BIG3という新たなバスケットボールを観戦して思うこと

先週8月24日木曜日、ここニューヨーク・ブルックリンのバークレイズ・センターで、3X3の米国プロリーグ「BIG3」のチャンピオンシップ(決勝戦)が開催された。
「アレン・アイバーソンがBIG3でプレーする」という触れ込みで、このリーグのことは去年からにわかには知っていたが、実際に現場で観戦したことがなかったのでこの目で一度は観てみたいと思っていたところ、ちょうどニューヨークで決勝戦が行われるということで観戦に行ってきた。

2020年東京五輪の正式種目にも採用され、徐々に注目を浴びている(?)「3X3」バスケットボールだが、実際にBIG3の「3X3」と正式競技のFIBA(国際バスケットボール連盟)「3X3」との違いや比較、現場での盛り上がりの様子や雰囲気、今後のBIG3の可能性など、感じたことを少し書いてみたい。

そもそもBIG3とは?

BIG3とは、かの有名なラッパー・俳優・映画監督でもあるICE CUBE(筆者は辛うじて名前を知っている程度だが、90年代前半のヒップホップシーンではかなりの大物らしい。。汗)が、ビジネスパートナーのJeff Kwatinetz(元はICE CUBEのマネージャーだった)と共に作った、エンターテイメント性を重視した3対3バスケットボールのプロリーグである。

写真:コートサイドで馴染みの歌手たちと観戦するBIG3創設者ICE CUBE(右から3人目、筆者撮影)

もともと正式競技の「FIBA3X3」もエンタメ性が高いが、こちらはそもそも創始者がICE CUBEということもあり、競技中のDJや音楽、ハーフタイムのラップイベントなど周辺のエンタメ性の高さもさることながら、通常NBA3ポイントラインより約2メートル近く後ろに設置された「4ポイントサークル」を導入するなど、競技そのものにもエンタメ性を加えて注目を浴びている。

リーグ創設のきっかけは、コービー・ブライアントが60得点を記録した引退試合(2016年4月18日)で、この試合を観て感動したICE CUBEは「まだまだNBAの一線で活躍できるのに引退した選手は沢山いる。そしてそんな選手をファンはまだ観たいはず」と思い立ち、その日にビジネスパートナーであるJeffに電話をして、約1年余りでICE CUBEのこれまでの芸能界・スポーツ界の強力な人脈を駆使してこのBIG3を作り上げてしまったのである。あっぱれICE CUBE、である。

FIBAルールの3X3との違い・比較

先に書いたような「4ポイントサークル」や、競技時間制限なしの「先取り50点」勝利ルール、など、BIG3特有の競技ルールはあるが、全く新しいオリジナルルールは実はその2つ程度で、そもそもFIBA3X3の競技ルールをベースに改良を加えているので、大まかな競技ルール自体は類似していて、微妙な差異がある程度と言ってよい。

もちろん、BIG3のコートはNBAサイズ(3ポイントラインもNBA仕様)で、使用球の違い(BIG3が7号でFIBA3X3は特殊ボール6号)もあるが、競技ルールに関しては以下のような微妙な数値の違い(ショットクロック秒数、ファウルの数、得点・FTのカウントなど)がある程度なのである。

ただ、ルールの違いからくるゲーム自体のダイナミズムには多少違いがあり、例えばBIG3よりもショットクロックが2秒短いことや、得点後もプレーが途切れず継続するため、FIBA3X3の方が試合自体に流れやリズムが生まれ、攻防の切り替わりも素早く激しいため、観ていてより早い展開でゲームが進んでいく。

一方、BIG3は得点後は一度審判にボールを預け、ハーフラインからプレーを仕切り直すため、盛り上がるプレーで得点したとしても、その盛り上がりを継続させるような、流れるような展開で試合は進行しない、と観ていて感じた。得点後はあくまで一つ一つのプレーをしっかりデザインして、ショットクロックを十分に使って確実に得点を取ることを優先させるような試合運びをする。

プレー内容もスクリーンプレーやスリーポイントを連発するFIBA3X3に比べ、BIG3はスペースを広く使ったアウトサイドの1on1、ポストプレイの1on1を多用するシーンが目立っていた印象。ただ試合中のフィジカルさはどちらも同等の激しさで、ハンドチェックやブロッキング、オフェンスファウルも通常の5on5では吹かれてよいプレーでも吹かれない場面が多々あり、ゴール下での激しいぶつかり合いは、まさに「格闘技」に近しいものがあった。

2シーズン目で飛躍を遂げつつあるBIG3

写真:昨シーズン、アレン・アイバーソン参入でBIG3は大きな話題を呼んだが・・(https://theundefeated.com/features/ice-cube-brings-allen-iverson-out-of-retirement-for-some-big3-basketball/より抜粋)

リーグ初年度の昨シーズン前は、”The Answer”ことアレン・アイバーソン(AI)や、”ホワイトチョコレート"ことジェイソン・ウィリアムズ(JW)などの人気元スーパースターNBA選手の参入を話題に盛り上がりったが、JWは開幕戦に膝を負傷し全治6ヶ月の重症、AIも全くプレーできるようなレベルになく3試合が終わった時点プレーをやめ、挙句にリーグから出場停止を食らい、話題だけ振りまいてファンを裏切った。

ICE CUBEとしてもこの大物2人を軸にリーグの認知・人気を拡大しようとしていた矢先に2人を失う憂き目に遭ったため、BIG3の2シーズン目の盛り上がりに疑問視する声も多くあった。

しかし蓋を開けてみると、今シーズンの平均観客動員数は昨シーズンから約30%増の13,500人近くを数え、テレビ放送もFOXが初年度の放送が録画放送から今シーズンは全試合生放送に切り替わり、1試合平均視聴数も約40万視聴、Facebookでも複数試合をライブ配信するなど、露出の場所・量とも格段に増え、自然とメディアにも多く取り上げられるようになった。

また参戦選手もAIやJW程ではないものの、現役時代に人気選手だったN・ロビンソンやオールスタープレーヤーのA・スタッダマイヤー、メタ・ワールドピース(元ロン・アーテスト)などの元スター級選手の参戦が話題として上がったことも集客に繋がったと言える。

写真:今シーズンはFOXやFacebookなどで全試合をライブ配信。またアディダスとも3年契約のスポンサー契約を締結。(https://v103.radio.com/events/big-3-professional-3-3-basketball-liveより抜粋)

もともとNBAのオフシーズン(5月終了)とNFLの開幕(9月)のギャップを埋めるコンテンツとしてスケジュールを組んだことも功を奏し、この期間スポーツニュースでバスケトピックの話題・露出面ではBIG3が格段に多くを占め、大物引退選手の今後のBIG3の参入をほのめかしてはメディアの話題をさらっていったのである。(つい最近、ファウンダーの1人であるJeffが「来シーズンはコービーがBIG3に参入する」とメディアにほのめかして大きなニュースとなった。その後すぐKobeは「その可能性はない」と否定しているが。)

筆者も決勝戦を観戦し、その観客数の多さ、盛り上がりや雰囲気にはNBAを観に来ているのと変わらないものを感じた。実際、隣で観戦している40代くらいの男性とも話したところ、セルティックスファンのNBA好きで、NBAを観戦するのと同じ感覚で観に来ていたまた、チケット価格も非常に良心的(コートサイド以外は1試合$25-$75程度)で、「ニックスの試合に数百ドル払うよりこっちに数十ドル払って観た方がコスパが良い」、というようなことも話していた。

このように、NBAのシーズンと重ならないこと、さらにNBAよりも格段にチケット価格が安いことも相まって、BIG3は多くのNBA・バスケファンの渇きを癒すオアシスとなっているのである。

動画:実際の会場にて、伝説的選手で現在はBIG3・Tri-stateのコーチであるDr.Jことジュリアス・アービングが登場した瞬間の盛り上がり(筆者撮影)

今後のBIG3は?

ICE CUBEはBIG3について、10年後に米国4大スポーツと伍すリーグにすること、そして世界の市場に出てBIG3を世界的に人気にすること、というとてつもない大きな野望を口にしている。

特に3X3は2020年東京五輪から正式種目となっていることもあり、これを機に3X3、ならびにBIG3の普及、人気拡大を目論んでいるようである。

BIG3自体、上記で述べたようにFIBA3X3とは競技においてはそこまで違いがないため、FIBAや他国の3X3の大会にBIG3が参加して話題を作っても面白いだろうし、選手もNBAの一線でやれる引退したばかりの選手が多いので、各国の3X3代表選手の強化相手としてもこの上ないだろう。個人的にはFIBAランキング上位の代表選手たちが、BIG3の選手たちとガチンコで3X3の試合をした時にどうなるものか観てみたい。

写真:FIBA3X3ランキングトップのDusan Bulut率いるセルビア代表とBIG3の試合は是非観てみたい(FIBA.basketballより抜粋)

ただ「BIG3」の認知度は米国内バスケファン以外はまだまだ圧倒的に低いのは明らか。ICE CUBEもヒップホップシーンでは世界的に高い認知度があるかもしれないが、やはり世界で認知を得るにはアイバーソン並みの「バスケグローバルアイコン」が必要である。コービーは参戦を否定しているが、奇しくも毎年のようにNBAスーパースターの引退は続いていく。

つい最近引退を発表したE・ジノビリ(アルゼンチン)、来年にも引退の影が見えるD・ノウィツキー(ドイツ)や、峠を越えたP・ガソル(スペイン)など、もしICE CUBEが世界に出たいのであれば、このようなインタナショナルスーパースター選手を是が非でもリーグに勧誘し、NBAと同様に選手のグローバル化に注力するのも手だろう。

何れにしても、引退後のNBA選手の受け皿として、新たな形でバスケファンを取り込み発展を遂げようとしている「BIG3」。東京五輪正式種目となり徐々に注目を浴びている3X3同様、皆さんも少し注目してみては如何でしょうか?

参照:



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DJ KIM

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