている。

使われなくなった大型トラックの側面に
「Burger King 1km」なんか書かれた広告
が一面に貼られ、畑の隅っこに放置されていたのが、
スウェーデンにしては雑だなぁと意外に思えた。



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大きなガソリンスタンドに着くと、
お兄さんは「ここまでで悪いね」と言ってくれた。

ガソリンスタンドでコーヒーと
チョコバーを買って休憩した。

カプチーノやマキアートが出てくる
コーヒーマシーンがお店の中に置いてあり、
お客さんはそれをついでレジに行く。

『これってタダ飲みできそうだな…』
とついつい思ってしまう。


コーヒーを飲むと僕はヒッチハイクを
開始しようとガソリンスタンドの出口へと向かった。

そこには既に二人のバックパッカーが
ヒッチハイクしていた。

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ポーランドから来た二人は僕と同じ
マルメが目的地だった。

別に急ぐ旅でもないので、
近くベンチに腰掛けて順番を待った。

ここに来たのは15分前だという。
やって来た場所も僕と同じイェーテボリだった。

彼女の方はドライバーに直接交渉しにいき、
10分もかからないで車をゲットしていた。

やっぱ女のコだと車捕まえるのが早いよね。


「乗せてくれない?」

「いいとも」

「二人なんだけど、
大丈夫かしら?」

「いいよ♪」

って行てみたら
彼氏がいるっていう。

後部座席でいちゃついたら殴りそうだ(笑)。

ごめん、
漫画家の妄想だから許してね。



ポーランドの二人がいなくなって
僕もヒッチハイクを開始した。

雲がずいぶん低いところを流れていた。

カラスが太陽に向かって
風に乗って飛んでいく姿は、どこか美しく見えた。

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何台か車が通り過ぎ、
近くに停まっていた車に
おじいちゃんが戻って来ると、僕に手招きをした。

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オゥヴァさんというおじいちゃんは片耳が聞こえず、
会話をすると時には僕は
はっきりと喋らないといけなかった。

「あそこに狩猟状があって、
シーズンになると海外から
ツーリストがやってくるんだよ」

とか

「あそこに原子力発電所が見えるだろう?
スウェーデンには10台ほどあるんだ」

とか

「あそこに見える建物は
部屋を借りるのにとてもお金がかかるんだ」

とか車を走らせながら僕に色々と教えてくれた。

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乗っていたレクサスは
今日の走行距離を示していた。230km。

きっと今日の僕と同じような距離を
移動してきたんだろう。


マルメの中心地近くに着くと、
オゥヴァおじいちゃんは
僕をメトロ乗り場の前で降ろしてくれた。

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「ここからコペンハーゲン行きの
電車に乗ることができるよ。
ええっと、確か100クローナ
ちょっとだったかな?」

隣りの国に行くのに
1500円くらいで行けるだなんて。
これならヒッチハイクする必要はないな。

オゥヴァおじいちゃんとハグをして別れた。

19歳の孫娘さんがいるらしい。
とても優しい笑顔をしてきた。

こういうヒッチハイクのあとは
とても優しい気持ちになれる。

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日曜日のマルメの街は
静まりかえっていた。

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街の中心地をぶらついてみたが、
カフェくらいしか開いていなかった。


僕は噛みタバコを買ってみた。

nudie jeansの写真に時々、
バックポケットに丸い跡がついているものを
見ることがある。

あれは噛みタバコのケースを
入れている跡らしいのだが、
一体どんなものなんだろう?

ミャンマーやインドでクチャクチャして、
濁った唾液をペッと吐き捨てるのを
見たことがあるけど、まぁ物は試しだ。
ひとつ買ってみよう。

45クローナ(686yen)でてきとうに
ひとつ選んで買ってみた。

味わい方が分からない。
とりあえず不味い唾がでるくらいだ。
これなら普通のタバコの方がいいな。

でも、最近すい過ぎで
肺がゼーゼー言ってるから、停煙で。

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マクドナルドでコーヒーひとつ注文すると
24時過ぎまで作業した。

Wi-Fiとコンセント。

物価の高い国すら
300円もあれば作業ができる。

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お客を長居させないためだろうか?

マクドナルドの入り口は
ずっと開けっ放しになっており、
外から冷たい風が入ってきた。

寝床を探しに外へ出ると、気温は一気に下がった。

体をこわばらせながら深夜のマルメの街を歩く。


今日の寝床は公園。

冷たい風に木々もざわめく。

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現在、自作キャンピングカー「モバイルハウス」で日本を旅しながら漫画製作を続けております。 サポートしていただけると僕とマトリョーシカさん(彼女)の食事がちょっとだけ豊かになります。 Kindleでも漫画を販売しておりますのでどうぞそちらもよろしくお願いします。