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空の詩 下

ガンジャ先生。 Spin Off GAN

日本に戻るとその温度差にびっくりした。
まさに楽園から現実へと引き返される。
Hans Zimmer S.T.A.Y Madis Remix

あれから。俺は仕事場が九州へと変わった。
でもやる事は同じ。
大雨での災害の被害者の捜索を続けている。

 タイは気に入った。

佐和島さんには感謝をし、話の一部始終を話しをした。
「そうか、良かったな。お前も早く家族を持て。何人でもいい。守るものがいるのはいい事だぞ?」
「まだそんな事まで考えてないです」
「機会はあるしまだ若い。まあチャンスは大事しろ」

 それから俺は。趣味も何もなかったがそれなりにタイを調べる。思った通りのとこもあり、そうでない事もある。
四季ごとではないが、年に3、4回タイに行くことを目的に働く。

パティとは連絡は取るが。
すぐには会えなかった。


というより。俺は欲情に溺れパタヤばかりいた。

パタヤはまさにカオスだった。
性に目覚めた俺は。ビールバーからゴーゴーバー。
置屋から立ちんぼまで。
経験するべき事は一通りした。
ただ、レディボーイと寝かけた時は立たなかった。
どこかで本能的に抑制されたのか。入れる寸前で萎えた。

パティはバンコクでタニヤへ移動したらしい。
詳しくは解らないが、日本語を話せるようになりたいと。
機会があれば教えるとだけfacebookで伝えて。会いに行くねと嘘をつく。

なんでだろう。

会おうと思えばいつでもいけた。

彼女は嫌いな訳ではないしどちらかといえば好きだ。

ただ、あの心の奥を見る様な視線に。

俺は怯えていたのかもしれない。


ーーー

2年の月日が流れ。再び寒い年末の前の事だ。

電話がかかる。事務からだ。

「岩屋さん。病院にいけますか?健康診断件で話しがあると」
「わかりました。昼からお伺いします」

「岩屋さん。残念な話しですが。あなたの血液検査で。AIDS(エイズ)の陽性反応がでました。間違えないか再度検査をします。心当りはありますか?。。岩屋さん?聞こえていますか」

何を言っているんだ? なんの話しだ。
あ。俺はバカな事し過ぎたのか。

その後はあまり覚えていない。

ただ1週間後。
再検査結果。陽性。俺はエイズキャリアになった。



絶望ということは。この瞬間だ。

その後薬の説明や、注意すること。聞いているが何も覚えていない。


□□□

「どうした?ガンこんな時間に」

「清水さん。俺。エイズなりました。一応清水さんも検査しておいてください」
「!まじか。すぐ行く。明日には博多に飛ぶ」
 清水さんはバンコクで知り合った。年も1周り離れた人だが、なんでも教わった。
またパタヤでよく飲んだり遊びに行った。
趣味がモデル系の人が好みなので、バッティングはないが。
心配な事はある。
ビールバーで夜通し遊んでゲーゲー吐いたのはつい先月の話だ。

「なるほど。。すまんかったな」

「いえ。清水さんは悪くないです。ゴムも使わず。またよく分からないのに手を出したり。。自分のせいです」

「いやパタヤに連れて行ったのは俺のせいでもある。ガン。できる事は何でもする。。」

「大丈夫です。でもまあ。もうパタヤで遊べることもないですね。。」

「真面目な話しをしよう。俺はこう見えていろいろな貿易を海外でしている。前に簡単に話したな?」

「はい」

「米国にも会社がある。ネバタだが。あそこはいろいろ自由だし、仕事を任せてもいい。ビザも準備するしエイズに関せば専用の機関もある」

「もちろん無理とは言わない。選択肢一つとして考えてくれ。もちろんタイでも可能だ。しかし。解ってると思うが日本には居ないほうがいいぞ?ただ死ぬのを待つだけだ」


清水さんのいうことはよく分かる。
エイズはこの国では差別の対象でしかない。
また医療機関、薬なども規制され。下手にバレると世間から追放される。それが現実の日本だ。

「ただ。よく考えろ。時間は長くとも5年。どう生きるかだ。その為に協力はする」

僕は何も答える事ができなかった。

ただ、相談できる人がいて嬉しかった。

正直に言うと。
親にも話せていない。


□□□
別に解ったからと行って。すぐ寝込む事はない。
会社を辞めて。佐和島さんにお礼をいい出ていく。

佐和島さんは顔をしかめ。なにか言おうとしたが声に出ない。理由ついて聞く事はなかった。それが普通の人の反応だ。
最後「何かあったら。何でもいい連絡しろ」
少し嬉しかった。そして感謝をする。


俺は再びバンコクに向かう。

エイズを移した仕返しとか。そんな事ではない。
ただ。考える為にも知っておこうと思った。
タニヤの店でパティを見つけ。久しぶりの再開をした。

「よう。パティ久しぶり」
「!!」
「驚かせてごめん。」
「ガン。。。すぐ来るって。。来るの遅い!」
「ごめん。。」
「ガン。バカ。オソイ。。何ですぐ来ないノ!うぁぁあああん!」

え。いきなり泣かれるとは思わなかったが。。
ママさんがうるさいから連れていけと。うぅ。気まずい。

その後着替えたパティと店を出た。
あ、宿も何もとっていない事に気づく。
パティに言うと。サービスアパートメントを教えて貰いそこについた。
タクシーで気がついたのだけど、彼女は2年の間でこんなに日本語が話せる様になったのか。


俺の2年間は。。。なんて情けない。そこらで買いまくっただけだ。。。

優しいおじさんに案内され部屋に入る。
うん。綺麗だしいいアパートだ。何より明るい。
パティは落ち着いたかな。
少し疲れてみえる。大泣きだったし。
「パティ。遅くなってごめん」
「ガン。。前より酷くなってるよ?悲しい事あった?」

なんで。。分かるんだ。
俺は嘘つくのも誤魔化すのも止めた。

「俺はAIDS(エイズ)になった」

それからは。その理由と経緯。バカな事をしたと思う。いいながら涙が出てきた。止まらない。

俺は誰にも話せないでいたんだ。

パティは優しく頭を胸で抱き込み。

一緒に泣いてくれた。
ああ。誰かに話したかったんだ。ずっと。。

パティは黙って居てくれた。
ダメだと言うけどキスをしてきた。
パティは苦労話のようにあれからバンコクの生活や、、苦労したことを子供のように教えてくれた。

あの時と同じ感触が悲しい。

「ガン。。あのときと同じ味。。私。待ってたんだよ?オソイ。。」

心の中で謝ることしかできない。ごめん‥

△△△
翌朝。落ち着いて行動をする。
とは言っても病院探しと住居だ。
ここはすごく静かでいて。そして市場や何処に行くにも近い。

アパートメントのオーナーと話をし。
そして月額契約でいいとありがたい話を。
もちろんパティがフォローしてくれて僕の状況を話してくれた。

「大変だね。繁盛期は騒がしいかもしれないが、いい所だ。病院紹介しよう。スタッフにも注意しておく」

初めて合うのにすごくよくしてくれる。
パティが嬉しそうに微笑む。少し年をとったけど。変わらずの笑顔で。
「ああ。時間があればプラバートナンプ寺へいくといい」
そう言って僕ら病院に向かう。


「仕事いいの?パティ」
「うん。こっちいる間はいっしょいる。ママに電話した」
「そこまでしなくていいのに。。」
「そこまでってどこまで?」
「いや、ありがとうという意味」
「それ違う。もーガン!」

何だろう。久しぶりなんだけど相変わらずというか。昨日みたいな化粧ではない。自然体の彼女がそこにいた。


大きな病院に行き、事情話す。
日本語が通じるのも凄いが、辺り前に薬の準備、保険の確認などしてくれる。
またひどい時は透析も可能な様だ。
エイズとは体の免疫が弱まる病気であるが血もまた綺麗にすることで伸びるらしい。
検査は定期的に希望の際受けれる。が費用も高い。仕方ない部分といい部分を見てもこちらのほうがいい。

数日何件か病院を回った時にいろいろ貰った。
懺悔会ようなものから、キャリア対象とした出合いまで。。
驚くことがあるが。いい国だな。

落ち着いた日にパティとプラバートナンプ寺へ。


エイズという病気が如何に悲惨か理解った。


ああ。ここには二度と来たくない。
絶対くるものか!

そこには。エイズ患者の末期が死を待っていた。


□□□
それから日本とタイを行き来しながら。

季節は春を迎える。

俺は清水さんの計らいでバンコク会社を引き継ぎ立ち上げ。
休む間もなく3ヶ月で教わることを学んだ。
日本人に対する対応。ヨガの会社の管理。保険。営業。物件から貿易。WPからスタッフ管理。代行。多岐に渡る。
場所は日本、バンコクと国を関係なしに話し合う。

「タイは好きだからよく来るが。仕事は別だ」

「こんな形でだが。会えて良かった。もちろん事業は増やして行くように」

「はい。ありがとうございます」

「それで。。ビザは次に申請できるとして。住むところや体調は大丈夫か?しばらく戻れないぞ?」

「問題ありません。あと結婚します。タイで骨をうずめ暮らします」

「!?大丈夫なのか」

「大丈夫です。パティおいで。紹介する」

そこにはタイの女性がいて。少しお腹が出ていた。

「何も言わんが。それも人生か。。」


 苦渋を嘗めるような。そして悔しいような顔した清水さん表情を初めてみた。それは祝福できないという意味だ。


季節はGWが終わった後。

パティと簡易的な結婚式を行い。
サムイで愛を誓った。


残酷な事に。

パティも陽性反応がでていた。



経験はチカラです。 若い頃行っとけば良かったな〜と思う事も多かった。 世界は広いです♪ ٩(ˊᗜˋ*)و