TRAIN
電車に乗るのが好きです。
景色、風景を見るのが好きなのです。
都会の満員電車も、不便な田舎の列車も、経験してきたけれど、総じて乗り物に乗ることが好きです。
なるべく窓側の席や、ドアの近くに立って、外を見ます。
晴れても雨でも暗い夜でも、
ビル群でも住宅地でも田んぼでも。
見ていて思わず微笑んでしまうのは、樹々の緑と空の青が綺麗な、やさしい昼下がり。
田舎育ちなので、やっぱり自然は安心します。
目が離せなくなるのは、海辺や川沿いを走るときの静かな水面。
海に近く、川がたくさん通る土地で生まれたので、水を見ると落ち着きます。
切なくなって脳がぎゅっとするのは、夜遅い時間の窓の灯り。
住む人や間取り、そこにある生活を妄想しては、なぜか寂しくなります。
あの人がいまとなりで、同じ景色を見てくれているならば、と。
電車の硝子に映る自分の青白い顔を、風景に重ねてそっと眺めながら
あの人の顔を手を、声を仕草を
記憶でなぞっています。
電車が好きで、ぼうっと外を眺めるのが好きです。
毎日乗っていても、ずっと昔から辞められない癖。
その度にいちいち、どれだけ悲しくなったとしても。