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野球人口減少歯止めのカギは、少年野球の指導者(特に低学年)!

基本的な話になりますが、スポーツには、プレーする(選手)、ウォッチする(ファン)、サポートする(コーチ、トレーナー、営業、広報など)という3つの側面があります。野球においてはプレーする人口の低下が叫ばれる中、プロ野球の観客動員数は伸びています。つまり見るスポーツとしての価値は上がっているのです。

近年、野球をする子供達の減少は全体の少子化のスピード以上に年々加速しています。このままプレーヤー人口が減っていくと、プロ野球でもレベルの高いプレーを見ることが困難になり、いずれ見るスポーツとしての価値も下がっていき、ひいては観客動員数も減っていく可能性があります。

負の連鎖は続き、観客が減ると、今度は運営側が資金難に陥り、支えるスポーツとしても価値が下がり、コーチやトレーナーなどの支える人達にとっても魅力がなくなっていくでしょう。

私は、日本全国に講演や指導者研修会で講師として訪問させてもらっています。今から6~7年前に、ある街のスポーツ少年団の主催で「少年野球のコーチング」という指導者研修会で講師を務めさせて頂きました。行く先々、私は関係者とお話をさせていただくのですが、そこで衝撃の事実を耳にします。

曰く、「私どもの地域でスポーツ少年団に所属している少年少女は約700人います。そのうちサッカーが約500人です」と。

当然、残りの200人が野球というわけではありません。今やスポーツの価値観は多様化し、バスケットボールもとても人気がありますし、今年はラグビーワールドカップの影響で今後、間違いなくラグビー少年も増えることでしょう。

この話を聞いた場所はかつて野球王国と言われた土地なのです。想像を超える野球人口の減少に愕然としました。「野球は既に切羽詰まっているやん!」と。

この現象について何か思い当たる事はないかをその関係者に聞くと、野球とそれ以外の指導者がまるで違うとの回答でした。聞くとこの土地ではお子さんが小学生に上がると、様々なスポーツの体験入部を推奨しているそうです。そんな中、野球の体験入部では、ダミ声の高齢者(もちろん高齢者でも素晴らしいコーチもいることも知っています)が高圧的な態度で、初めて野球をする子供に接するそうです。
「声出さんかー!」
「ちゃんと並ばんかー!」
「列、はみ出してる!」
「そんなことしてたら打たさないぞ!」
「返事せんかー!」
などと。


体験入部は野球というスポーツへの入り口です。野球界全体から見て、重要なシチュエーションです。そんな大切な入口でこのような態度で来られたら、それは他の種目を選ぶのも無理はありません。

子供がスポーツを選ぶということは、心身を鍛えて、素晴らしい人間になります!などと宣言して、選ぶものではありません。もっとシンプルに「楽しい」から選ぶのです。

そして野球以外のスポーツの指導者は、まずはそのスポーツの楽しさを伝えているようです。私はそれ以降、いろんな本を読んだり、実際に体験入部を見に行ったり、他競技の指導者の話を聞いたり、またいろんな少年スポーツの練習や試合を見に行きました。

結果はやはり、野球は高圧的な指導者が多く存在していました。一方、サッカーの体験入部を見ていると「アカン、完全にサッカーの勝ちや」と思うことが非常に多い。

想像してみてください。あなたは子供の時、外で遊ぶ時、いちいちアキレス腱伸ばすなどとウォームアップをしましたでしょうか?おそらくした人はいないでしょう。体験入部でも初めてサッカーをする子供達にアップはほとんどしないで、いきなりサッカーという「遊び」が始まります。そこでは耳を澄ますと、子供たちの楽しそうな声と、ひたすら褒めて、励ます大人の声が聞こえてきます。

ところが、野球の方は耳を澄まさなくてもジジイの命令、罵声、そして子供達の意味のない義務的な大声が聞こえてきます。少年サッカーのコーチは自分のことをニックネームで子供達に呼ばす人も多いと聞いています。こんなことは野球では絶対に考えられないですね。

サッカーの体験入部を見ていると、やがて初めてサッカーをする子供たちの楽しそうな声が小さくなります。すると、コーチはすかさず、「ちょっと待ってて」と、言い残して一度ピッチを去ります。しばらくすると、そのコーチはなんと動物の着ぐるみを着て再登場。再び大盛り上がりで「遊び」が再開されます。

野球は、というと、あくまでコーチは上、選手は下という明確な師弟関係が最初から築かれています。こんなことでは少年野球は完敗と言わざるを得ません。入り口の段階でこれだけの差があれば、親御さんひっくるめてサッカーにもっていかれても仕方がありません。

但し、こうした動きがサッカー界全体で広がっているとは言い切れないようです。サッカー界にも野球界ほどではないとはいえ、暴力やパワハラのニュースを目にします。最近でもある監督が選手を蹴り飛ばす映像が拡散しました。

しかし、私が本で読んだり、見聞きした少年サッカーの指導法は、非常に優れていて、子供がサッカーを選ぶ理由がようやく理解できました。

1992年にJリーグが発足された時、これで野球界もお尻に火がついて、進歩してくれるぞ!と思ったものです。ライバルができて切磋琢磨できればいいなと。しかし、実態はそれまでの、日本スポーツ界一人勝ちにあぐらをかいて、必要な改革はなされぬまま今日に至って、そのツケが今まわって来ていると言えるのではないでしょうか?

以前、キューバのお話をさせて頂きました。キューバでは各年代のライセンスを取得しなければ、教えてはならないと。日本の野球界は、そのほとんどがボランティアコーチに任されています。そんなボランティアの方々にキューバのように体育大学で5年もかけてライセンスを取りなさいなどと言うのは無理な話です。そんなことをしていたら誰もコーチにならないでしょう。

しかし、まずは子供の野球の入り口の指導者がいかに重要かということをご理解して頂けたらと思うのです。各々の各連盟少年野球の役員の方、どうか打ち方投げ方捕り方の技術の勉強以上に、「コーチング」や「発達学」、「少年心理学」などの指導者研修会をどんどん実施して、野球の入り口を受け持つ人たちの知識向上に力を入れてください。この年代の指導者が日本の野球界の未来を担っていると言っても過言ではありません。

少年時代にどれだけ野球って楽しいんだ!と思わせる指導者が増えることを心より望みます。何も難しくはありません。コーチも子供の頃に帰って一緒に遊べばいいのです。もしこれを読んでくれた少年野球の関係者の方がいらっしゃったら、どうか行動に移してください!はじめて野球をする子供を指導する人が、未来の野球を左右します。よろしくお願いします。


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