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ATTENTION – 「注目で人を動かす7つの新戦略」読みました。インターネットで情報発信する人にとっての必読書。

 ATTENTIONは、シリコンバレー発の2016年の最重要ワードとなろう。

 シリコンバレーでベンチャー・キャピタリストとして活躍する著者のベン・パーは、情報過多時代において「注目」が希少資源になったと言う。著者は、2012年にフォーブスの「世界を変える30歳以下の30人」に選出されるほどの俊英だ。そんな彼が、心理学や認知科学に対する並外れた知見と経験から、「情報だらけの世の中であなたのアイデアを目立たせる」ための戦略を説いた本書は、インターネットで情報発信をする人にとっての必読書だ。

 溢れかえる情報量に反比例して、現代人の注意力は到底すべての情報に行き渡らなくなってしまった。本書の問題提起は、次の一言に尽きるだろう。

― なぜ、君の偉大なアイデアは日の目を見ないのか?

 そうなのだ。デジタル・コンテンツに限らず、科学の世界においてもオープン・アクセスの雑誌が乱立し、オリジナル・コンテンツの価値はかつてないほどに低下している。優れたものを作れば、いつか誰かが見出してくれるはずといった無邪気で受身な態度では、ノイズに埋もれてしまうことが避けられない時代になってしまったのだ。

 本書では、希少資源となってしまった注目を「点火」させ、「藁火」を付け、長期に燃え続ける「焚き火」にするために、次のような7つのトリガーを紹介する。

自動トリガー ― 色やシンボルや音などの感覚的刺激を与え、無意識的な反応を引き起こして注目させる。
フレーミング・トリガー ― 相手の世界観にしたがうか、それを覆すことによって注目させる。
破壊トリガー ― 人々の期待をあえて裏切り、注目するものを変えさせる。
報酬トリガー ― 内外からの報酬で人々のモチベーションを向上させる。
評判トリガー ― 専門家、権威者、大衆の評価を用いて信頼性を高め、相手を魅了する。
ミステリー・トリガー ― 謎や不確実性やサスペンスを作り出して、最後まで関心をつなぎ止める。
承認トリガー ― 自分を承認し、理解してくれる人には注目するものだ。そうして深い結びつきを育てる。

 本書は、Popular scienceとしても読むことができるし、ビジネスで成功するための戦略書として読むこともできる。決して、中身のない風説を流布し、浅はかな承認欲求を得るために世間を騒がせるような小手先論ではないことに注意して欲しい。

 インターネットによって情報発信のコストは飛躍的に低下したが、同様に複製のコストもほとんどゼロ収束してしまった。だから、僕たちの生きる社会では、情報のシグナル/ノイズ比がかつてないほど低下している。こんな流れの淀んだ情報の海の中で、なんとかして自分の良いアイデアを世に広めることに情熱を抱き、四苦八苦している人にとって、ベン・パーは最高の道先案内人となってくれるだろう。

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