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目標設定③

前回は大きな目標に向かって、落とし所を作り、必ず達成可能な目標を作り、そして繰り返すことの重要性をお話ししました。

誰しも、このプロセスを重ねていくことで、結果的に必ずスキルアップという名のご褒美を貰えます。
そしてどんどんこのご褒美を貰うことで、大きな夢に近づいていくということです。

しかし、実はここに落とし穴があります。ここから道は3方向に分かれます。

どんどんステップアップし、夢を叶える人

伸び悩みする人


夢半ばで消えてしまう人


へと。

この違いは、ご褒美を貰った時、つまりスキルアップしたまさにその時の対処の仕方で変わってきます。
ここがターニングポイントとなるのです。

ご褒美を貰い続けるということは、自分のレベルは高くなったということです。
そして、レベルが上がると、今度は自分よりレベルの低い人たちが増えてきます。
しかし、忘れがちなのは、もっとレベルを上げている人もいます。

にもかかわらず、その時自分よりレベルの低い人、つまり「下」ばかりを見てしまうと「優越感」という邪魔者が現れてきます。

もちろんご褒美を貰ったのですから、ひとときその喜びに浸るということは、また頑張ろうという気持ちにもつながります。
しかし、もっと上のレベルの人はまだまだいるのに、ずっと「優越感」に浸り続ける人がいます。
要するに、このスキルを上げたポイントで、如何に「下」を見ず、「上」を見るかが、重要なのです。

実は私も、このことで大変重要な体験をしています。
まさに私の人生のターニングポイントと言える出来事です。

私は、25歳でプロ入りしますが、そこから毎年オフシーズンには、渡米し勉強をしていました。
全て自己負担となるので毎年借金をして渡米していました。

そこで学んだ最新のトレーニングやリハビリ、MLBのシステムを学んでは日本に持ち帰り、実践していました。

そして、プロ入りしてから4年目のシーズンが終盤になりました。
私は「また借金をしてアメリカに行く準備せなあかんな」と思いました。
その時の私は、本を書いたり、講演やテレビ等にも出させて頂いたりしていました。

そして、ふとこんなことが頭をよぎりました。
「俺、結構有名になってきたし、わざわざ借金してまでアメリカに勉強しに行かんでもええかな?」と。

毎年渡米し、勉強をすることで、スキルアップを果たし、それを帰国して実践して成果を出し、本を書いたりテレビに出たりと文字通りのご褒美を貰ったのです。
そしてそこで私は完全に「下」を見てしまったのです。

時を同じくして、日本で4年連続最多勝を取る、タイトルを総ナメするような投手、野茂英雄氏(私は彼を英雄くんと呼んでいたので、以後そう記します)は違いました。

今でこそMLBの情報はいくらでも入ってきますが、当時は週に一回NHKが総集編をするくらいでした。
その中で英雄くんは、自分でいろんな人にお願いして当時のMLBの大投手たちの投球を編集したビデオを作ってもらい、時間があればいつもテープが擦り切れるのではないかと思うくらい見ていました。

そんなある日のこと、いつも通り英雄くんのトレーニングをサポートして、仕上げのストレッチが終わりウエイトルームのベンチに座っていると、いつものように、彼は寝転びながら、画面の中の凄い投手たちを見始めます。
そしてちょうど彼が一番尊敬しているロジャー・クレメンスの奪三振ショーが流れている時です。
彼はおもむろにこう言ったのです。

「この人らに比べたら僕なんか屁みたいなもんですね」と。

私はそれを聞いて、率直に「何を言うてんねん!お前も何回も最多勝取る凄い投手やん!」と思ったままのことを言いました。

しかし、その後帰宅中の車の中で英雄くんが発した言葉の重さに気づき、とてつもなく恥ずかしい気持ちになりました。

私はご褒美を貰って「下」を見た。そして優越感に浸っていた。
でも英雄くんは、あくまで「上」を見ていた。

彼はスキルアップというご褒美と共に、様々なタイトルを取り、頑張った分だけ、ご褒美を貰いました。
彼の周りには「下」の人間のほうがはるかに多くなっていました。
ですが、彼は、いつも自分より「上」のMLB投手の映像を見て、自分を鼓舞していたのです。

彼はスキルアップを重ね、日本でトップの位置に君臨しても、それはあくまで日本での事であって、世界にはもっと凄い打者がいて、それを抑えるもっと凄い投手がいるという事実に注目します。
階段を常に高く登っていっても、更に、その「上」を見ていたのです。

一方で、なんとも私は情け無い事でしょう。
それから深く反省し考え直しました。

この時、私は野茂英雄という偉大な選手の側にいれたことで、大切な事を学びました。
言うまでもないですが、私はその年も更なる勉強のために渡米しました。
この出来事がなければ、渡米をしたかどうかもわからず、その先の人生は大きく変わっていたでしょう。


本当に英雄くんに感謝しています。


どうか皆さん、大きな目標を持ってください。
そして、達成可能な目標を繰り返してください。
それは必ず報われます。
そして、たくさんのご褒美を貰ってください。


そこで、一度息をついたら、こう思ってください、「まだまだ上には上がいる」と。

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