タイトル未定

こんな夢を見た。
 「潜航用意!」と号令がかかる。驚いて目を開けると薄暗い空間だった。そこは最近映画で見た潜水艦の中そのものだった。まもなくこれが夢の中だと気づき、あたりを見回してみる。少し手狭な感じの艦内は赤い電灯に照らされて何やらたくさんの計器が光っていて、ゴゴゴ……と機械音が鳴り続けている。周りには5人程度の人がいてそれぞれ持ち場についている。表情は不鮮明だが緊張からだろうか、皆どこか動きや声色が硬い。
 ところで私はというといかにも仕事の邪魔になりそうな場所に何も持たずに突っ立っている。どうやら乗組員たちの目に私の姿は映っていないようだ。しめた、何だか面白そうだから見学してみよう。そのような考えで次の動きを待っていた。

 程なくして艦長と思しき影から先ほどと同じ声で「潜航開始」の号令がかかった。場の空気がまた一段と引き締まる。指示を受けた乗組員は一斉に操作を始めた。するとにわかに船が前傾し、同時にコポコポ……と水の音がした。おそらく潜っていっているのだろう、夢の中であっても気圧で耳が痛くなりそうになる錯覚があった。大きく口を開けてみたが無意味なことに気がついてすぐにやめた。この艦の正体や目的について少し考えてみたが何もヒントがなかったので諦めてもう一度辺りを見回してみる。
 近くの壁に小窓を見つけた。潜水艦に窓?と一瞬思ったがひとまず覗いてみる。案の定外は真っ暗だったが、後方には白い航跡が天の川のように伸びて、たくさんの白く細かい気泡が船内の赤い光に照らされて昇って行く様子がとても綺麗に見えた。よくよく目を凝らして外を見てみるといくつか影が見える。大きさがさまざまなそれは紫色をしていて、独特の禍々しさがあった。漂っているだけだったがとても目を惹かれた。時折ゴン、と音をたて艦にぶつかっているようだったが問題はないようだ。艦はひたすら潜り続けていた。

 乗組員は皆とても静かであった。職務上必要な最低限の会話のみをこなしているといった感じで、少し恐怖を覚えた。会話していてくれればこの艦についての情報を何か得られるかも知れなかったが、とても雑談が花を咲かせるような環境ではなかった。乗組員は皆少し俯き猫背気味で、覇気の類といったものは全く感じなかった。この艦の目的を知りたいという思いは募るばかりであったが、ひたすらに潜航を続けるこの艦に身を預けるほかなかった。

 しばらく進み水深が増してくると、景色が少しずつ変わってきた。音は急に静かになった。なぜか外が少し明るくなり視界が開けてきた。どこか懐かしい、温かみのあるオレンジ。そんな雰囲気だった。
 しかし角度を変えて覗くと大きな黒い塊がいくつも針路上にあるのが見えた。すると操舵係が慌ただしく舵を切り、大きな余裕を持って黒い塊を回避した。近づくだけでも危険なんだろうか、そんなことを考えた束の間。今度は目前に突然その塊が出現し、必死の転舵も虚しく我々はそれに飲み込まれた。すると突然ドーンという大きな音と共に艦が大きく揺れた。電灯の灯りがちらつき、机の上のものが一斉に床に散らばった。するとどこからともなくこれまでとは全く毛色の異なる不快な音があたりに響き渡った。女性の高い悲鳴、金属が擦れる音、子供の泣き声、殴られる音、蹴られる音、何かが潰れる時の水分を含んだようなグシャっという音。とめどなく流れ込んでくる音は耳を塞いでも全くお構いなしに襲いかかってきた。思わずうずくまり叫び声を上げると、数秒後突然周りが明るくなり、不快な情報もやってこなくなった。小窓を覗くと後方に先刻の黒い塊が見えた。どうやら脱出したようだ。ほっと胸を撫で下ろした。
 ところで不思議だったのは黒い塊の中にいた間あの音たちを聞いていたのは私だけで、乗組員はあまり変わらない様子でいたことだ。この空間で自分一人だけあんな鬼気迫る様子だったのを考えると恥ずかしくなった。相変わらず艦は潜るのをやめない。
 
 そうしてしばらく進んでいくうちに、また景色が変化した。今度は眼下に大きな膜のようなものが現れた。それはまるで細胞の核のような見た目をしており、いかにも最深部であるといった様相であった。何だかとっても厭な予感、どうしても言葉にすることができない、それでいてどうしようもなく、できることなら今すぐにこの場から逃げ出したい、そんな気持ちがした。
 すると一度艦が止まった。どうしたのかと操舵の方に目をやると、艦長だけがじっとこちらを見て何かを訴えているようだった。まるで私の覚悟を問うているかのような強い視線が、こちらに向いていた。逃げ出したい気持ちとこの中を見てみたい気持ちで拮抗していたが、心を固め、艦長に一度大きく頷いた。
 
 艦長が「突入」と号令をかけた。これまでで一番大きな音を立てながら艦は発進した。艦は斜めに核の膜に接触しつつ前進し、徐々にその内部へ侵入した。艦全体が核に入ったと思われたその時、窓からの景色は突然黒から真っ青になり「キーーン」という甲高い音が脳に直接響いた。すると、目の前一面が今度は真っ白になった。
 
 足元に薄く水が張ってある何もない空間。一度瞬きをして目を開けると、そこには見覚えのある人影があった。私である。ただし10年以上は若返っている。穢れを知らない、美しい瞳をしている。とても自分とは思えないような綺麗でまっすぐな笑みを浮かべてふわふわと漂っている。思わず見惚れて目で追ってしまう。彼が私を見つけて目が合うと、まっすぐゆっくりとこちらに向かってきた。逃げなければと本能が察知したがどうしても目を逸らすことができず、とうとう目前までやってきた。小さい顔を寄せて、何かを言おうとしている。拒絶しようにも、全く抵抗することができなかった。彼は一言、

「そう。あなたが探していたものはねっ、・・・・・・・。」

 直後突然強い力で背中をぐんと引っ張られる感覚があった。彼がどんどん遠ざかっていく。意識が艦に帰ってきたと同時に、先ほどよりさらに強い耳鳴りに加え、頭をとても強い力で締め付けるような痛みと強烈な吐き気に襲われた。心臓の鼓動と呼吸が急に早くなり、全身が熱くなった。思わず叫び声を出すと、申し合わせたかのように艦内に警報音が鳴り響いた。すると艦は急浮上を始め、核を脱出した。脱出後も速度を緩めることなく急上昇が続いたようだ。私の意識はその変化に耐えられず、闇に落ちた。あの時自分に言われた「正解」を思い出すことはついにできなかった。

 「また自身に勝てなかったか。」
 この艦長の声が最後の記憶である。
 
 

あとがき
みなさんお久しぶりですお元気でしたか。病みそうになって耐えられなくなってまたこんなものを生み出しちゃってあら大変。実はもう2度と書けないんじゃないかとも思ってたんですがそんなこともなかった。少しガッカリです。
今回は自分の頭の中に潜って行く夢を見る話でした。最近自分の頭の中のことがだんだんわからなくなってきて、うわぁってなることが多かったので思いついたんだと思います。紫の漂ってるやつ、黒い塊、核には一応モチーフとなる自分の頭の中にあるものがあります。恐ろしいですね。実際僕はこんな夢を見てはいませんが、主人公に怒ってる状況は今の僕に限りなく近い感じです。やめて引かないで。後半に行くにつれて訳わかんなくなっていきますが、これも僕の思考に対応してる側面があります。

前と比べて雰囲気変わったのかな、気になるのでぜひ教えてください
それでは、おやすみなさい(AM1:00)

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