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たびするシューレ報告記

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記事一覧

冬の佐伯に、「楽園ミュージアム」を夢見た夕べ ―「たびするシューレ」、佐伯編を終えて~大分県立美術館OPAM 館長 新見隆

第一部:「佐伯の町全体を、マリン・ミュージアムにしよう!」

[ 夏のサン・サーンス、田中希代子、昭和三〇年代 ]
 夏だろうが、冬だろうが、僕が、大分県立美術館の館長室で、聴いているのは、サン・サーンスのピアノ協奏曲と決まっていて、しかも演奏は、見事な思い切りで、「弾いて、弾いて、弾きまくる」、それでも「構成感が、寸分も揺るがない」、不世出のピアニスト、田中希代子さんのものだ。
 彼女は、もう亡

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たびするシューレ 第1回 竹田へのたび ~カモシカ書店 岩尾 晋作

1.日本一のゲストハウスでエクスタシー
隠れキリシタンの礼拝堂があり、滝廉太郎が「荒城の月」の霊感を受けた岡城を有し、現代も石畳や武家屋敷を残す幽玄とますらおぶりの城下町、竹田。古都の趣に加え、近年は現代的なセンスで最新の図書館やアートレジデンスを作り、県内で明らかに異彩を放っている革命の町だ。
僕の暮らす大分市内から竹田のセントラルシティまでは車で1時間。 たびするシューレの初開催を目前にして、

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シューベルトの連弾 -竹田での、「旅のシューレ」を終えて~大分県立美術館OPAM 館長 新見隆

[ シューベルティアーデ ]  
こうして、東京郊外のサナトリウムの森の一角に、久しぶりに戻って、女房と娘の顔を久しぶりに見ながら、お互い、子供の頃に返ったような、懐かしさ温かさを感じて、ソファに寝転がって、シューベルトのピアノを聴く。
 井上直幸と竹内啓子による、あまり知られていない、連弾曲だ。
 若い頃から、彼のドビュッシーを愛聴した井上直幸だが、帰らぬ人となった。
 シューベルトの連弾は、も

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山羊とマリア様 臼杵シューレ報告記 カモシカ書店 岩尾晋作

 今回のシューレはまず、会場のgallerySARAYAMAの素晴らしさが強い印象を残している。洗練された広い空間、オーナーの宇佐美夫妻のセンスと人柄、また臼杵大仏のすぐ近くという立地の利便性、歴史性。今後、このまちで必要とされるあらゆるムーブメントに対して、gallerySARAYAMAは創造的・拡張的・互換的に対応できるだろう。
間違いなく、臼杵の新しい世代が始まっているのだと確信するに余りあ

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たびするシューレ 大分市 報告記 カモシカ書店 岩尾晋作

大分市は僕が生まれたところだ。ここで18年過ごし、東京で12年学んで遊び、再び大分市で暮らし始めて5年が経とうとしている。
大分市で暮らしながら、どこかに引っ越そうとは全く思わないし、僕はこの街が好きだ。
何より距離感がいい。市役所・県庁・税務署・警察署・保健所・法務局。全てが徒歩で済む、非常に手続きのしやすい街で、そういった意味ではまさに商人の街と言えるだろう。別に商人の街だから好きということで

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臼杵シューレ。 新見隆

[ 臼杵オランダ説という、偏見?ならぬ先見 ]

[ 『ホモ・ルーデンス』しかないよ! ]
 「ダッチ・アカウント」、つまり、英語で割り勘。これは、ケチで始末屋、という意味じゃなく、むしろ、「皆で楽しんで、皆で補う、つまり、平等と自由の、博愛精神、これが、オランダ人のスピリット」。
 とまあ、威勢良く始めた、レクチャーだったが、自分でやってみて、果たしてどうだったのだろうか。
 それはさておき、今

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