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東洋経済の本の広告について

一番悪いのは自分だと分かっているのだけれど、とにかく残念だ。

今日の日経新聞の2面に、新しい本の広告が載っているのだけど、これがひどい。僕はベンチャーキャピタルで働いたことなんてないし、この本は「達人エリートのマル秘ノウハウ」を公開しているものでもない。こんな安っぽい広告に、お世話になっている人、親しい友人のコメントが掲載されていることが本当に申し訳なく思う。

この広告のゲラをメールで受け取ったのは4月28日。「レビューしてください」という内容ではなかったのでスルーしていた。「ああ、大きな広告を出してくれてありがたいな」とだけ思って感謝のお返事をしていた。

でも、東洋経済オンライン上での僕の本の宣伝文句がすごい煽りになっていたので(修正依頼を出して修正されている)、この広告もよく読んでみたらすごいことになっていた。それに気付いたのが、3日前の5月2日。これがいかに問題であるかを説明して変更要請を出していたのだけど、「もう期日を過ぎているので難しい」とのこと。その後も、これが僕の事業遂行上も困ることだと伝えたのに、「申し訳ない」だけ。

当初は、期日も過ぎているからただただ残念だと思っていたのだけれど、日経新聞で働いている人に聞いてみたら、実はそれは嘘で、1日前であっても緊急であれば直せるとのこと。そのとき、ああそういうことかと思った。商品が売れることが一番であり、一コンテンツ提供者にしか過ぎない著者がどうなろうと関係ない、ということなのだろうか。それ以外に説明の仕方があったら教えてほしい。

よく読んでいた経済学の教科書の多くが東洋経済で、硬派な本を出しているなあ―という思いがあったのだけど、その幻想はもう消え入った。もちろん、僕が知らない事情があったのなら、考えはそのあと改めるけれど、今はそういう感想以外を持ち得ない。

そもそも、職業人が一般向けの本を書くというのは「職業人であることを放棄した」とみなされるリスクと隣合わせだ。まっとうな職業人であればあるほど本なんか書かないことが多いし、一部を除いて、本をたくさん書いている人はその分野の人たちからすればよくて1.1流。特に専門職であればあるほどそう。というのも、良い仕事をすればそれだけでクライアントがつくので、本なぞを書く必要がないのだ。僕の仕事もBtoBの側面が大きいものなので、本を書く明確な必要は特にない。

それでも僕が本を書くのは、文章を書くことが好きだし、自分の考えをきちんと言語化することや社会的意義を見出しているから。文章を書く能力、もう少し言えばふわふわした想念をかっちりとした言語に落としこむ作業が僕は好きだ。この能力は、僕がこの仕事をしていくうえでの強みになってきたし、それを鍛える上で本を書くことは本当に良い訓練になる。また、たった一人であっても僕の本を読んで世界観を変えてくれたり、世の中の知られるべき事柄を明らかにできるのであれば(出来ているか自信はないけど)、それだけでその本を書く意味はあると思っている。今回のExcel本も、出版前にTwitterで書いていたように、売れる気は全くしていなかった。でも、IBや戦略コンサルで働く一年生が読んで少しでも睡眠時間を伸ばせるのならと思って書いた。

この広告が、普段お世話になっている人、これからお世話になるかもしれない人で、かつチャラチャラしたのが嫌いな人の目に留まったとすると、もうそのダメージはコントロールできない。その人たちの心のなかで、「不真面目なやつである」という烙印を押されても、会ったときには普通に接すると思うので問題の深さを把握しようもない。僕がこうやってウェブ上で反論を書いたとしても、その方々はFBもTiwtterもしていない。信用第一のこの業界で仕事をしていく人にとって、その損失が顕在化したら、それは印税なんて吹けば飛ぶようなダメージだ。

一番反省するべきは、僕がきちんとプロセスをコントロール出来なかったこと。出版社側は出版社側で仕事でやっているので、利益に奔るのは当然のことだし止めるつもりもない。この広告内容で売上が伸びるのかは分からないが、それは一つの判断であるし。気をつけなければいけなかったのは僕の側。そもそも、広告の文面が届いたときに、目を皿のようにしてレビューするべきだった。

心から信頼している友だちは、「そりゃ、外資系金融のExcelってタイトルで、Excelニンジャとか言ってたら、そういう売り込まれ方をするよ」とビシッと言ってくれて、ぐうの音も出なかった。

(なお、東洋経済側には、書きたいことを書きまくると事前通告し、了承いただいた上で書いています。)

追記:急いで書いてしまったので、2014年5月5日14時36分に若干補足修正しました。

さらに追記:続きを書きました→東洋経済の本の広告について(続き)

最後の追記:最後の顛末。東洋経済の本の広告について(最後)


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