[日本サッカーの手本]ドイツ新鋭監督に見る、ドイツサッカーの一貫した戦術コンセプト

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今回は、いつもの試合レビューやチーム戦術の分析ではなく、違った視点から書きたいと思います。

テーマは「ドイツサッカー」です。2014年のブラジルワールドカップでの優勝が記憶に新しいドイツですが、2000年のユーロでの惨敗をきっかけにシステムを見直し、刷新したことは有名な話です。そこからドイツはその当時もう古典的な戦術になっていたリベロシステムから脱却を図り、ゾーン守備を導入して今では世界のサッカーをリードする国になりました。そしてブンデスリーガでは、ナーゲルスマンやコーフェルトを中心に、若手監督が良いチームを作り上げています。

僕はそのドイツのサッカーが好きでブンデスリーガやドイツ人監督の率いるチームをよく見ているのですが、ドイツサッカーの本を読んだ上でドイツの若手監督のサッカーを見ると、驚くべき共通点が見つかりました。

今回はその「ドイツサッカー」の「守備」から学んでいきたいと思います。

題材として、ナーゲルスマン監督率いる今シーズンのライプツィヒと、成績不振で解任されてしまったのものの、守備コンセプトは大きく学びを得られるものであったテデスコ監督の18-19シーズンのシャルケの「守備戦術」を用いることにしました。まずはドイツサッカー協会の掲げるサッカーの「守備」を解説します。

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第1章 ドイツサッカーの掲げる守備

ドイツが複数の本にも共通して書かれているほど強調している守備におけるコンセプトは、「数的優位」です。

リベロシステムから脱却し、マンツーマン守備ではなくゾーン守備を前提として、数的優位が常に強調されています。ではポイントを整理します。

①ゾーン守備で、常にコンパクトなブロックを保つ。
②GK,DFにプレッシャーをかけすぎてしまうとロングボールを蹴られてしまい、プレッシングをハメ込むことが出来なくなる。
③↑のようにDF,GKにプレッシャーをかけすぎるのは良くない。なので適度に寄せて中央またはサイドに相手を誘導。
④特定のエリアに誘導すると、プレスバックによって挟み込み、ダブルアタックで奪う(数的優位を作り出して奪う)。

守備の流れとしてはこのようなものになります。

①のようにゾーンで常にDFラインのプッシュアップ、左右のスライドによってコンパクトなブロックを保ち、②に書いたように、「GK,DFに強くプレッシャーをかけるべきではない」という考え方なので、ハイプレスといっても、ミドルプレスの開始位置を高めただけのようなものになっていて、GK,DFのエリアで奪おうとするのではなくて中盤に誘い込んでプレスバックにより数的優位を作り出して奪うというコンセプトなのです。

ハイプレスは基本的にゾーン3でプレッシャーをかけてDFから直接ボールを奪ったり、DFからのパスをかっさらってショートカウンターを狙うものですから、上記のポイントを読むとドイツはハイプレスを掲げているわけではないことが分かりますし、同時にDFにプレッシャーをかけつつ中盤に誘い込んで奪うコンセプトですから、ミドルプレスを掲げていることも分かります。ドン引きの人海戦術ですと、中々自チームのFWラインからコースを限定していくという守備は難しくなりますよね。

まとめると、「ゾーン守備によるミドルプレスを行い、中盤に誘い込み数的優位を作り出して奪う」という守備をドイツは掲げているということです。

では次章から若手監督の守備と照らし合わせてみましょう

第2章 ナーゲルスマン・ライプツィヒの守備戦術

ではまずは19-20シーズン、現在ブンデスリーガの首位を走るライプツィヒの守備戦術を分析していきます。開幕節のウニオン・ベルリン戦、2節のフランクフルト戦では5-3-2で守備を行いましたが、その後は4-4-1-1がベースになっているので今回は4-4-1-1時の守備戦術を題材にしました。(相手のシステムを4-3-3と仮定します)

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まず、4-4-1-1で守備的(攻撃的)プレッシングがベースとなっています。5-3-2から4-4-1-1にシステムを変更したバイエルン戦の後半は長い時間ゾーン3から攻撃的プレッシングをかけましたが、基本的にはセンターサークルよりも少し前くらいにFWラインを設置し、相手のDFに対しては牽制くらいの強度のプレッシャーに留めます。

そしてCFヴェルナーはボールを保持しているCBに対して逆側CBを消すバックマークプレスをかけて逆サイドに展開させず、ボールサイドの方向に相手を誘導。加えてトップ下のポウルセンが相手ACをマンツーマンでマークし、相手CHにはCHデンメ、ライマーが監視することで相手に中央からのビルドアップをさせない。

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CF,トップ下,CHの守備で相手を外に誘導し、SBにパスを出させたら、逆サイドの選手はセンターサークル辺りまでスライドしてボールサイドに圧縮します。そうすることによってボールサイドの人口密度を高め、コンパクトな陣形を作り出す。ここはナーゲルスマン監督がライプツィヒの監督に就任する前のライプツィヒのコンセプト(ラングニック流)と共通している部分ですね。

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 圧縮してボールサイドの人口密度を高めたら、いよいよ「数的優位創出→奪取」のフェーズです。SBのところで奪いに行くわけではなく、奪いどころはもう一つ先です。SBからのパスの受け手に対してその選手をマークしている選手と、プレスバックする選手で2対1の数的優位を作り出してダブルアタックでボールを奪いに行きます。

SB→WGのパス:SBハルステンベルクとSHフォルスベリでダブルアタック。
SB→IHのパス:CHデンメとフォルスベリでダブルアタック。
SB→CFのパス:CBオルバンとCHデンメでダブルアタック。

ダブルアタックには↑のような種類が挙げられます。

ここまでのナーゲルスマン・ライプツィヒの守備戦術をまとめると、

「ミドルプレス(守備的,攻撃的プレッシング)で外に誘導し、SBからのパスの受け手に対するダブルアタックで奪う」

というものになります。

第3章 テデスコ・シャルケの守備戦術

では次に18-19シーズンの成績不振によって途中でテデスコ監督が解任されて頓挫したものの、守備戦術のコンセプト自体は論理的なものであったシャルケの守備戦術を分析。

シャルケの試合の中から、12月のドルトムントとのレヴィア・ダービー(●1-2)でテデスコ監督の準備してきたドルトムント対策を取り上げます。

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図に記した番号に沿って分析していこうと思いますが、まず①シャルケは、4-3-1-2でミドルプレス(守備的プレッシング)。DFには牽制してコースを限定しながら、自陣にブロックを組んでドルトムントを待ち構える戦い方を選択しました。そして②。相手2CBに対して2トップ(マッケニー、ブルクシュタラー)を当てることでCBの正面を塞ぎ、持ち運ぶスペースを消します。次に③によって相手2CHに自由を与えず、パスによる中央からのビルドアップをドルトムントにさせない。最後に中央に3MFを配置しており、3人がライン間のスペースの前に立つことでライン間を封鎖(④)。

この4つによって、徹底的に中央を封鎖し、相手に中央から前進させない。そして外に誘導する。

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外に誘導できたら、ここからも手順を追って説明するのですが、やることは中央でやったことのサイドバージョンと言えます。ということは特別やることは変わっていないということです。

全体がスライドしてコンパクトネスを保ち、まず①。CBからパスを受けたSBにはIH(シェプフ)が中央からスライドして寄せます。そしてトップ下ベンタレブがボール側CHを掴み(②)CHにパスを受けさせず、SBカリジューリは相手SHをしっかりマークして縦パスを受けさせない(③)。ドルトムントの攻撃の核を担っているロイスのパスを受けに行く動きにはACルディが追跡(④)。

この4つによってサイドから前進するコースも全て封鎖するのです。中央封鎖してサイドに誘導した後はサイド封鎖。ロングボールに対しては長身CBのサネ、ナスタシッチが安定した対応を見せるので安心。サイドからビルドアップする手段も消すことでSBからCBにパスを戻させます。

「「中央封鎖&サイド誘導→サイド封鎖&中央誘導」を繰り返すことで相手の攻撃をシャルケのブロックの外で停滞させ、相手が痺れを切らして強引にブロック内に侵入してきたなら囲い込んで数的優位を作り出して奪う」

これがテデスコ・シャルケの守備戦術でした。

第4章 共通する「掲げたコンセプト」と「現場」

ここまでドイツサッカー協会の掲げている守備戦術を理解してから実際にチームを率いたドイツ人の若手監督の守備戦術を分析しました。

ここで皆様お気づきでしょうか。「国のコンセプト」と「現場のコンセプト」は驚くほど一致しているんです。ナーゲルスマンのライプツィヒにしてもテデスコの率いたシャルケにしても、

・ゾーン守備
・ベースとしてミドルプレス(守備的,攻撃的プレッシング)を採用
・相手のDFラインのビルドアップを特定のエリアに誘導。
・誘導したエリアに数的優位を作り出して奪う。

↑のドイツサッカーが掲げたプレー原則が落とし込まれています。もちろん違う人なので多少はナーゲルスマンとテデスコで違いはあるんですが、大枠のコンセプトはどちらもドイツの掲げた「ゾーン守備によるミドルプレスを行い、中盤に誘い込み数的優位を作り出して奪う」コンセプトに沿っているのです。

ドイツサッカー協会のDFBアカデミーという組織が催すフースバルレーラー(ドイツの男子サッカー監督ライセンス)で学んで監督ライセンスを取得した二人のサッカーとドイツの掲げるコンセプトを照らし合わせると、驚くほどそのドイツの掲げたコンセプト、フースバルレーラーで説いているであろうコンセプトが現場に落とし込まれていることが分かりますよね。つまりは「国のコンセプト」が「現場のコンセプト」となっており、国のモデルが浸透しているわけです。

ここが僕の考える「日本が学ぶべきポイント」です。このドイツのように明確で具体性のあるコンセプトを日本もJFAが打ち出し、指導者養成の講習会などでも全面にそのコンセプトを強調して、プログラムに組み込むべきだと思います。そしてその日本の掲げたコンセプトが実際の現場で体現されるようになり、体現する監督が評価されれば育成のカテゴリーからトップまでのコンセプトも統一されるようになってアカデミーからの選手発掘も望めますし、同じコンセプトを共有することで日本サッカー全体が同じ方向を向いて発展を目指すことが出来ると思います。

詳しい活動内容は分かりませんが、日本とドイツは実は指導者養成やグラスルーツ、ユース育成の分野でパートナーシップを締結しているらしいです。そのドイツからの学びとして今回は具体例を提示させてもらいました。


最後にもう一度書かせていただきます。もしこの記事を気に入っていただけたら、SNSなどでの拡散をぜひよろしくお願い致します。皆さんで日本サッカー界をもっと盛り上げ、レベルアップさせましょう!リクエストがあればツイッター(@soccer39tactics)のリプライ、下のコメントにでもお書きください。

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