見出し画像

『医学研究のための因果推論レクチャー』を読んで(献本)

献本いただきました。臨床疫学の専門家の先生方が書かれている因果推論の入門書です。著者を見ただけで、「あ、これは買おう」と思う人もそれなりにいると思います。

因果推論は流派や考え方などもあってディープな分野なので、僕の本ではさらっと流すにとどめていましたが(因果警察怖いし)、最近はEpiTapなどの因果推論セミナーがあり、医療者にも浸透してきたと思います。その部分に正面から切り込んでいった本です。

因果推論の本自体はたくさんあるのですが、臨床研究者向けの総説に近い本です。ただ、全くの研究初心者や初期研修医が買って分かるかというと、そこはやや難しいと思うので大学院に進学する人、因果推論に興味のある人、それなりに研究経験がある人にfitしている内容かと思います。

他には最近出た林岳彦先生の因果推論本や、より一般的な読み物として中室先生・津川先生の本があります。

手に持った感じだと、170ページ、A5版と非常に読みやすいサイズ。数式は少なく、図表が多め、そして余計な装飾がないので読みやすそうという印象である一方、文章自体は硬派です。

元々は医学界新聞の連載で、その加筆・追加版です。僕はこの連載も楽しく見ていたので、どの辺が違うのか等も気にしながら読みましたが、文章含めて大幅に追加・変更されていますので、連載が良かった人は本を買う価値があると思います。

いつも通り、前書き・後書き(本書はまとめ)・第一章という一番力の入っているであろうところを先に読むのですが、第一章にある「ふむふむの境地」はいい考え方ですね。僕もこの表現を取り入れていこうと思います。何がふむふむなのか気になる人はご購入ください笑

研究初学者の方には第二章の因果推論を行うためのステップ(とそのコラム)がお勧めです。理想の研究から逆算し、一つ一つを定めていくという非常に基本的な部分なのですが、基本がどれだけ大事かというところ。研究すればするほど実感します。基本の大事さをわかるのに意外と時間がかかるのですが、ここをちゃんと時間かけて指導してくれる人がどれだけいるか(そしてメンティーがどれだけ持ち堪えられるか)。

そして因果推論の基本的な考え方、DAGときて総論部分から各論部分に移ります。各論は手を動かさないと頭に入らないので、付属しているR codeを写経しながら読むことをお勧めします。純粋な読み物として読もうとすると、事前知識がない限り厳しい人が出てくるかなと。

個人的には「多変量回帰モデルをなんとなく使う」から「因果推論の文脈で正しく使う」ための資料として、修正ポアソン回帰の説明や、モデルに課されている仮定の部分がしっかりと日本語で明確に書かれているところはとても分かりやすいと思いました(conditional exchangeability, positivity, consistency, no interference, no model misspecification, no measurement error, no selection bias)。

そして各論2からは結構難易度が上がります。時間依存性の曝露に対してIPTWとG-computationが出てきますが、これらをかなり分かりやすく説明している(イメージとして理解しやすい)点は勉強になりました。

そしてgeneralizabilityとtransportabilityの話で、ここはやや抽象的なのでそれなりに経験がないと難しいのですが、この部分をどう評価するか?とその章のコラムである「操作できない曝露(性別、年齢)の因果効果は求められるのか?」という常に疑問になる問いにも触れています。

個人的には驚いたのは因果推論の導入書かと思いきゃ各論の最後でかなり発展的な内容の手法に触れていたことです。Frontdoor criterion(UCLA系の人が強いイメージ)、targeted maximum likelihood estimation(TMLE)、heterogeneous treatment effect(HTE、井上先生の強い分野ですね)、target trial emulationまで含んでいます。

このセクションの内容は手法論のレベルが高く、EconMLとかで「とりあえず回した」では何も解釈できないので専門家と行うべき内容とは思いますが、計量経済学や生物統計学、機械学習系『以外』の医師研究者向け資料で出てきたのは凄いなと思って見ていました。

先にも述べましたが、全体としてMPHを出てPhDに進んだあたりの人が一番面白く感じれるレベル感ににあるかな?という感じです。さらっと読めそうですが、そんなにはさらっとしていません笑。あと、4400円という値段設定のハードルは少し高いかもしれない。おそらくターゲットが絞られることからこの値段だと思いますが、臨床研究、特に疫学・因果推論を行う人にとっては今の臨床研究の最新の知見も含めて総説的に使える書籍として最適な一冊ではないかなと思います。日本語でこの辺が記されている本はほぼありませんので。

(余談)僕は3年ほど前に、TXPの原先生と今は UCバークレーのMark van der laanのところで勉強している白川先生にdouble/devised machine learningとTMLEの違いを教えてもらったのですが、また分からなくなってしまいました。meta-learnerも含めてこの領域はちょっと理解するのが厳しい…

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?