【クソ小説を書こう : 友人Yからのお題】 問1 以下の3つのワードを使って、オシャレなだけでてんで中身の無い短い小説を書いてください 「ゾンビ」「ほらね。」「東京は夜の7時」

【我が目を疑う。】

これは、デカルト以来の近代文明において、「世界を疑う」ということ"ではない"。「我が目を疑う」とは、「自らの存在を疑う」ということに他ならない。

僕は、いつから自分の存在を疑ってきたのだろう。

いつからお洒落をやめただろう。
いつからヘアセットをやめただろう。
いつから鏡を見ることをやめたのだろう。

いつから自分と距離をおいているのだろう。

そういった行為はすべて、本当は自分という存在を明確に意識している結果だと、実は分かっているのに。それでも、なお、世界の拡がりに対して、僕は自分を拡げることができないでいる。

ゆっくりとゆっくりと、血を滴らせて歩きながら、そんなことを考えている。

たぶん、僕はゾンビになっているのだろう。
そして、みんなもゾンビになっているのだろう。

同じように血を滴らせ、作り物のような街の中を、ぶつかり合いながら、ゆっくりと歩いている。

互いに話すことはあまり無い。だけど、時には、ジャームッシュとか黒澤明とかについて、ちょっとだけ話すこともある。

ヒトだろうが、オオカミだろうが、二十日鼠だろうが、ゾンビだろうが、コミュニケーションは常に開かれている。

「われわれは、"コミュニケーションしない"ということを出来ない」と言ったのは、この国のコミュニケーション学者だったはずだ。

自分を拡げることが出来ない僕に、この言葉は、時にやさしく、時に厳しい。

この街のやつらは、どいつも知り合いだけど、時々、新しい顔が、いわゆる重いゲートを開けて、この街にやってくることもある。

そんなとき、僕は誰よりも早くそいつに話しかける。そして一番大切なことを教えてあげる。

自分を拡げるための何かになると思って。

「ほらね。ここハリウッドは、午前3時になると、やっと街が眠るんだ。その時、東京は、夜の7時。」

(終わり)

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