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犬を買うこと

郊外に中古の家を買った三男夫婦が犬を飼うと画像付きLINEを送ってきた。
ふたりとも動物好き、というか、どちらも犬や猫と一緒に育った同士だから、一軒家に住めば動物を飼うのは必然なのだ。

ローンもあるし子どもも生まれるだろうし、これからお金がかかるのに…と夫は渋い顔をする。
これこそ老害!
私たち夫婦も結婚間も無く猫を拾って飼った。
自分で見つけて連れて戻ったのを忘れちゃったの?

聞くと、ペットショップで半額で売られているという。
何故半額?
生まれて三ヶ月を過ぎて買い手がつかない仔は、処分価格になるのだそう。
処分価格でも売れなかったら…?
あまりゾッとする話ではない。

私たちは犬や猫を飼っていたが、買ったことがない。
初代の犬は餌もやってないのに、私たちの旅行中に庭先で番犬をしていた野良犬だ。
二代目は、会社の敷地内に捨てられた犬に同情した義父が社屋で飼っていたところ、夜中に忍び込んだ雄犬に孕まされて(下品な言い方だけれどあまりにピッタリする)生まれた四匹の中の一匹をもらってきた、生粋の雑種だった。
忍び込んだ雄犬の身元は定かではないが、産まれた仔たちがなんちゃってシベリアンハスキーの風貌をしているので、ははあ、あそこの犬だな、とあたりをつけてはいたらしい。

猫に至っては揃いも揃って捨て猫、あるいは捨て猫を譲り受けたもので、やれこんな毛並みがいいとか、こんな顔が可愛いなどと選り好みをしたためしがない。

それでも飼っているうちに、情けないほどのブサイクな猫が可愛くなり、うちの犬はミックスだけどシベリアンハスキー?なんてよく言われる、頭がいいのは父親の筋かしらねえ、なんて飼い主バカ全開なのだった。

在りし日のココ

世の中が様変わりして、猫を外に出すのは御法度になった。
犬も近頃の酷暑で外飼いは無理らしい。
野良犬、というのを、今の小学生は知らないという。
野生の犬?と問われたので、まあそんなものか…と返答に窮した。
野良を見かけてどんなに可哀想でも、保護しないなら餌をやってはいけない。
かえって可哀想なことになるからだ。

思うに、ペットショップの売れ残りを買う心理には、低予算で手に入る気やすさ以外に、捨て犬捨て猫を憐れむに相通じるものがあるのではないかしら…
犬猫なんて買ってまでこなくたって拾ってくればいくらでもいる、という時代ではなくなった。
飼う人はたいてい去勢避妊手術を済ませるから、貰い犬、貰い猫の機会が少ない。
それに、人から譲り受けるのはよほど親しい間柄でないと何かと気を使う。
保護猫、保護犬を引き取るのは単に犬猫が飼いたいとはまた別の事情がありそう…

生まれたてじゃなくても、他の飼い主のクセがついたよりは初めてうちに来る子がいいのは人情である。
とは言え、ペットショップにいる血統書付きのお猫様お犬様は高額で手が出ない。
眺めるだけで我慢していたのが、半額で、しかも明日は命がないかも知れぬ身の上とあれば、連れて帰りたくなる気持ちは分かりすぎるくらいよく分かる。

いいね❤️
旅行の時はウチに預けなさい!

私は一も二もなくLINEを返した。





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