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湘南対松本 レポート ~工夫した湘南、貫いた松本~ [2019J1リーグ第7節][2019年4月マンスリー分析②]

もう川崎戦ですけど!!まぁ、試合を見直す人がいたら、前節をこのレポートで振り返ってから見直すともっと良いと思いますよ。前節のものですので、気になる章だけでも読んで頂けると、今週末の試合に繋がってくる部分があると思いますし、課題が改善されている、されていない、などと振り返ることもできると思います。

それと、湘南サポーターの皆様はチームの見せた戦術的な工夫を知れると、よりこの先の試合を深く見れると思いますし、金曜に川崎戦があることは分かっていたので、その分じっくり書きましたので、楽しんでいただけると思います。はい。

4月マンスリー分析、湘南の2試合目です。前節ホームでヴィッセル神戸を破った松本山雅とのホームゲームです。似たスタイルの両チームの対戦は、終盤にL・ペレイラが物凄いシュートを叩き込んで1-1のドローで終わりました。

最後にもう一度書かせていただきます。もしこの記事を気に入っていただけたら、SNSなどでの拡散をぜひよろしくお願い致します。皆さんで日本サッカー界をもっと盛り上げ、レベルアップさせましょう!

ハイライトはこちら↓

前節の磐田戦のレポートはこちら↓

5節清水戦を収録したマガジンはこちら↓

Jリーグマガジンはこちら↓

ゴール 湘南ベルマーレ 1 : 1 松本山雅FC

湘南ベルマーレ 51’武富

松本山雅FC 83’L・ペレイラ

スターティングメンバー

まずは両チームのスタメンから。湘南は左CBに大野がスタメン復帰し、ボランチは斎藤と松田のコンビ。シャドーは武富と梅崎ではなく菊地。山崎もケガから復帰して指宿に代わりスタメンです。

松本の方は、前節神戸戦と同じ11人を反町監督がチョイスしました。

湘南・攻撃 松本・守備 ~4バック化で押し込め~

まず湘南の攻撃から見ていきましょう。

小さな章を4つ収録し、様々な側面を具体的に書いていますので、読者様の今後の観戦を深くするものになると嬉しいです。

基本、湘南3-4-2-1、松本5-4-1(攻撃時3-4-2-1)という同じシステムで戦うので、どのポジションもガッチリハマるミラーゲームとなっています。

なので、

湘南の3バックに対して、松本はCF+SHの3トッププレスでハメる事ができます(基本松本はプレッシングを行いませんが)。

湘南は、前節の試合をした磐田も5-4-1のチームで、ミラーゲームでした。ですが、その時はあまりはっきりとした磐田を攻略するためのコンセプトは見えませんでしたが、今回は違いました。

上図のように、ボランチの片方がDFラインに下りて、左右のCBがサイドに開き、4バック化することで、相手の3トッププレスに対して4対3の数的優位を獲得し、松本の第一プレッシャーラインを突破しようとしていました。

前節からの一週間の練習で、曺貴裁監督も松本が5-4-1で守備をすることは分かっていたはずなので、相手が5-4-1で守備をして、ミラーゲームになっている時の攻略策に取り組んだのかもしれません。

4バック化することで、余裕を持ってポゼッションすることができ、ボールを前進させ、押し込むことに繋がりました。

ではここから、前回も書きましたが、今回は少し違うものだったので、3CBのプレーについて書きます。

3CBのプレーの違い

まずは、前節磐田戦のレポートで書いた3CBそれぞれのプレーの特徴をおさらいしておきましょう。

左CB 小野田:攻撃参加はあまりせず、自重
中CB フレイレ:自重と積極的の中間。ロングボールの配給を試みる
右CB 山根:積極的。持ち運んでライン間への縦パスを狙う。

このような3人のプレーの特徴、タイプとなっていました。

しかし、この試合では違っていました。

まず、人が違います。左CBに小野田ではなく、大野が入っています。

この試合は、その左CBの大野が存在感を見せていました。

では今回は先ほども採用したリスト形式の方が読みやすいかな、と思いましたので、そうします。

左CB 大野:積極的に攻撃参加。持ち運んで縦パスを狙うことは少ないが、高い位置に上がるシーンが多く、エみリア内に入っていってクロスに合わせに行くシーンも。
中CB フレイレ:持ち運ぶシーンはあまりなかったが、ロングフィードでのゲームメイクを積極的に試みる。
右CB 山根:とても積極的だが、この試合ではあまり持ち運んで縦パスを狙うプレーは見られず。

このような3人のプレーでした。この試合では、ここまでの試合で何本もライン間への縦パスに入れていた山根があまり目立たず、大野がとても目立っていて、印象的なプレーを見せてました。特に、CBがポゼッション時にエリア内に入っていくなんていうのは中々見れません。

このようにこれまでは山根が、この試合では大野が積極的な攻撃参加を見せました。これが、この湘南というチームの大きな攻撃における特徴の一つで、CBを3枚置いている、ということもありますが、CBが大胆な攻撃参加で、攻撃に厚みを加えます。

また、もう一つ大きな縛りで言うと、このチームはボランチの松田、斎藤(菊地の試合も)のダイナミックな飛び出しも攻撃におけるポイントの一つなので、後方の選手が飛び出して行って厚みを生み出す、というのが湘南の攻撃の重要なプレー原則の一つです。

俺たちの山崎凌吾

では、第5節の清水戦のレポートで僕が絶賛した山崎のプレーについて今回も少し書いて行きたいと思います。

この試合も山崎の安定感は抜群でした。縦パスが入れば、確実に納めます。浮き球であっても胸トラップで納めますし、トラップも正確でした。

そして、

この図にも書いていますが、山崎が縦パスを納めた時の見方のサポートがとても早くて、ポジションも良いです。その動きは流れるようで、とてもスムーズで、特定の選手だけでなく、どの選手も同じようにスムーズにこなすことができます。

山崎との連携が確立されているので、山崎に縦パスが入れば、全てでポストプレーが成功していましたし、チャンスに繋がったシーンも多かったです。

前節山崎が負傷欠場していたので代わりに出場した指宿も悪くなかったですが、山崎はスピードもあってドリブルで運べますし、縦パスを引き出す動き出しが積極的ですし、DFから離れてフリーになる、という工夫も見られますので、山崎は別格だと思います。得点がまだないのが欠点ですが、間違いなく攻撃の核です。

飛び出す松田天馬、洗練されたコンビネーション

先ほど山崎について書きましたが、山崎と他の選手との連携はもちろん、他の選手同士のコンビネーションもとても良く、流れるようなプレーを見せます。

この2枚の図のように、山崎に縦パスが入れば、素早くスムーズに見方がサポートし、落としを受けます。そして、その次がポイントです。

CBのプレーの特徴のところでも書きましたが、湘南の攻撃において、後方の選手の飛び出しというのは、重要なプレー原則の一つです。

ボランチの松田は、昨シーズンまでシャドーとしてプレーしていた選手ということもあって、とても攻撃参加には積極的で、ゴール前に飛び出して行ってコンビネーションに絡んでいきます。第5節の清水戦では、敵陣ペナルティーエリアの近くでスローインを受け、前を向いてファーサイドへの素晴らしいシュートを決めています。

その松田が、攻撃参加して、DFラインに飛び出し、攻撃に厚みを加えていました。

松田を加えたアタッカー同士のコンビネーションがとても洗練されていて、抜群なので、松本の5+4の9人を割いた人口密度の高いブロックを相手にしてもコンビネーションでDFライン裏に進入することができていたし、インサイドレーン裏からクロスを入れることもできていました。

押し込んだ意味

では、ここまで触れていなかった松本の守備についてここで少し書いていきます。

松本は5-4-1で守備をします。プレッシングはほとんどかけず、自陣にブロックを組んで守備的プレッシングで湘南を待ち構えます。ライン間や、DFライン裏のスペースを消し、5バックなのでインサイドレーンに進入されても対応がしやすい。強固なブロックで奪ってから、L・ペレイラのポストプレーや前田のスピードを武器にカウンターアタックでゴールを狙います。

しかし、特に前半、松本はほとんどカウンターアタックを仕掛けることができていませんでした。

それはなぜか。湘南が押し込み、松本のブロックを押し下げてスペースを使ってカウンターアタックに移行できない状況にしたからです。

先ほども書いたように、松本の分厚いブロックであっても湘南が崩せるだけの優れたコンビネーションを見せたので、湘南は押し込んだ状態で長い時間プレーしました。

なので、こうなりました。

(申し訳ありません。ボールが二つありました。それとL・ペレイラのポジションは気にしないでください)

押し込まれ過ぎて、ボールを奪ったとしても、奪った位置が低く、ゾーン1(ピッチを横に三分割したうちの自陣側の三分の一)なので、スペースが無くなっていました。

ではなぜ、スペースが無くなっているのでしょうか。

奪う位置が低すぎると、その分ボールより後ろに人が多くいます(例えば相手のDFラインから奪うことができれば、相手は2,3人しかいないので、広大なスペースがある)。なので、スペースは埋められています。

しかも、スペースに飛び出す選手もスペースまで距離が遠いですし、ボール保持者もプレッシャーがかかっている中でレンジの長いキックが必要になるので、自然と制度は落ちます。

このような理由で、ボール保持者、スペースに走る選手の両方にとってカウンターを仕掛けるには困難な状況になってしまっているので、カウンターを仕掛けるのは難しくなっているわけです。

ましてや湘南はネガティブトランジション(攻→守の切り替え)でゲーゲンプレスをかけますので、すぐに低い位置でボールを奪い返され、速攻を受けることも考えられます。

湘南・守備 松本・攻撃 ~蹴りたい、蹴るしかない~

ではこの章は短くなりますが、湘南の守備を分析していきます。

まずは松本の攻撃のスタイルから。

松本は、ポゼッションして後方からショートパスで前進する、という考えは持っておらず、早いタイミングでL・ペレイラにロングボールを送り込む、もしくは幅を取っているWBに展開し、L・ペレイラのポストプレーからの速攻や、WBからのクロス攻撃でゴールを奪う、というスタイルで、ポゼッションとは正反対ですね。

なので、DF、ボランチから精度の高いロングボールを蹴りたいわけです。

ではその松本に対する湘南の守備。

このように、攻撃的プレッシングで、ハメ込みます。松本がDFラインでボールを持っていたら、まずCFの山崎からCBにプレッシャーをかけ、左右のCBにパスを誘導します。その次は、SHが出て左右のCBにプレッシャーをかけ、下りてきてサポートする相手WBにはWBがついて、相手ボランチにはボランチがついて、左右のCBからのショートパスの選択肢を消します。且つ、ボール保持者の左右のCBにプレッシャーをかけているので、ボール保持者から時間を奪い、余裕を与えないようにすることもできています。なので、松本の左右のCBは、ロングボールを蹴るしかないわけです。

この「蹴るしかなくて蹴る」と、「蹴りに行って蹴る」は全然違います。両方蹴るのですが、「蹴りに行って蹴る」ということは、どこにパスを出すのか、というのを狙って蹴っている、ということです。なので、精度の高いロングボールが期待できます。

ですが、「蹴るしかなくて蹴る」は、プレッシャーをかけられて時間を奪われ、プレーの選択肢としてロングボールしかない、という状況で蹴っていて、蹴るしかない中で蹴っているので、精度の高いキックは期待できません。時間がなく、ボールを奪われて、カウンターを受けることから逃げるためにその選択をしているので。

このように、プレッシングでハメて、松本が蹴りたいロングボールを、蹴らせたことで、回収することができ、松本の攻撃を抑える事ができていました。

しかし、これは前半と後半の途中までの話。後半の途中からは違った展開になっていました。

なぜなら、51分に湘南が先制したことで、ビハインドを負った松本が、前がかりになり、点を取るために攻撃的なプレーをし始めたからです。なので、前半は全く行わなかったプレッシングも行うようになりました。

なので、試合がオープンになり、段々中盤にスペースが生まれてきます。

湘南はそこまでM・シティのようにロジカルに相手を破壊しようとするチームではないので、松本が前から来た時に、そのプレスを交わす具体的な策はありませんでした。

なので、松本も中盤でボールを奪えるようになってきます。そして、試合がオープンになっているので、スペースがあり、カウンターを仕掛けることができるようになりました。

そして、そのカウンターを受けた流れで押し込むこともできました。

湘南も押し込まれた状態でプレッシングを行うことはできないですし、段々と運動量が落ちていたので、ロングボールを「蹴りに行って蹴る」ことができるようになりました。

なので、精度の高いロングボールが入るようになり、受け手が納めて、速攻に転じることができ、自分たちのやりたい攻撃を見せました。

そして、83分、GK守田からのリスタートでロングボールが入り、L・ペレイラが落とし、杉本が奪われそうになるもキープしてL・ペレイラに渡し、L・ペレイラがとてもシャープな振りの弾丸シュートを突き刺し、同点。勝ち点1をゲットしました。

湘南は4バック化して優位に攻撃をしようと工夫し、松本はダイレクトなロングボール戦術を貫き、最後に同点に追いつきました。3-4-2-1対3-4-2-1のミラーゲームで、両チームの勝つための方法が違う、面白い試合だったと思います。

データ分析 ~CFが起点、サイドからクロス~

では最後に、データを見ていきましょう。

(データ引用元:Football lab)

こちらが両チームのプレーエリアです。一枚目が前半のもので、二枚目が後半のものです。

両チームとも、サイドが濃くなっており、サイドを中心に攻撃をしていたことが分かります。

こちらは、両チームのゴールへの可能性を示したもので、緑色のグラフが湘南、その下が松本。同じく一枚目が前半で、二枚目が後半です。

これを見ると、前半は湘南がゴールに近づいている時間が多く、松本の方はほとんどチャンスがありません。逆に後半は、松本の方がゴールに至る可能性が高いプレーをしていたことが分かり、特に後半の中盤以降は、常にゴールの可能性が高く、前がかりになり、攻撃的なプレーをしたことが実っています。

では、今回のデータ分析では、両チームの攻撃に注目します。

これから出てくるCBPポイントというのは、「プレーのシュート到達率×難易度評価」で算出されています。

まずはCBPポイントの攻撃部門をご覧ください↑

やはり山崎は一番ポイントが高く、際立ったプレーをしていたことが分かります。そして、L・ペレイラも、決してボールを触る回数は多くなかったと思いますが、その中で質の高いプレーをしていたことが読み取れます。

また、松田もボランチながら4位という優れた数字が出ていて、積極的に攻撃参加し、前線に飛び出していた結果だと思います。

松本のWB、田中と高橋が上位にいるのも、松本のサイド攻撃の鋭さが示されています。

次にパス部門。ここでもL・ペレイラが上位にランクイン。縦パスやロングボールがこの選手に入った時に、正確に味方に落としていたことが分かります。

また、攻撃部門でもそうですが、山根がどちらも高い数字を記録していて、この試合ではそれほど持ち運んで縦パスを打ち込むプレーはあまり多くなかったと思いますが、単に縦パスを打ち込むプレーなど、効果的なプレーをしていたのです。

では次にドリブル、クロス部門。ここで両方において山崎が1位になっており、ドリブルもできる選手、というのがデータでも示されています。

そして、両チームのWBを務める4人の中の、松本の田中を除いた3人、高橋、杉岡、鈴木がドリブル部門で良い記録を出しています。

クロス部門では松本の両WB、田中、高橋、湘南の右WB鈴木が良い数字。

この画像に入っている5人しかクロス部門のランキングに入っていないとはいえ、この3人の記録はリーグの中の1試合平均ポイントでも上位に入る数字ですので、効果的なプレーをしていたということです。

ここまでの部門別のデータを見ると、ある共通点が浮かび上がります。

それは、

「ほとんどのランキングで両チームのCFと、WBが上位にランクインしている」

ということです。

つまり、CFが攻撃の核となり、起点を作り、そこからサイドに展開して、ボールを受け取ったWBが良いプレーをして、精度の高いサイドアタックを繰り出した、ということです。

プレーエリアのデータで示したように、両チームともサイドに比重を置いて攻撃していました。そして、そのサイドからの攻撃も、良い出来だった、ということです。

ですが、

(左が湘南、右が松本)

このクロスのデータが示しているように、両チームともサイドから20本という多くのクロスをエリア内を目指して送ったわけです。

ですが、成功率(左から2番目の数字)は、湘南15%、松本10%。成功したのは湘南が3本、松本は2本。これではクロスの精度が高いとは言えません。(あくまでCBPは、クロスの精度を示す数字ではありませんので。)

なので、これも両チームに共通している部分で、CFを起点にして、サイドに展開し、クロスを上げるまでは良かったが、クロスの精度があんまりだった、もしくは何度も相手DFに跳ね返された、ということです。

総括

攻撃 同じシステムを採用する松本とのミラーゲームを、ボランチの片方をDFラインに下げて4バック化し、優位に攻撃をすることで制しようとした。この試合でも山崎はとても良いパフォーマンスで、どんなボールでも納め、正確なポストプレーで攻撃のスイッチを入れ、起点となった。そして、山崎が納めた後は、松田の積極的な攻撃参加で厚みを加え、松本の人数を多く咲いたブロックをも崩す洗練されたコンビネーションを見せた。また、スタメン復帰した左CB大野も積極的に攻撃参加し、エリア内に入っていくシーンも。

守備 プレッシングでハメ込み、松本が「蹴りたい」ロングボールを「蹴るしかない状態でのロングボールにさせ、逃げるためのロングボールを蹴らせて回収する、という良い守備で、松本のロングボール戦術を抑え込み、L・ペレイラに危険なプレーをさせなかった。しかし後半は、先制した後、松本が攻撃的になったことで試合がオープンになり、徐々に運動量が落ちたことも重なって松本に「蹴りに行って蹴る」状態でロングボールを蹴らせてしまい、押し込まれる。そして83分、L・ペレイラに空中戦を制されたところから杉本からパスを受けたL・ペレイラに弾丸シュートを叩きこまれ、勝ち点は1に。

そして、両チームともCFが起点となり、サイドに展開された後はWBが効果的なプレーをして、ゴールの可能性があるサイドアタックを繰り出すが、クロスをエリア内にいる味方に届けることは中々できず。

最後にもう一度書かせていただきます。もしこの記事を気に入っていただけたら、SNSなどでの拡散をぜひよろしくお願い致します。皆さんで日本サッカー界をもっと盛り上げ、レベルアップさせましょう!

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