「ベルばら心理学」〜オスカルの女性性とコミットメントを検証してみた〜
こんにちは!
心理カウンセラー/ボタニカルジュエリー作家の橘奈緒美です。
今回は「ベルばら心理学」の第二弾ということで、主人公のオスカルについて書こうと思います。
前回はマリー・アントワネットについて書いたので、ご興味がある方は読んでいただけたら嬉しいです。
さて、今回はオスカルの女性性、コミットメント、ちょっとだけ依存について書いてみたいと思います。
今回登場する主な人物は、この3人です。
オスカルの抑圧された女性性は、失恋で開放される
前回の記事でも大体のストーリーを紹介しましたが、男子として育てられたオスカルは、14歳でマリー・アントワネットの護衛として使えることになります。
美しく年も近いオスカルは、マリー・アントワネットに気に入られ、20歳で近衛連隊長になり、その後軍人としての功績も認められて准将(トップから4番目くらいの地位)まで上り詰めます。
この時代に女性であることを知られながら無茶な、と突っ込みたいところですが、父親のレニエは将軍(軍隊のトップ)ですから、多少の無理は効いただろうし、納得の教育とも思えます。
さて、そんなトンデモ環境で青春を送っていたオスカルですが、いくら男装をして女性性を抑圧していても、恋に落ちてしまうこともあります。
オスカルの初恋の相手は、宮廷の女性の憧れの的、フェルゼンです。
彼は出会ったときからマリー・アントワネットと愛し合っているので、オスカルの気持ちに気づかないまま10年以上も友人として付き合っていました。
14、5歳で初めて会ったフェルゼンとは、男性性をバリバリに使い、マリー・アントワネットを守る友人同士ということでつながっていたんです。
オスカルは、フェルゼンが実らない恋をしていることも、だからこそ自分の恋が実らないこともわかっているんです。
でも気持ちを止められない。
ということで、せめて思いを断ち切るため、最後に一度だけ女性としてフェルゼンの前に立とうとするんですね。
初めてドレスを来て舞踏会へ行き、正体を隠したままフェルゼンの腕に抱かれて踊ります。
ところがフェルゼンが「自分の知っている人に似ている」なんて言うものだから、オスカルは慌ててその場を立ち去ります。
そして後日、何事もなかったかのように軍服を着た二人が歩いているとき、突然フェルゼンがオスカルの髪を掴みます!
そして踊った相手が、ドレスアップして髪を上げていたオスカルだったということにも、自分への恋心があったことにも気づいてしまうのです。
バカー!フェルゼンのバカー!そっとは忘れさせてくれない男
彼はさらに「もう永久に会うことはできないな。最初に会ったときに女性だとわかっていたら二人の関係は違っていたかもしれない」なんて言うんです。
おいおい!タラレバな話してこれ以上えぐるなよ!と思いますが、フェルゼンの追撃はまだまだ終わりません。
「私の一生はアントワネット様の上に定められてしまっている」
と告げられることで、オスカルの初恋は完全終了します。
やーめーてー!
もともと気持ちを断ち切るつもりで舞踏会に参戦したオスカルでしたが、こうもはっきり言われてしまうとキズはかなり深いですよね。
正体を隠したまま終わらせようとしたオスカルに対して、フェルゼンはちゃんと向き合ったのである意味誠実ではあるけれど。
こういう男ってつめ跡残していきますよね。。
オスカルは持ち前の自立心で、失恋のキズも癒えぬまま仕事に取り組みます。
このあたりは感情を切らないとやってられない気持ちも、よくわかる。
女性としての気持ちを誰にも相談できない。
ここにはオスカルが長年かけて培ってきた、自立の問題がでてきているな、と思います。
お母さんならきっとわかってくれたと思うけど、これまでたくさんの人達の期待や責任を背負ってきて、いまさら女としての感情に向き合うなんて無理ってなっちゃうよね。
この時点でのオスカルの自立心は強すぎるので、人に頼り、人を許し、愛し愛される相互依存の世界に行くには、時間がかかりそうです。
失恋で職場放棄!?とも取れるオスカルの異動願い
そしてこの頃、「黒い騎士事件」という貴族から宝石などを盗む義賊の事件が起きていました。
オスカルはこの「黒い騎士」で新聞記者でもあるベルナールを捕まえるのですが、彼から市民の貧しさ、苦しい実情を聞くことになります。
今まで自分がいた世界が、どれほど人々の苦しみの上に成り立っていたのか、自分はどれほど豊かな世界で甘やかされて生きてきたのか。
ベルナールとの出会いは、「貴族とは恥ずかしいものだな」と言うほどにオスカルの世界観が変わるきっかけになります。
そしてベルナールを匿い見逃すのですが、表向きでは黒い騎士を取り逃したことにしています。
そして、その責任を取るため近衛隊を辞したいとマリー・アントワネットに告げます。
これ、もちろん責任を取る気持ちもありましたが、失恋したてのオスカルが、何も知らない恋敵のマリー・アントワネットのそばに居るのはつらすぎて、仕事を放棄したとも取れます。
元々感情の起伏は激しいオスカルですが、仕事はきちんとこなすタイプです。
冷静さや判断力もあるからこそ人望もあり、准将まで上り詰めました。
でもやっぱりフェルゼンに恋したことで、それまで切ってきた感情に気づいてしまったし、抑圧してきた女性性をコントロールできなくなってきたのだと思います。
自分は女としての幸せを求めていたのかもしれない、ということに気づかされてしまったんですね。
それまでは思考で否定して、周囲への期待に応えて頑張ってきた。
でもこれ以上、マリー・アントワネットとフェルゼンのいる世界にいるのは辛すぎたのではないでしょうか。
こうしてオスカルは近衛連隊長から、フランス衛兵隊のベルサイユ常駐部隊長に降格します。
父親との癒着と遅い反抗期
オスカルの父レニエは、オスカルを跡継ぎにしたいとは思っていましたが、危険な目には合わせたくなかったはずです。
近衛隊は王室を守るためにあるので、貴族ばかりの隊員で構成された、比較的安全で優雅な世界。
対して衛兵隊は、身分が低い荒くれ者も多い部隊。
レニエは、近衛隊ならそれほど危ない目に合うこともないだろう、と思ってオスカルを入隊させたのだと思います。
(それに女性だからこそ安心してマリー・アントワネットのそばに置けるという事情もあったと思う。)
だからこそオスカルが勝手に異動を願ったことで、娘を危険な世界に呼び入れてしまったという焦りもあり、親子は対立していきます。
そして、今更ながらオスカルを結婚させようと舞踏会を主催してみたり、オスカルのかつての部下からの結婚の申込みを受けさせようとして、二人は対立していきます。
お父さん随分と勝手だなーとも思いますが、オスカルのやけっぱち具合をみていたら、心配になるのもわかる気がするし、娘としても愛しているからこそなんですよね。
ですがここでもオスカルは、結婚相手候補選びの舞踏会に軍服で現れて女子を誘惑してみたり、しっちゃかめっちゃかやらかします。
これまでぶつかることはあっても軍人としての父親を尊敬し、出世街道を走ってきたオスカルですが、遅い反抗期を迎えるんですね。
恋をして大人の女になって、父親に守られていた世界から出ていこうとする。
オスカルと父親の癒着を切る、そのきっかけになったのはやっぱり初恋のフェルゼンなんだろうな、と思います。
フェルゼンはオスカルに、オスカルはアンドレに依存していたのかもしれない
その後も、どんな状況でも貴族として王室側に立つ父レニエと、軍人は国民を守るべき、という信念で対立してしまうオスカル。
自分の娘に剣を向けるレニエとオスカルの間に入ったのは、幼馴染のアンドレでした。
アンドレはこのときオスカルへの思いも告白しますが、実はそれよりも前、フェルゼンと会ったあとにも告白(激しめの)をしていました。
でもオスカルはフェルゼンに夢中で、ずっとそばで見守り支えてくれていたアンドレのことは、幼馴染としか思っていなかったんです。
その一件からは意識していたでしょうが、フェルゼンが自分に対して(友人として甘える)依存をしていたように、自分も(幼馴染として甘える)依存をアンドレにしていたことに罪悪感もあったかもしれません。
自分が好きになる相手やパートナーは鏡。
友達だから、幼馴染だから、という表向きの理由で、相手の好意を利用したり、一方的に甘えて依存してしまう。
そんな扱いでも、アンドレはずっとオスカルのそばにいて、どんなときも支えて来ました。
身分違いのため結婚することはできないとわかっていても、自分の心をまっすぐに、オスカルにもレニエにも伝えます。
オスカルはかつての部下からプロポーズされたとき、「アンドレを愛しているかはわからない、でも悲しませたくない」と言って断っているんですね。
確かにオスカルが結婚したら、アンドレはやばい感じになりそうだな、というのはわかります。
オスカルと心中しようとして毒のワイン仕込むくらいなので(未遂で終わるけど)
でもそのくらい愛してくれるアンドレを失ったら、と考えたときのオスカルの取り乱し方から見ると、やっぱり愛なのでしょう。
革命のベルサイユ、オスカルがコミットメントするとき
フランス革命が起こると、オスカルは民衆側に立つため、マリー・アントワネットに別れを告げ、部下とともに除隊します。
軍人としての功績も貴族の身分も捨てたとき、オスカルは女性としての気持ちをアンドレに向けます。
すべて失う道を選んでも、アンドレはずっとそばにいてくれた。
オスカルの弱さも知っていて、支えていてくれた。
思いに応えていなくても守り、愛し続けてくれた。
そんなアンドレのことが大好きなんだって、やっと気づいたのだと思います。
アンドレからの愛を受け入れて結ばれて、一人だけで頑張り続ける自立を手放すことができたのは、オスカル33歳。
まさに革命前夜のことです。
「この戦闘が終わったら結婚式だ」とアンドレと約束を交わし、市民を守るため戦場に向かいます。
そこでアンドレは、最後も身を挺してオスカルをかばい、命を落とします。
そして翌日のバスティーユ牢獄襲撃の際、オスカルは隊を率いて民衆側として善戦しますが、彼女もまた後を追うように銃弾に倒れるのでした。
軍人として正しいと思うことをやり遂げるオスカルは本当に強い女性ですが、同時に女性として生きることはずっと怖かったのかな、とも思います。
自分が使えるマリー・アントワネットは政略結婚で嫁いできて、プレッシャーの中で好きでもない人の子を産み、かなわない恋でずっと苦しみ、民衆からも憎まれていく。
そんな姿をみていたことも、女性として幸せになるなんて無理だ、という気持ちを育てる一因となったのでは?という気もします。
でも最後の瞬間には、アンドレを愛し抜くため、そして自分の信念のため、すべてを捨てる覚悟を決めました。
ずっと父親の敷いたレールを走ってきたオスカルが、最後に自分の人生とアンドレを愛することにコミットメントできたということ。
このことは悲劇の中の光、本当のハッピーエンドなのもしれないと、個人的には思っています。
今回も長々と書きましたが、
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
橘奈緒美でした。
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