刑事さん、そんなに怖い顔しなくたってちゃんと話しますよ。全て話します。
　世間じゃ僕は猫を虐め殺すタイプの猟奇殺人鬼みたいに言われてるようですけど、ごく普通の中学生ですから。取り調べには協力します。
　ただ、ひとつだけ、お願いがあるんです。
　僕の話を急かしたり、端折らせたり、しないでください。
　時系列順でないとうまく話せないんです。
　途中で『どうして殺したんだ』とか、『なぜ顔を焼いたんだ』とか、そういうことを早く話すよう急かさないでほしいんです。
　全部、関係があることですから。
　全部繋がってるんです。一見関係無いことに思えるかもしれませんが、今思い返すと円と楕円の話もスーパーカミオカンデの話も台風の日に傘が壊れた話も、全部、繋がってるんです。
　そりゃ、話は多少長くなりますけど、何日もかかるほどにはなりませんよ。
　何も宇宙の始まりから話そうって訳じゃないんですからね、ははは……いえすいません。
　ここはちょっとしたジョークを挟む場面じゃないですよね。人が死んでるわけですし。
　それともう一つ謝るんですけど、やっぱり宇宙の始まりから話そうと思います。

　　
　　●　○　●

　彼女と最初に会ったのはプラネタリウム劇場で、宇宙の始まりについての作品でした。
　劇場は不人気でしてね、観客が僕と彼女の二人しかいなくて。見た感じ同い年くらいだけど、火曜の午前中からプラネタリウムを見に行くなんて、どういう変人だと思っていたんです。僕ですか？　僕は普通です。
　プログラムが終わった途端、彼女はこっちにつかつかと寄ってきて、どうだったと感想を求めたんです。
　僕は強い力とか弱い力とかいう場面で眠くなってきて、ほとんど覚えていない、退屈な内容だったと答えました。
　そうしたら「退屈なのはお前の脳の方だ」と彼女は言いました。
　んー……おかしいですね。
　思い返すと、結構ひどいこと言われてますね。
　変だな、最初から好きだと思ってたけど、どこから好きになったんだっけ？

　【続く】