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医学生から研修医になって思うこと

昨日のTXP勉強会では今年初期研修医になった先生から「実際に研修医になって感じたこと」に関してプレゼンしてもらいました。医学生インターンも多いので、先輩の実体験を聞けるのは良い機会だったと思います。


1. 医者の『大丈夫です』

発表した先生としては「初期研修は想像以上に辛い」というところでしょうか。昔を思い出していましたが、あるあるだなと思って聞いていたのが夜間の救急。良い意味で忙しいのは良くても、医療現場はそうじゃないことも多々ありますよね。

  • 夜中何時だろうが些細なことでも呼び出される

  • 「それなんで今なの?」みたいなことで寝ている時に起こされる

  • 5日前からの症状で深夜4時とかに電話で聞いてくる

20歳そこそこで健康に生きてきたら患者さん側の気持ちに立つのは中々難しいでしょう。僕は医学生時代に心疾患を指摘されて一時期ドクターショッピングをしたことがあるのですが、夜は不安になるんです。大丈夫だと思っていても、一人で気になりだすと止まらない。朝まで待てばいいのに待てないんです。医者に大丈夫って言って欲しいけど中々言ってくれません(当時の彼女に「気にしすぎ」と怒られた記憶は残ってます笑)。

最終的にはとある循環器の先生に診てもらい、『医学生だからと言うのもあって知識もあるだろうから色々考えるだろうけど、大丈夫だよ。健康そのもの』と言われてようやく落ち着いた記憶があります。もちろん今も問題ありません。

医者側として『大丈夫です』と言うのは正直難しいと思う面もありつつ、その一言で救われる人が多いというのは実感します。中山祐次郎先生が同様のことを書いていましたが、この通りだと思います。患者の心情を少し汲み取れると優しくなれるのかもしれません。知人の開業医の先生は大丈夫の一言を大事にすると言っていました。多くの患者さんはその一言が欲しいし、開業医でずっと見て責任を持っているからこそ言えることもあると。

一方で東京医療センターの講演時にお会いした尾藤誠司先生の記事も併せて紹介します。患者の心配事に対して、大丈夫の真意が正しく伝わってるかどうか。難しいです。

こんな偉そうなことを言っておきながら白状すると、僕も当時は「なんでこれで電話してくるんだ…」とか「自分じゃ判断つかないのに…」と思っていました(苦笑)。


2. ハイパー病院での研修

この言葉はあまり好きじゃないですが、概念的に伝わりやすいので。

僕は真面目じゃなかったですし(マッチング見学には行かず出身大学一本)、地方の大学病院でゆるゆるやれたのが良かったと思ってます。そのまま地元でのんびり臨床して夏は素潜り・秋は釣り・冬はスキーとエンジョイするつもりだったのに、いつの間にか大分道を違えました。

隙自語終了、研修期間で一番大事なのは自分の健康と仲間だと思っています。臨床は後期以降でいくらでも取り返しつきます。大学の同期で最も優秀だった一人はハイパー病院でバーンアウトしたと公表していました(僕もいわゆるハイパー系病院に行っていたら病んでた)。

ハイパー系病院に行った先生で活躍されている先生は多いですが、それは仲間との出会いに加えて、元々の素質の部分が大きいと思っています。特に体育会系の部活で成績残してる人はめちゃくちゃ強い。

やはり筋肉…!筋肉は全てを解決する…!

僕は自分のペースで研修できた事が良かったと思っているのですが、折角なのでO縄K中やS南K倉、A中央など忙しい病院で研修して(今も無事に活躍している)先生方の意見も聞いてみたところ、

  • 「僕は忙しかったですけど、全然辛くなかったですね」

  • 「救急外来って問題を抱えている患者さんが多く来院されるところだと思っていたので、色々あってもあまり気になりませんでした」

  • 「ブラックもいいですよ。山登りやマラソンみたいなもんです

といった(謎)コメントが返ってきたので既に人間としての存在が違うという事がわかりました。

ちなみに『有名研修病院にいた人が戻ってくると、出来ない同期を見下しがちになって人間関係悪くなるし、変に成長が止まって良くないケースはままある』と福井大学救急部教授の寺沢先生がよく言ってましたので、心当たりのある方は気をつけてください。


3. 初期研修医の悩み?

初期研修医の悩みといえば、3年目の進路と病院、恋愛関係が9割です(独自調査)。前者は好きにすればいいので、本当は後者について語りたいのですが、炎上したくないのでまたいつか。

真面目な話をすると、地方の基幹病院に行った先生のコメントにあった考察が興味深かったです(意図的に少し改変しています)。

  • 基幹病院のメジャー領域は土日もないし、忙しすぎて思考が止まり新しい変化を受け入れにくくなるのではないか

  • 地方の基幹病院に研究の時間はまずない

  • 高齢化による需要の増大と医者の減少のスパイラル

  • その地域への愛情が必要

人的資源を含めた医療資源配分の最適化は多くの人が課題に挙げるところであり、アリゾナ大学経済学部博士課程にいる原先生が『医療資源の効率的な配分について思うところがあるのはあるあるですね。経済学にようこそ笑』と言っていたのにはちょっと笑いました。医療経済学、面白いですよ。医療経済を学ぶ機会は中々ないんですが、自分たちのシステムがどうなっているか知らないままというのはもったいないのでぜひ一度調べてみてください。学生時代に学ぶのと、医者になってから学ぶのではまた違います。

もうひとつ思ったのが、初期研修医時代にここまで考えられるってすごいですよね。僕はそんな事を考えもしませんでした。

最近は医者以外の選択肢も増えて、余計に悩むことも増えたのではないでしょうか。スタートアップやコンサルなどの選択肢は若い人にとって魅力的でしょう。ただ、個人的には専門医を取得してからでも遅くないですし、そっちの方が医者という武器を最大限に活かせるのではないかと思います。

最後に、研修医が自分の進路で悩んだ時に言えることとして、健康と仲間が大事というのと、(辛くない範囲で)自己肯定感を下げる選択肢は避けた方が良いとは思います。後はどれ選んでも運次第。これ以上はまたおじさん記事になるのでこの辺で。

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