張込21加藤との死闘④

 江藤は加藤と対峙している。
「加藤、法の裁きを受けろ」
「うるさい、権力の犬」
 2人は間合いをジリジリ詰める。ビューと加藤は下段蹴りを放った。江藤は十字受けでサバくと、ウリャーと右正拳突きと右回し蹴りの連続攻撃。加藤は倒巻肱(太極拳で猿が後ろに下がりながらも攻撃する技)で応戦。実力伯仲。
 小雨が降り、浜風が吹いている。夜空に流れ星。遠くでパトカーのサイレンが鳴る。
 江藤の後頭部は妙に冷めている。もはや生も死もない。生死一如。目の前の加藤の動きに集中している。

「翔子、今どうなっている、目が見えない、江藤警部は勝ったのか?」
「大丈夫です、正義は必ず勝ちます」
「そうだな」
「しっかりしてください、まもなく応援が来ます」
「翔子、今までありがとうな」
「佐川巡査部長、諦めたらダメです」
「もういい、楽になりたい、翔子」
「佐川巡査部長、まだ使命を果たしていません、生きて生きて生き抜くのです」
「ああ、そうだったな」
 佐川の意識が薄らぐ。

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