「新しい社会的養育ビジョン」について(その2)

前のnoteを書いてからまた色々とコメントがついたりして、改めて調べてみてちょっと思うことがあったので書いておきたい。

前にも書いたように、里子の虐待死は2002年、2006年、2010年と3回起きている。リンク先の新聞記事が死んでしまっているウェブサイト経由の情報なので2010年のもの以外は実際に図書館などで裏取りをする必要があると思う(僕はいま日本にいないので、誰かしてくれたらすごく助かります)。

虐待死の裏には虐待があるわけなので、社会的養護下にある子どもへの虐待に関する厚労省のデータ調べてみた。2013年3月末での児童養護施設の子ども28,831人への虐待通報件数は49件(0.17%)、これに対し里親・ファミリーホームのそれは5,407人に対して13件(0.24%)と、虐待発生率が約4割高い。(ちなみに、最新の施設と里親の不調率の比較も手に入れたいのだけど、探しても見つからなかった。誰か知っていたら教えてください・・・)

なお、虐待率についてはデータが少なくて時系列できちんと見ないとまだ結論を出すべきでないのだけど(駒崎さんに指摘されてその通りと思った)、とはいえ虐待死の数からして、里親家庭において虐待が多いという主張は引続きフェアであると感じている。重大事件の裏側にはその100倍くらいの問題があると考えられている。

里親と職員の質が同じなのであれば、状態は逆になるはずだ。理由は三点:
(1)家庭にいる子どもの方が児相に通報しにくい
(逃げ場ない家庭で通報はきつい)
(2)特に小さい子どもほど通報しにくい
(&里親家庭には小さい子どもが比較的多い)
(3)施設のほうに大変な状況にある子どもが相対的に多い
(大変な子どもは大人の虐待を惹起しやすい)

ちなみにいうと、現状の日本では里親をやる経済的インセンティブはかなり低いので、お金のために里親になる「悪い人」はあまりいないと思う。それなのに里親家庭内の虐待のほうが多いということは、里親家庭に虐待が起きやすい構造的な理由があるということだろう。その理由について個人的に感じているのは次の3点。
・児相がチェックをきかせにくい
(施設なら大勢の子どもに会いに頻繁訪問するので異常に気付きやすい)
・家庭内であるため問題が隠蔽されやすい
・里親への支援が足りていない

僕は里親漸進派だったので、初めてちゃんと調べたのだけど、里親制度の現状は結構つらいな、というのが正直な感想。このまま本当に急速推進するんだろうか。


結局前回と結論は同じなのだけど、このまま急速な里親推進を進めたら確実に事故るなと思うようになった。でもやっぱり里親家庭への支援(介入)とかは難易度が高いので、その里親を支援する児相の人たちがいい仕事をするための仕組みづくりのお手伝いをできたらなと思っている。本業大変なんだけどさ。

個人的にずっとやりたいと思っているのは、全国の児相を監査するフレームワークを作ること、それを実施する人たちの組織をつくること。DDとかずっとやってきた僕みたいな人間だからこそ、こういう分野は貢献できるんじゃないかと思っている。

 

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