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素敵な店仕舞い

昨年末から通い始めた編み物教室が終了になった。
今日は最後の教室だった。

先生はこちらのご出身だが、高校を卒業されてからはずっと東京で暮らした。
10年前に単身郷里に戻り一軒家を借り教室を開いた。

東京ではフルタイムで働き趣味で編み物をしていたが、郷里に戻ったら教室を開くつもりでヴォーグで師範の資格を取られたそう。

10年間で60人もの生徒さんを率いていらしたとのことで驚くばかりだ。
センスや技術や指導が優れているのはもちろんだが、ひとえにそのお人柄によるものだろう。

何人もの生徒さんを率いているというと、ギラギラとしたやり手の強面そうな人を思い浮べるが、どちらかと言うと静かなあっさりとした欲のない感じの人だ。
たびたび海外に出かけレンタカーで旅する行動派かと思えば、どこか放って置けないあどけなさが魅力的だ。

しかしこのたび病気療養のため、息子さんのお住まいの関東に移ることになった。
あまり芳しくない容体で、おそらくこちらに戻ることはないだろうということで、借家も引き払うそう。

お引越しでさぞかし大変だろうと思いきや飄々たるもの。
ソファなどの大物家具は、生徒さんの中にそう言うことの得意な人がいて、ささっと解体して不燃ゴミ処理場に持って行ってくださったとおっしゃる。

編み物の本が並んだいくつかのブックシェルフは、本ごと何人かの生徒さんに譲られたそう。

自宅古民家の離れを、これまで先生のところに通ってきていた生徒さんたちが集えるオープンスペースにされる生徒さんがいるそうで、教室の大テーブルはそこにお嫁に行く。

ストックの毛糸は気前よく生徒さんに配られた。

先生は、身の回りのものだけ持って息子さんの家へ。

なんて素敵な店仕舞い!


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