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コロナ渦で中退者が急増⁉朝日新聞の記事に思うこと

新型コロナウイルスの感染拡大の影響による休学、中退者に関する調査結果を文科省が公表した。

それを報じた朝日新聞デジタルの見出しが「コロナ禍で休退学5千人超 大学生・院生、文科省が調査」とある。コロナにより休学、中退者が増えているような印象を受けるが実情は正反対のようである。

コロナ禍で休退学5千人超 大学生・院生、文科省が調査(朝日新聞デジタル・2020年12月18日 20時45分)

休学・中退者数は前年同期より大幅に減少

記事によると「全体の中退者は2万5008人、休学は6万3460人で、昨年の同時期と比べると、ともに6833人、6865人減っていた。」とある。

現時点での結論としては、中退・休学者の数は減少しているとのこと。記事タイトルとは正反対の結果である。

筆者もこの結果に驚いた。休学・中退者が増えていると思っていたからだ。

しかし、朝日新聞の見出しには一読者として残念な思いを持った。

読者の目を惹くためにタイトルが重要なことは重々承知しているが、今回の見出しはミスリードにつながる可能性がある。SNS社会だからこそ、責任感を持って慎重に考えてほしい。

高等教育の修学支援新制度の効果では?

中退・休学者が減少したのは、今年度から始まった「高等教育の修学支援新制度」が大きく影響しているのではないかと考える。

修学支援制度は、住民税非課税やそれに準ずる世帯の子どもの大学等の進学を「給付型奨学金」+「学費減免」の両面で支援する仕組みだ。

最大支援額を見ると、年額約91万円の給付型奨学金に加えて授業料が70万円減免される。合わせると年間160万円もの経済支援が受けられる。

しかも、その予算規模は従来の制度と比べても大規模なものだ。

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2019年度実績の給付型奨学金とは、住民税非課税世帯に限って導入された旧給付型奨学金である。

高等教育の修学支援新制度で組まれた20年度の予算規模は給付人員・金額ともに旧制度の20倍以上だ。貸与型奨学金の19年度実績の半分を占めるほどの規模である。

これにより、修学支援の対象となった低所得世帯の学生が救われた結果、中退・休学者数が減少したのではないかと推察する。住民税非課税世帯の学生には「学生支援緊急給付金」として20万円も給付された。

必要なのは中間所得層への支援

政府ではコロナ渦を受け家計が急変した学生も修学支援制度の対象とする緊急施策を打ち出している。

これは、本来の基準では修学支援の対象外となる学生にも給付型奨学金と学費の減免を適用するというものだ。しかし、学生の窓口となる担当部署では、緊急制度の仕組みと現場の状況との乖離により混乱が続いたと聞いている。

朝日新聞の記事にもどる。文科省では、アルバイト収入が減少した学生には無利子貸与奨学金の再募集を行うほか、やむを得ず留年した場合は、奨学金の貸与期間を1年延長する措置を取るとのこと。

多数を占める修学支援の対象外の学生には、貸与型奨学金の支給枠を広げて対応するということだ。

いうまでもなく、貸与型奨学金は学生が背負う借金である。貸与期間が延びればそれだけ卒業後の返済負担も大きくなる。

中間所得層への支援策については、正直なところ筆者自身にも明確な答えが思いつかない。

しかし、前回の記事に書いた所得連動返還にヒントがあると思っている。

名ばかりの現行の所得連動返還ではなく、この機会に海外で導入されている本格的な所得連動返還を検討するべきではないか。

奨学金アドバイザー 久米忠史

公式サイト「奨学金なるほど相談所」
https://shogakukin.jp/
YouTubeチャンネル「奨学金なるほど相談所」
https://www.youtube.com/c/shogakukin

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