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いつかわかること。1

拝啓 オータム航空 御中

先日、あなたの会社の飛行機に乗っていたら気流の影響でかなり揺れて、気分が悪くなったんだ。
前面のポッケには大抵そういう時の対処になる袋が入ってると思うんだけど見当たらなくて。結構困った。
仕方がないから隣の人を起こして拝借したよ。
なんていうか、そういうことをしている何十秒かで中学時代を思い出したんだ。

別にことを荒だてたいわけじゃない、
きちんと話を整理したくて。
申し訳ないけど聞いて欲しい。

中学で初めて付き合った人を失った。
付き合っている最中に。
自殺で。
今になると理由はなんとなくわかっている。
自分の責任じゃないってことも。
でもやっぱり多感だったし、ひどく傷ついた。
今も傷ついてないって言えば嘘になる。

少し話がそれた。
彼女は同級生だったから、通夜には同じクラスの仲間とかも結構参列した。
遺影を目の前にして目を潤ませたり、友達の方に寄り添う女の子なんかもいた。
でも学生なんて単純で、嘘つきなんだ。
帰り道にみんなで歩いているとゲームの話や今時の歌の話、挙句は帰りにみんなでお好み焼きを食べる話なんかし出してた。
僕は無性に腹が立ってた。
なんて奴らだって。
奴らの一人が僕に「お前も飯行くか?」みたいに聞いてきた。
僕は。
なんでだろう、悔しさとか怒りとか全部しまって
「行こうぜ」って言った。

自分を嫌いになった瞬間だった。

その夜お好み焼きを一口食べて、トイレに駆け込んで嘔吐しながら泣いて嗚咽した。

これはあなた方の会社のせいじゃないのはわかってる。ただ正確に考えてたことを伝えたかっただけなんだ。
とにかく、自分の席に嘔吐の袋が無くて少しだけ困ったって事を伝えたかった。

謹んで。

#小説

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