最前線のリーダーシップ

最前線のリーダーシップ

リーダーシップとかいう単語が本に入っている時点で基本手にとることは少ないのだけど、英治出版の翻訳書セレクションはいつも秀逸なので読んでみたら、これはとても素晴らしい一冊だった(なのに、Amazonで全然売れていないな。なぜだろう)。

課題には二種類がある。仕組みを考えれば解決できるものと、人の心を動かさないと解決できないもの。前者は技術的な問題なので、ある程度の知的素養がある人がきちんとした訓練をすると解けるようになる。いわゆる職業的専門家たちの提供するサービスの多くはこれだ。

後者の課題は合理的精神で解けるものではないので、時には非常に難しいと感じられる。それは例えばある村の因習を無くすことだったり、財政の配分を多数派である高齢者から未来をつくる子どもへシフトさせることだったりする。僕も含め、人々は現状に安心を感じる生き物なので、それが失われようとするときには強く抵抗する。「我々の社会が守ってきた伝統を壊す気か」と。しかも、そういったリスクを取って改革をするにもかかわらず、改革の結果物事がうまくいくという確証はないのだ。

リーダーシップはこういうときに発揮される。本当のリーダーは、こういった改革へ反対をする人々を「非合理的な人々」「改革の敵」と断罪するのではなく、人々が感じている不安や恐れを理解し、地道に対話を続けながら社会と世界を変えていく。よい変化や進歩が往々にしてゆっくりと起きるのはこのためだろう。

社会の構造が技術進歩と格差拡大によって揺らいでいる今、多くの人達が将来に漠然とした不安を感じている。それに乗じて自分のアジェンダを達成しようという人でも、頭ごなしに正論だけを語る人でもなく、普通の人々の心の苦しみを常に感じながら前に進むリーダーでありたいな。



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