日本の奨学金の歴史① ~創設の経緯~

10月26日発売のサンデー毎日に、奨学金に関する記事を4ページ書かせて頂いた。

編集デスクからの要望は、日本の奨学金の成り立ちと経緯海外の奨学金との比較日本の奨学金の問題点、と主にこの3点を解説することでした。

8年前、初めての著書の執筆にあたり、国会図書館に通いつめた当時の文献や資料を読み返すほか、新たに論文やシンクタンクのレポートを読み込みました。

おかげで、8年前には気づかなかった点や奨学金の全体像を自分なりに改めて整理することが出来ました。

ウェブと違って紙媒体はどうしても文字数制限があるため、実際に書き上げた半分程度の原稿量となっていますが、関心のある方はぜひ来週月曜日発売の「サンデー毎日」をお読みください。

日本政府の奨学金制度は、太平洋戦争終盤にあたる1943年の大日本育英会の創立に始まります。

それ以前も奨学金制度はあったのですが、主に民間や個人、私塾や卒業生などの寄付により行われていたようです。

それが、昭和の初めの昭和恐慌で、企業や資産家が次々と立ちいかなくなり、国による奨学金制度の創設が求められるようになったようです。

しかし、奨学金の返済問題が注目されている現在から見ると、国の奨学金が1943年に始まったというのは皮肉な話です。

というのも、戦況の悪化により、この年それまで徴兵が免除されていた20歳以上の大学生らが戦場に送られる「学徒出陣」が始まった年だからです。

学徒出陣は文系学生が対象で、理系学生は含まれませんでした。これは理系学生は兵器の開発も含めて国作りに重要な役割を果たすと考えられていたからでしょう。

奨学金の創設にあたっては、当然、「給付」か「貸与」かの議論がありましたが、戦費による当時の国家財政事情とより多くの学生に機会を与えるということで、「無利子貸与」で始まりました。

その後、1953年に日本育英会に名称変更され、2004年の日本学生支援機構に引き継がれるまでの61年間、国の奨学金事業を行っていたのです。

次回は、日本育英会時代の奨学金について解説をしたいと思います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?