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宮古島ワイドーマラソン100km

僕の記憶力の悪さは折り紙付きで、いつかまたレースに出るというときに今回の教訓を諸々忘れていそうなので記録を書いておく。

宮古島に11月に行き、エントリーをノリで決めた後、本当に出走するかどうかは最後まで迷った。直前までインド出張で、現地でPM2.5を大量に吸った結果なのか咳が止まらなくなった。そのまま深夜便で東京に戻り(僕は飛行機では眠れない)、仕事をして土曜日の午後3時に宮古島到着してエントリー。そして、当日は午前3時起きなわけだけど、これはインド時間の11時半。

ランニング思考」でも書いたのだけど、僕は凡庸なランナーで体型的に超長距離走にそもそも向いていない。それでも走る理由は、逃れようのない苦しみを経験しつつ、何らかの学びを得ることにある。だとしたら、こういうちょっと辛そうな環境はむしろ心には良いことなのだろうと思って、結局出走することにした。

スタートは午前5時。最初はキロ7分くらいのペースで走りつづける。2週間前に練習で都内を走ったときも、このペースで55kmは走れていたから、まあ60キロまではこれでいけるだろうと思っていた。

しかし20km地点でもう左膝と右アキレス腱に違和感が現れ、30km時点でそれが間違いなく古傷の腸脛靭帯炎とアキレス腱炎だと確信するに至る。最終調整のつもりで走った55kmから休みを取らなかったのがいけなかったのか、と少し反省しても、もうどうしようもない。500メートルくらい連続して走るとすぐに左膝が痛くなる。アキレス腱は用心深く足を出さないと激痛につながるので、細心の注意を払いながら進まないといけない。

さて、どうしようかと思いつつ、落ち着いて計算をしなおす。30km通過地点のタイムがだいたい3時間半。制限時間14時間なので、残り時間は10時間半。ちょうど1キロ9分で走ると間に合う。とはいえ、この調子だとさらにハプンニングが起こる可能性も高いので、30分はバッファーで取っておくと、1km8分30秒で走ればいい。アップダウンの時にどうしても歩かないといけなくなったりして1kmが9分30秒とかになったりするので、平地にいるときは8分前半で走ればいい。

ウルトラマラソンで大切なことは足を止めないこと。足を止めるともう足が固まってしまって、歩くことすら辛くなる。それに、歩けば1kmあたり10分から11分くらいで進めるのに対し、止まっている時間に進む距離はゼロだからだ。これは川の道フットレースで学んだ教訓だ。エイドでの食べ物と飲み物は10秒くらいで済ませる。ゴミが出るものはその場でさっと食べて、ゴミにならないものは歩きながら口に入れる。

また、どんなに辛くても、数キロを連続して歩かないほうがいいい。歩くのと走るのでは使う筋肉が違うので、ランと歩きを交互させることで、足は疲れにくくなる(というのが体感)。何回か1km毎のタイムを見てみて、大体8分前後を達成できていいることを確認して、このランと歩行の繰り返しをずっと行う。

とはいえ足が痛い。この痛みに10時間耐えるのかと思うとかなり気が滅入るが、ある番組で見たさんま師匠が「辛いことも楽しめるようなら人生ずっと楽しいことばっか」と言っていたのを思い出して、楽しみながら走ることにする。具体的には、歌を口ずさみながら走る。

そんなこんなで40km地点、60km地点を通過して、70kmを通過した時点で、流石にもう痛みがつらくなってきた。タイムも落ちてくる。さらに、70km地点の看板がアップルウォッチでこれまで測っていた予想設置場所よりも400mくらい先に置かれていて、もしこの看板が正しいとすると、僕のタイム計算が狂っている可能性があることになるため、相当に気が滅入る。もしかしてキロ8分半で進んでいると思っていたのが、9分を過ぎているかもしれないからだ。このままじゃ完走が危うい。

どうしようもないので、ここでプランBを発動させる。同じくらいの走力が残っていそうな人(すなわち、この70kmくらいの間ずっと抜きつ抜かれつしていた人)に声をかけてみる。少し話し合った結果、同じくらいのしんどさであることが分かったので、一緒に走ることにする。辛くなると同じくらいの走力の道連れを探すに尽きる。一人で黙々と10時間痛みに耐えながら前に進むのはしんどいけど、2人で痛みの状況やペース配分などを議論しながら走ると精神的にはかなり楽になる。話していると時間が経つのも早い。

最初は400mラン→100m歩きとしてタイムを稼ぎつつ、後半になるにつれて、ラン:歩行比率を300:200、250:250、200:300、100:400と変更していく。そして1km走り終えたタイミングでペースを確認して、これで間に合うのかを確認する。

そうしているうちに、残り30kmが残り20kmになり、10kmになり、5kmになり、無事にゴール。10時間前に立てた予定到着時間18時50分ぴったりに到着。

(1)辛くなったら歌を歌ったりして楽しいことを探す、(2)走りと歩きを組み合わせる、(3)それでも耐えられなかったら誰かと一緒に走る、というのはこれまでのウルトラマラソンで得てきた学びで、今回のレースは過去の経験に助けられた。

仕事上の学びとしては、辛いことは仲間と分け合ったほうがいいという当たり前のことだった。今後もどうしようもなかったら、一緒に走る人を見つけることにしよう。


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