ソーシャルファイナンスの教科書

今年13冊目。著者の河口さんから頂いた、「ソーシャルファイナンスの教科書

これはいわゆる、社会的投資についてのまとめ的な位置づけの一冊となっている。著者はこの分野の第一人者@日本。

序盤は著者のアナリスト時代の経験を踏まえ、日本で投資といえばギャンブルと見なされていた期間が長かったことについて話されている。確かにその感覚はいまもある程度残っているように思うし、「株で失敗して」というのは「競馬で大損して」と同じ響きを日本ではもっている(というか、そのニュアンスは海外でもある程度そうかもしれない、とも思う)。

中盤は、投資の社会的意義について。特に市場原理の泰斗と目されているアダム・スミスの国富論と道徳感情論を引き合いに出して、このエジンバラ出身の経済学の父も決してお金だけを儲けるのが幸せなものではなかったと話しているという主張がされ、投資をしつつ社会貢献をするという考え方はさほど突飛なものではないということが話される。そして、終盤は具体的にどういった社会的投資が日本でできるのか、という話につながっていく。

個人的に一番おもしろくよんだのは、最終章のサステイナブル投資の歴史の整理。いわゆるSRIが教会の資産運用において、「キリスト教の教義に反するようなものを作っている会社に投資をして資産運用をするのはいかがなものか」という考えから始まったことは初めて知った。その後のESG投資(環境・社会・企業統治改善に配慮した投資)、インパクト投資(社会的インパクト測定に力を入れる投資)の流れまで、日本でこれくらいコンパクトにSRI、ESG、インパクト投資の背景と整理をしてくれている本はないのではないかと思う。

本書でも紹介されているように、ESGパフォーマンスの高い企業への投資パフォーマンスが高いという研究は色々なところで聞かれることで、だからこそ、ESGは日本でも浸透はかなり早いスピードでしていくのではないかと想像している(今のところ)。もう少しいうと、「実際儲かるんです」という話ができて、かつ社会的な意義もあると看做される投資は、ある程度この国で受け入れられる気がする。

一方で、多少の金銭的なリターンを犠牲にしても社会的インパクトを重視する類の投資、すなわち「ちょっとくらい儲からなくても社会が変わったからいいじゃないですか」という投資は、個人からは集まるかもしれないが、法人からは集めにくいように思う(自分自身がそういうファンドレイジングをしている上での経験)。そして、法人は色んな志向を持つ人々のお金を預かっているのだから、それは当然のことともいえる。そんな状況で、日本でインパクト投資がどうやったら拡がっていくのかについては、まだ僕の中では答えが出ずにいる。寄付に関心のある個人と政府系機関のみが行う投資なのか、それより先があるのか。



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