私たちは子どもに何ができるのか

私たちは子どもに何ができるのか――非認知能力を育み、格差に挑む 単行本 – 2017/9/6 ポール・タフ (著), 駒崎弘樹 (まえがき), 高山真由美 (翻訳)

著者の「成功する子 失敗する子」もよい本で、そこで述べられていたことは子どものその後を決定する最大の要因は子どもの気質(やり抜く力、好奇心、自制心など。本書では「非認知能力」とされている)であるということだった。子ども支援に関わっている全ての人が同意するだろう。

本書の焦点はそういった気質と予後の関係性ではなく、いかにしたら子どもの非認知能力が育つかという点にある。前半で本書が述べているように、子どもの心のベースは家庭の中で築かれ、大きな影響を与えるのは家族メンバーとその子どもとの人間関係だ。親、きょうだい、親戚、祖父母など。このことも、子ども支援をしている人が痛感していることではないだろうか。

現代日本において最も大切な子ども支援は、可能な限り多くの子どもが親やそれに代わる大人たちと強い心のつながり(愛着)をつくるお手伝いだと僕は思っている。その仕事は人間にしかできない(少なくとも当分は)。だからこそとても高くつく場合が多く、だからこそ支援が足りなくなりがちでもある。

この子どもと大人とのつながりを素晴らしいものにするために、どういった介入が必要であるのかについても本書は言及している。まだその介入のあり方に100%の正解はなさそうだが、少なくともこの分野の知見は溜まり続けていて、今後も成長していくのだろう。そして、実務家らがこういった知見を参考にしつつ、常に自らの養育論をアップデートさせていくことは非常に重要であると個人的には考えている。あと個人的に思っているのは、親がこういう勉強をすることをもっと積極的に支援したらどうなんだろうか。出生届を出したら、無料で研修が受けられる、というような。善意でいっぱいなのに、明らかに誤った養育論を持っている人がいたらとても悲しいことだと思う。

また、本書は家庭のみならず学校改革の必要性も説く。これは僕も最近強烈に感じていることで、子どもの心理的な成長のためには、家庭の支援もさることながら、学校の役割の一つを子どもの自己肯定感を強める場にすることが非常に重要だと個人的には感じている。実際にLiving in Peaceは日南市の子どもの貧困実態調査に関わったのだけど、そこで得られた示唆は、特に貧困世帯において、学校での友人との関係は子どもの自己肯定感に大きな影響をもたらしうる、ということだ。養育現場と教育現場の垣根をなくして子どもにとって最適な環境を提供すること。厚生労働省と文部科学省の統合は相当に難しそうだけど、知事や政令指定都市の首長が一念発起してこれを実現することはできるのではないだろうか。

ということで、僕は本書を子ども支援に携わっている多くの人、そして何より子育てをしている親に薦めたいと思う次第です。


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