医療と弓道と、それから。

総合内科専門医、循環器専門医、緩和医療専門医、医療経営管理学修士。心不全の緩和ケアの普…

医療と弓道と、それから。

総合内科専門医、循環器専門医、緩和医療専門医、医療経営管理学修士。心不全の緩和ケアの普及啓発、日本版Medical Neighborhoodの構築、コミュニティホスピタルにおける在宅医療の実践、育児に取り組んでいます。趣味は弓道(五段)とSplatoon。

最近の記事

EvidenceAlearts 2023.2.18

総合内科、循環器、緩和ケア、感染症あたりの私の関心のある分野の最新論文を紹介します。 Single and 2-dose vaccinations with modified vaccinia Ankara-Bavarian Nordic® induce durable B cell memory responses comparable to replicating smallpox vaccines.  J Infect Dis 改良型ワクシニアAnkara-Bav

    • Palliative key aspects are of importance for symptom relief during the last week of life in patients with heart failure

      ESC Heart Failureに興味深い論文が掲載されました。心不全患者の最後の一週間の症状緩和は緩和的アプローチと有意に関連しているというものです。 いやそんなの当たり前じゃないかと思いましたね?実はこのあたりのエビデンスはまだまだ少ないのが現実なんです。緩和ケアって何か良いことをしているふうで、ほんとに意味があるかは証明されていないことも多くあります。自己満足で終わらせないために、こういう研究が必要だと思います。 PAL-HFという研究では精神症状とQOLは改善し

      • 他院への紹介の限界とMedical Neighborhoodの可能性

        日本では転院に関する情報交換はケアブックなどのサービスを用いてオンラインでのつながりは増えているものの、診療情報書や患者データのやり取りは印刷・FAXが主流となっています。 患者紹介のやり取りは個人情報保護云々の問題だけでなく、複雑な要素をはらんでいます。相手が必要とする適切な情報を選び提供できているか?長すぎず短すぎない文章か?紹介相手は適当か?紹介時期は適当か?などなど。 単純に、診療情報提供書を何らかのデータ化して通信すればよいというなんちゃってDXをすればよいだけ

        • 総合内科・循環器の最新エビデンス 2023.1.

          THANKOの15.6インチモバイルモニターを買ってみました。結構良いかんじです。それでは今日も最新論文を見ていきましょう。 有害事象のリスクが高いCOVID-19の成人患者に対する早期治療としてのMolnupiravir+通常ケア vs 通常ケア単独(PANORAMIC):オープンラベル、プラットフォーム適応の無作為化比較対照試験 Butler CC, et al. Molnupiravir plus usual care versus usual care alon

          心不全緩和ケアの最新論文 2023.1

          (palliative care[MeSH Terms]) AND (heart failure[MeSH Terms]) でHitした最新の文献を紹介します。 Challenges for Patients Dying of Heart Failure and CancerOrlovic M, Mossialos E, Orkaby AR, Joseph J, Gaziano JM, Skarf LM, Nohria A, Warraich HJ. Challenges

          心不全緩和ケアの最新論文 2023.1

          Evidence Alearts 2023.01.06

          https://www.evidencealerts.com/ から配信される新しい論文をDeepL翻訳とちょっとした解説を加えて紹介します。 認知症患者の死亡率に対するコリンエステラーゼ阻害剤の効果。無作為化および非無作為化試験の系統的レビュー Neurology 解説:コリンエステラーゼ阻害薬、例えばドネペジルのようなものは中等度の認知症の進行予防に効果があるとして使用されています。系統的レビューとは複数の臨床試験をある決まった法則で調べて効果を確認する、質の高い研

          今週の論文紹介

          PSAとMRI標的生検による前立腺がん検診 N Engl J Med. 2022 Dec 8;387(23):2126-2137. 以下のようにPSAによる前立腺がん検診は過剰診断や重要でない診断が多く費用対効果が不明だという指摘があります。 そこでPSA検査後に系統的生検ではなく、MRI撮像して疑わしい病変の生検をする群に分けてみたという研究。 IDSA COVID-19患者の治療と管理に関するガイドライン Clin Infect Dis. 2022 Sep 5:

          卒業して8ヶ月…九大MHAの思い出

          この記事は九州大学医療管理・経営学専攻22期 Advent Calendar 2022 12日目の記事です。 noteを書き始めようと思って3日坊主になり放置しておりました。今回、九州大学MHA(Master of Health Administraition;医療経営管理学修士) 22期の皆様からお声掛けいただき、久しぶりにnoteにログインをしております。お声をかけてくださった松岡さんに感謝です。 なぜ九大MHAに進学したのか 普通、医師がMHAなんて学位に関心を持

          卒業して8ヶ月…九大MHAの思い出

          COVID-19の流行に対する緩和ケアの対応はどうあるべきか?(JPSM,27 Mar)

          本文はこちら https://www.jpsmjournal.com/article/S0885-3924(20)30164-0/fulltext みなさんお久しぶりです。noteは気が向いたら更新すると今決めました。今回の文書は医療者向けです。非医療者の方が読んでいただいても構いません。 自分は9年目のまだまだ修行中の医師です。研修を積む日々の中で、救急医療の現場で、様々なプレッシャーに潰されそうになることも多々ありますが、そんな自分を救ってくれた言葉あります。 「い

          COVID-19の流行に対する緩和ケアの対応はどうあるべきか?(JPSM,27 Mar)

          心不全緩和ケアの障壁は何か

          ありがたいことに全国で開催されている心不全緩和ケアの勉強会で講演する機会を頂いている。それだけ心不全の緩和ケアに対する関心が高まっていると同時に、その不透明性・不確実さ・曖昧さを前にどう取り組んでよいものかわからないという背景がありそうだ。 最初の講演から早くも2年が経とうとしている。先日は富山での緩和ケアセミナーで講演の場を頂いた。参加された方は循環器と緩和ケアで半々、医師と看護師が半々と演者にしてみればどこをFocusしていいものか悩ましいものであった。なので大枠につい

          心不全緩和ケアの障壁は何か

          心不全緩和ケアについて感じる危機感

          心不全の緩和ケアは今はバブル的な盛り上がりを見せている。心不全関連の学会に行けば必ず緩和ケアのセッションがあるし、その会場は超満員になる。それだけ関心が高く喜ばしいことなのだが、同時に危機感も感じている。 緩和ケアには「やってあげた感」がある。その感じ方は人それぞれなので、自己満足で終わることだってある。「私は緩和ケアをやっています」とは言ったもの勝ちだ。緩和ケアの定義はもうすぐ変更されると言われているが、2002年のWHOが定めた定義によれば、QOLを改善するアプローチ、

          心不全緩和ケアについて感じる危機感