コメニウス著『世界図絵』(平凡社ライブラリ、1995)

コメニウスは、チェコスロヴァキアの教育思想家です。この本を読む方は、多分教育学の研究か、子供の本の歴史について調べていらっしゃる方が多いのではないかと思います。
本を開くと、まず「入門」とあり、教師と生徒の対話が書かれ、その様子を描いた絵がついています。この絵は、ちょっとウェイト版のタロットの絵を思わせるところがあります。
簡潔ですが、深い寓意が持たされているのです。
その後、「神」「世界」「天空」…「果実」「花」…「家畜」…「パン製造」…と、絵と文章で説明が続きます。これは、子供にこれらの概念を教えるための本なのです。
コメニウスは、三十年戦争でボヘミアから亡命し、ヨーロッパを放浪したと言われています。三十年戦争後というと、薔薇十字団を想起しますが、コメニウスの著書『大教授学』の「読者へのあいさつ」には、アンドレーエの名前が見られるというのです。
実はコメニウスは、薔薇十字団のメンバーであったと噂される人物です。
子供の中に眠る潜在的な能力に、やがて大輪の花を咲かせる芽を見出し、これに水を注ぐように知恵を与える、そんなコンセプトに沿って書かれた本のように思われます。

初出:2005年05月09日 00:08 ソーシャル・ネットワーキングサイト[mixi(ミクシィ)]内レビュー

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