[一部有料]川崎圧勝の裏で如実に表れた東京の「久保ロス」とその解決策~FC東京対川崎 分析~[2019J1リーグ第19節]

前回noteフォロワー100人を突破しました、と書いたのですが、なんと一週間経たずに200人を突破しました。ツイッターの方も100人以上の方にフォローしていただき、ありがとうございます。ツイッターの方でも告知なり、なんなり色々情報発信しておりますので、ぜひツイッター(@soccer39tactics)の方もどうぞ。「このチームを取り上げてほしい」というようなリクエスト企画も需要があればやろうと思っていますので、ツイッターのコメントやDM、このnoteのコメントにでもお書きください。全部やるとは限りませんのでご了承ください。

また、noteのフォロワーが100人を突破したらやろうと思っていたのですが、今回から一部を有料としております。その分、いつもよりも時間を費やして準備しましたのでぜひ有料部分も読んでください。優勝争いを引っ張るFC東京の試合を見るときにタメになる情報だと思いますし、戦術的な知識にもなると思います。

もしこの記事を気に入っていただけたら、SNSなどでの拡散をぜひよろしくお願い致します。

ということで今回は、「多摩川クラシコ」ことFC東京対川崎フロンターレの一戦を分析します。優勝争いを演じている首位東京と、この試合の前時点で4位の川崎。結果は、3-0で川崎の圧勝。小林のヘッドで先制し、川崎らしい美しい崩しで2,3点目を奪って東京の攻撃をシャットアウト。この結果により東京と川崎の勝ち点差は4となり、より優勝争いが熾烈になりました。

今回は、川崎についてももちろん触れますが、その川崎のパスワークの美しさは皆さんご存知の通りですので首位の東京がこのまま優勝するために必要な「攻撃」にスポットを当てて書いて行きます。

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スコア FC東京 0 : 3 川崎フロンターレ

川崎フロンターレ 20'小林 54'齋藤 69'阿部

序章 スターティングメンバー

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まずは両チームのスタメンから見ていきます。ホーム東京の方は、前節の3-1でガンバに勝利した試合から全くメンバーを変えず、同じ11人を起用。お馴染みの4-4-2システムです。

川崎は、前節鳥栖戦(△0-0)で負傷した大島が欠場し、その代役にはサプライズで下田が起用され、2列目の3人は全替え。家長、脇坂、長谷川に代わって阿部、中村、齋藤をチョイス。CFは変わらず小林が務めます。

第一章 風間式の名残&齋藤学はなぜ仕掛けなかった?

では試合を分析していきますが、まずは川崎の攻撃、東京の守備について。

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東京の方は、4-4-2プレッシングを行わず自陣で縦横コンパクトなブロックを組み、構えます。

川崎は、左サイドはSH齋藤が張って幅を取ることもありますし、齋藤がライン間左IRに入ってSB車屋がポジションを上げて幅を担うこともあり、明確にどちらが幅を取るかは決まっていないようでした。左サイドは、SH阿部がライン間右IRに入り、SB登里が幅を取ります。こちらは明確に定まっていました。

では東京の押し込まれたときの守備戦術を、前の磐田戦の分析で用いた図の再掲となりますがコンセプトは変わっていないのでそのまま使って紹介します。

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2トップは攻め残りし、ボールを奪えばロングカウンターの起点を担う。その2トップ以外の4+4の2ラインは割り切ってラインをエリア手前まで下げ、ライン間をとてもコンパクトにし、第三PL(DFライン)の裏のスペースを消します。

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4+4の2ラインはがっつりラインを下げていて、2トップはそこまで深い位置まで下がるわけではありませんので、ボランチ前のスペースが空いてしまいます。そのボランチ前で相手にフリーでボールを持たれるとミドルシュートを打たれてしまいます。ですが、2ボランチはボランチ前にパスが入った時に、迷いなくフリーでシュートを打たせない強度で寄せることが出来るのでボランチ前のスペースのケアが可能です。

ここまでのように2ラインを下げているため裏のスペ―スとライン間を消せていて、そのために空くボランチ前もケアできている。となると、相手からして攻撃の手段は「クロス」となります。ですが、東京の2CB(森重、渡辺)は空中戦に強いですので跳ね返すことが出来ますし、マイナスへのクロスも第二PLと第三PLの距離感を詰めているのでライン間にスペースが生まれることはなく、第二PL(特にボランチ)が対応できる。

というようなどの方向からの攻撃にでも対応できる迎撃型の守備戦術となっています。

そして奪ったら2トップにロングボールを放り込んでロングカウンターへGO。

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↑こんな感じです。(久保は移籍しましたが)

それに加えて、

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この試合ではボランチが常時ではなかったですが、自分のゾーン内での相手トップ下・中村の動きに対してマンツーマン気味でマークする、というような対策も組み込まれていました。

ではこの東京の守備戦術に対して川崎はどうだったのか。

確かに苦戦していました。東京のコンパクトなブロックは川崎に対してもとても効果的でした。

しかし、川崎も川崎ですから、完全に抑え込まれ、ノーチャンス!というわけではありませんでした。

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上図のように狭いライン間にパスを入れることが出来た時の味方のサポートがとても素早く、裏に抜ける選手もいますのでスピードを落とすことなくパスが繋がり、東京も粘りましたので決定的なシュートまで持ち込むことは出来ませんでしたがそのシュートの一歩手前ぐらいまで辿り着くことは出来ていました。

この川崎のパスワークに関しては鬼木監督が教えている部分も充分あると思いますが、それ以上に、風間監督の教えが大きく影響していると思います。現在名古屋で苦しんでいる風間監督は、守備練習ほとんどしない等でお馴染みの独特な「風間式」が有名ですが、その風間式というのは、一部の抜粋となりますがハーフスペースや5レーンどうこうという話ではなくて「相手からずれた位置でパスを受ける」という理論です。それから親指の付け根でトラップすることで完全にボールを「止める」というような。

その風間監督にガッツリ鍛え込まれた要素はもちろん健在ですから、第一PLをこうやって突破して幅を使ってからこうしてこうしてこうしますというようなペップ(M.シティ)の作るようなチームとは違っていて幅を使って攻撃する、というようなプレー原則が落とし込まれているようには見えず、「相手からずれて」パスを受けることでゴールに一番近い中央突破を図る、というような攻撃をします。

その風間式の名残によって東京が閉めているライン間からゴールを無理矢理こじ開けかけることが出来ていました。

東京の方も結局3失点したものの、この押し込まれたときの守備からは一つも失点していないので固い守備を保っていた、と評価できます。

ここまで川崎の攻撃を讃える内容を書いてきましたが疑問も浮かびました。それはこの章のタイトルにもしましたが「左サイド」であり「齋藤学」です。

この試合、鬼木監督は、再三「左の齋藤を使え」という指示を出していたようです。ということはチームとして左サイドから攻撃したい、という狙いがあったということです。ということは、齋藤を使った時にどう攻撃するか、と言ったらドリブル突破ですよね。

しかし、

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この20分のシーンに象徴されますが自陣深くの右サイドでボールを奪い、カウンター開始。阿部がドリブルで運んで行ってセンターサークルからスペースのある左サイドに張っている齋藤に展開。齋藤にとっては、スペースのある状態での1対1ですから、ドリブルを仕掛けて抜くには絶好のシチュエーションです。

ですが、齋藤は仕掛けず、可能性の低いシュートを選択しました。結果的にはそれで得たCKから先制点を取ることが出来たのですが、齋藤はこの試合通して全く仕掛けることは無く、自分の持ち味を発揮できていませでした。だけど鬼木監督は「左使え」と言っている。だけど左を使ったら齋藤が仕掛けない、という良く分からない現象が起こっていました。

齋藤は得点も取っていますが、試合を通して見ると、決して良くないパフォーマンスでした。

第二章 如実に表れた「久保ロス」。ではどのように「久保」を「ロス」したのか?

ではここからは東京の攻撃について分析していきます。タイトルにもあるように、如実に「久保ロス」が表れていました。この章では、久保がどのような役割を果たしていて、久保が移籍した後どのような形で「久保ロス」が表れていたのかを分析します。

まずは両チームの基本配置、プレッシングから。

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川崎の方は、トップ下の中村とCF小林が横並びになって4-4-2システムとなり、守備的プレッシング。2トップが単独でプレスをかけていくことはあったものの、全体が連動してプレスをハメ込んでいくことはありませんでした。

東京の方は右SH東はポジションに自由を与えられていて、中央に入っていくことがありましたが、その時も右SB室屋はポジションを上げていませんでしたし左サイドはSHナサンホとSB小川がOR(大外レーン)に縦並びになっていました。

東京の攻撃を本題として取り上げるので、まずは川崎の守備から見ていきます。

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川崎は、完全ゾーンで守備をします。しかし、押し込まれた状態でサイドでボールを持たれている時は、時々ボランチが下りてIRを埋めるシーンがあったものの、それは恐らくアドリブなのでチームとしてIRを埋めるためのプレー原則が落とし込まれているわけではありません。なので、各々が自分のマークにつき、追跡することでIRを埋める、フリーの相手にIRでパスを受けさせないという守備をしています。

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そして東京の2トップ(ディエゴ&永井)に縦パスが入った時にはまずCBが食いついて背中からプレッシャーをかけ、ボランチもプレスバックしてCB&ボランチで挟み込んでボール奪取する、というプレー原則も落とし込まれていました。川崎の試合をほとんど見てるわけではないので分かりませんが、普段からこのプレー原則が落とし込まれているわけではないのならこの試合のために用意した東京対策だと思います。

ではここからこの章の本題である、東京はどのように「久保」を「ロス」したのか、その「久保ロス」がどうチームに影響しているのかを分析します。

どのように「ロス」したのかを探るためには久保建英のプレーを知らないと話になりませんので最初に久保建英の攻撃におけるプレーから見ていきます。二つ例示しますがまず一つ目↓

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久保は、相手がスペースを消しているライン間でパスを受けた時に、独力でターンして前を向くことが出来ます(ゴールに背を向けず斜め向きでパスを受けてダイレクトに前を向くことも出来る)。そして前を向いたら2トップへのスルーパスや、逆サイドから中に入ってきた選手へのクロスなど、左足で決定機を創出します。

次に例②↓

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CFに縦パスが入った時に、右サイドから中央に入って来てCFから落としを受けてチャンス創出。この時、右サイドから入ってくるので久保はフリーになっています。なぜなら、右サイドがスタートポジションですので相手は久保を左SBがマークします。そしてフランクフルトやアタランタのようなガチガチのフルマンツーマンでなければ(そんな大胆なチームはJ1にはいません)相手の左SBはCBの近くまでついてくることはありませんので、マークが外れ、フリーになることが出来るからです。

このように、久保は相手がスペースを消しているライン間で輝きを放ち、細かいタッチのドリブルやスルーパスといった技巧で東京の攻撃の核となっていました。カウンター用のチーム作りをしている東京ですから、ポゼッションしている時間の攻撃戦術には乏しく、個人技頼りになりがちなので、よりいっそう、久保の狭いスペースでのプレーは存在感を示していました。

では久保が移籍した今、東京の攻撃はどんなことになっているのか。

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久保以外に、東にしてもナサンホにしても狭いライン間でパスを受けた時にターンしたり、半身で受けてダイレクトに前を向くことが出来る選手がいないので、ただでさせチームとして相手のブロックの中に進入するプレー原則が落とし込まれているわけではないのでライン間にパスを入れることが難しいのにパスが入っても受け手のアタッカーが前を向けないのでバックパス、という単調なプレーに終始。少ないチャンスを作り出すことが出来るシーンを生かせなかったのでポゼッションからは全くと言えるほどチャンスはありませんでした。

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また、ライン間にパスが入ってもバックパスに終始していたのでSBがオーバーラップしてクロスを上げる機会もなし。

というように、久保がいなくなったことで「ライン間で前を向き、チャンスを創出できる」選手がいなくなったので、攻撃のスイッチが入らなくなり、ポゼッション時の攻撃が停滞し、チャンスを創出することが出来なくなった。「久保ロス」は、ここに表れていたわけです。

しかし、リーグタイトルを獲得しようと思ったら、永井&ディエゴの2トップのロングカウンターだけでは難しい。ボールを相手が持たせて来る試合も当然想定されるわけですから、ポゼッションしている時の相手を崩すためのプレー原則、バリエーションを備えていなければならない。

というところで、次の今回からスタートさせた有料オプションで「久保ロス」を解消するためのソリューションを提案します。

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