爆弾魔女の取扱方(失敗例)

 酒場に入った。 
 客の一人が、俺を見て派手にビールを吹き出した。
 その音をきっかけに、何人もの客がこちらを見る。
 目を丸くする者、苦笑する者、顔を顰める者、口笛を吹く者。
 反応は様々だが、どいつもこいつも俺の下腹部を見つめている。
 こんなものは地球上に35億本はあるのに何を珍しそうにしているやら。
 カウンターの前に立つと、バーテンダーは何度か口をパクパクさせた後、言った。
「アンタ、どうして全裸なんだ」
 そこは『いらっしゃいませ』だろうに。
「どうしてって、じゃんけんで負けたからだ。俺が好き好んで裸になる変態に見えるか?」
「見える」と、バーテンダーは言った。
「見える」と、カウンターの客の一人が言った。
「見える」と、誰も座っていない席から声がした。
 次の瞬間、俺以外の全員の頭部が炸裂した。
 血と脳漿塗れになった俺の前に、女が現れる。透明化を解除したのだ。
 女は言った。
「注意を引けとは言ったけど、裸はなくない?」

【続く】

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