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Workplace by Facebookを日本の伝統的大企業に導入する

このnoteは、モダン情シスAdvent Calendar 2018 23日目になります。

大企業に勤めていたり、大企業と仕事をしていたりすると、いろんな違和感を感じること、多いですよね。たとえば、下記のようなことがありませんか?

・隣の島でどんな仕事をしているのかわからない。
 ・どころか、隣の座席の人がどんな仕事をしているのかわからない。
・仕事のコミュニケーションはメールか電話、会って話さないと始まらない。
・会って話そうとしたら「上司を通してください」。

ほかにも「んんん?」って思うことあると思います。そうなんですよね。これで何が起きているのか、というと、簡単なことでもとっても時間がかかってしまう、ってことです。新しいことを始めようとして、情報を集めて、資料作って、プレゼンして、さあ始めるぞ、って意気込んだら、別のスタートアップがすでに似たようなもののプレスリリースを…。悲劇ですね。そこまでいかなくても、時間がかかること、よくあります。ちょっとしたことでも「上司に相談が必要、上司は忙しすぎて予定は1週間後」「上司は即OKだけど、グループ会議、部内会議で議論して承認をとろう」「グループ会は2週間後」「部内会議は、議題が多くて間に合わないから来月の議題に…」なんてことになると、2,3ヶ月経ってしまいます。

さらに問題なのは、会議に持っていったときにそこでひっくり返され、差し戻しを食らうこと。なので、ここから根回しが始まります。「○○さんのお考えを聞かないと」「△△さんは聞いてないと反対するから言っておこう」。そして、会議のための会議が始まります。こういったことを何年も続けた暁に「根回しをして議題を通すのが仕事」「さっとやりたいことを通せるひとが優秀」ってことになってしまい、仕事ってなんだっけ?ってなってしまうでしょう。

インターネットやメールが普及してきて、これ幸い、みんなも手をこまねいているわけではありません。根回しの代わりとなる「cc」が横行します。とりあえずあの人にも知らせようcc。題して「忖度cc」ですね。こうなると、キーマンや偉い人にはいろんな内容のccが飛び交います。最初はいいのですが、そこは大企業、多くの人がこれをやりだすと、ccメールが多すぎて、メールを読みきれなくなり、結果、「ccしても見てくれないので、ccしつつ根回し会議」になるのです。最悪ですね。

とある講演で聞いたのですが、1996年から2017年までの21年間での日本のGDPの成長は0.8%だそうです。同期間のアメリカの成長は138%。この時期に何があったかというと、紛れもなくインターネットの普及です。アメリカの場合は、この技術をうまく活用し、効率化できたんですね。でも、日本の場合、上に書いたように、使ってはいないけど、効率化せず、むしろ非効率になっている部分もある?という状態です。せっかく技術、とくにコミュニケーション技術が普及したのに、それを活用しきれなかったのです。

しかし、2017年、世の中では「働き方改革」「残業抑制」など言われ始め、とくに大企業では業務の効率化が求められるようになりました。その業務改革を助けるために多くのツールが出てきたのですが、その中でも大きなインパクトがあるのが、コミュニケーションツールです。なぜなら、大企業の非効率業務の多くは、組織が大きいがゆえの情報流通の悪さがあるからです。そして、組織が大きいがゆえ、よく使われているビジネスコミュニケーションツールでは、問題解決が難しいのです。たとえば、SlackやLINEは、小規模チームでのコミュニケーションを大きく改善します。数百人規模の組織でもなんとか機能させられます。しかし、数万人から数十万人の従業員がいる大企業ではどうでしょうか?しかも、GAFAのようなネットの力で大きくなった大企業ではなく、伝統的な日本の大企業では、大きな組織間の壁を壊すような動きは難しいのです。

そこで使えるのがFacebookが提供しているWorkplace by Facebook(以下、Workplace)です。Workplaceは、Facebookが提供している「企業版社内Facebook」で、企業毎に閉じた「コミュニティ」が作られ、そのコミュニティの中でFacebookのように使えるものです。他のコミュニケーションツールと違い、大企業に向いている点は下記のとおりです。

・Facebookと同じインターフェース、Facebookに慣れている人ならすぐに使える。
・モバイルアプリもFacebookとMessangerとあるように、WorkplaceとWorkchatのアプリがある。
・企業のActive Directoryと連携し、アカウントプロビジョニングやシングルサインオンができる。
・Facebookは20億人が一つの「facebook.com」でコミュニケーションをとっている、超大規模なコミュニケーションプラットフォームなので、数十万人程度でも全然問題なくコミュニケーションツールとして機能する。

とくに最後のポイントが重要です。部署や働いている拠点が違う人同士でも何らかのきっかけで簡単に繋がり、コミュニケーションをとることができます。こういった動きが、徐々に組織の壁を壊し、コラボレーションのきっかけが生まれるのです。

では、こういったツールをどのように導入していけばいいのでしょうか?「いいのはわかった、でも上を説得しないと…」「まわりは新しいものを導入するのに抵抗が…」はい、よくありすぎる話ですね。大企業で全社的にこういったツールを導入するのに必要なのは主に下記3点かなと思います。

・上(経営陣、特に社長)の理解と推進(トップダウン)。
・他社先行事例。
・現場のやる気(ボトムアップ)。

とくに最後の「現場のやる気」が重要で、そもそもこれがないのであれば、どれだけトップダウンしても難しいのです。なぜなら、コミュニケーションの中心となるのは、一人・もしくは少数のキーマンではなく、多くの従業員だからです。なので、まず最初に解決するところはここです。ここからは、私がどのようにして、Workplaceを導入していったのか、ということを書いていきます。

Workplaceは https://www.facebook.com/workplace にメールアドレスを入力してサインアップすると、そのメールアドレスのドメイン名ベースでコミュニティができます。なので、まずここでサインアップします。あなたが最初の人であれば、残念でした。ただ、Workplaceはサービス開始して3年ほど経っていますので、誰かがすでに使っているかもしれません、そしたらチャンスですね、声をかけましょう(笑)。

まず最初に、Workplaceではグループを作ります。Facebookのグループと同じです。Workplaceでは、個人のタイムラインではなく、グループでコミュニケーションをとるのが基本になります。私は最初に「Random」という名前で公開グループを作りました。これはSlackでデフォルトで作られるRandomという、なんでも話せるチャネルと同じ名前です。なぜRandomか。雑談ではないのか。「雑談」ってしちゃうと、「雑談するグループ」になっちゃうのです。もちろん、雑談が中心なのですが、ちゃんと仕事の話もできるよね、という意味で「なんでもアリのグループ」にしたかったのであえて「Random」にしました。これはいまでも残っています。そして、あえて他のグループを作りませんでした。最初の人数が少ない段階で、細分化してしまうと、盛り上がりに欠けるからです。なので、「話題が混在してきてうざいなー」とみんなが思い始めたら分けよう、と考えました。

次に、人集めです。もちろん、自然に入ってきてくれる人をRandomにどんどん招待する、というのは当然ですが、会社にいる仲良しや、こういう新しいことが好きな人たちなどを招待していきます。そして彼らにも同じように周りを招待してもらいます。そして、どんどんRandomに書いていってもらう。もちろん自分も書きます。これは、有名なTEDトーク「社会運動はどうやって起こすか(Derek Sivers)」でもおなじみの方法です。

そして、人数が100人程度になってきたら「飲み会をしましょう!」と声をかけます。拠点が近い人達だけになりますが、いままでしらなかった人たちと顔をあわせることで、新たなつながりもできます。オンラインだけではキャズムを超えることはできません。必ずオフラインの会を行いましょう。これも、最初は自分がやりますが、二回目以降は他のみなさんが企画して実施してくれました。本当にありがたいです。

ここで大事なのは、数字をちゃんと見ておくことです。どのくらいのペースで人が増えているのか?毎日どのくらいの投稿がされるのか、「いいね」されるのか、コメントが書かれるのか、100人を超えたのはいつか、200人を超えたのはいつか。このような数字を押さえてくれていたのは、実は私ではなく、別の方でした。Workplaceを導入するには、一人の・あるいは一部署の誰かががんばるのではなく、多くの「使いたい」という人たちみんなで作り上げるものなのです。

ここで盛り上がらなかったら終わり、でも盛り上がってきて、コミュニケーションが活性化しているのであれば、ここからはトップダウンです。私はたまたま、社内外のデジタル化を推進する部署で仕事をしていたので、私自身が行いましたが、ここまで来ていれば、社内コミュニケーションやデジタル化、人事などの部署の人達もコミュニケーションに参加していることでしょう。そういった人たちに協力してもらって、担当役員に上げていくべく、準備を始めましょう。まずは、Facebookに連絡するところからです。 https://www.facebook.com/workplace/contactus から直接連絡できるので、ここで連絡しましょう。日本にもWorkplaceの営業・展開部隊がいますので、日本語で書けば大丈夫です。そのときに、このノートを見ました、と一言添えると話が早いかもしれません(笑)。

そして、数字をベースにした、担当役員・社長向けの資料作りをしつつ、Facebookの担当者と話をして、Facebookの方に担当役員にプレゼンをする機会をつくりましょう。目的は、担当役員を味方にすることです。最後の役員会で導入承認をもらうためには、担当役員の応援なしでは難しいですから。Facebookは、日本企業も含め、数多くの企業へのWorkplace導入実績があり、企業のエグゼクティブを説得してきた機会も多いので、資料ベースもたくさん持っています。なので、彼らの力を借りましょう。しかし、「Facebookに説得してもらう」という気概ではいけません。「我々が説得して導入する!!」という情熱をもってあたりましょう。そして、この前後で、担当役員もWorkplaceに招待し、実際にコミュニケーションをとってもらいましょう。担当役員が慣れていなければ、横についてレクチャするのもいいですし、一緒に飲みに行くのも重要です。おそらく、多くの方にできるところはここまででしょう。

大企業の中で、コミュニケーションのサイロ化・組織内思考をなんとか壊して、コラボレーションしたい、と思っている方々は多いと思います。Workplaceはそれを手助けする絶好のツールです。ツールはあくまでツール。仕事のやり方・コミュニケーションの仕方を変えるのは、従業員のみなさんの意識が変わるしかありません。ですから、導入後の展開が一番重要であり、ここが最も大変なところです。今回のnoteではそこは全然書いていません。もし、Workplaceの展開に困っていたり、導入に関する課題などがあれば、相談にのりますので、ご連絡ください。